| ◆魔王の仕事と勇者の仕事、そして監視者の記録+++Stage2 たどり着いた町で、依頼の報告をし、受け取った報酬で宿をとるために移動する一行。 「ちょっとばかり、用事ができたから、抜けるよ。」 「彼についていくから、もし予定がないなら、町で待ってて。」 そう言って、分かれた魔王のラウナと部下のドルハ。見送るカイトとあんまり興味がなさそうなトーカ。 久しぶりに、少人数で、まだ賑やかな奴が残っているとは言え、今までを考えると静かだと思ってしまう。 「それで、どうされますか?」 「特にすることもないし、お金に困ってるわけでもないけど…あまり時間がかからない依頼があったらしておいて、お金を増やしておくにこしたことがないかと思うけど。」 どれぐらいの期間で彼等が戻るのかはわからない。だからといって、その間暇を持て余すのも勿体ない。 「じゃあ、とりあえず依頼の内容だけ見に行きますか。」 「そうしよう。」 三人で見に行くと、この町もそこそこ大きな町なので、いろんな依頼が登録されている。 「これなんてどうです?」 ふと、カイトが一つの依頼に目をつける。 内容はいたってシンプルだ。最近暴れる魔物によって街道が封鎖された。 その為の商人の護衛、もしくは魔物の退治。 どっちにしても、魔物を退治して安全を確保すればいいというもの。 「トーカはどうだ?」 「いいんじゃない?でも、魔物退治はいいけど、商人の行先へは最後まで行かない方がいいよ。」 どういうことだと首をかしげると、普段と態度が違うトーカにカイトも少し思うところがあるのか、口を開く。 「何か、知っているんですか?」 「どうだろう。でも、今も昔も、あそこはあまりよくない。悲劇が集まる場所。」 「…主の帰還と関係が?」 「あるかもしれないし、ないかもしれない。ただ、『仲間』として言えることはそれだけ。」 「そうですか。」 少しだけ、シイナはトーカが仲間と言った言葉に引っ掛かりを覚えた。 ラウナとの会話での、監視者という言葉が脳裏を巡る。 違うかもしれない可能性が消え、確信へ近づきつつあるということかもしれない。 「とりあえず、依頼を受けるのなら、さっさと行こうよ。」 何でも早いにこしたことないのだからと、進むトーカに俺たちはついていった。 依頼対象であった商人はすぐに見つかった。 しかも、俺たち以外にも依頼を受けた連中がいたが、商人にとっては安全対策として、らしい。まぁ、関わらないままでいいならそれでいい。 明らかに腕っぷしだけのお金目当てのごろつきだ。下手に協力しようとしたら、反対に攻撃されかねない感じだ。 「…先にあの連中をやっとくか。」 ぼそっと言うトーカをカイトが駄目だとなだめつつ、一同は道を進んだ。 すぐに、魔物の軍勢が現れ、こちらへ向かってきた。 最初こそは、他の雇われごろつきもどきも役には立っていたが、魔物の数が多すぎた。 「逃げるなっ!」 逃げる連中も増えてきた。 その中で、違和感を感じていた。あまりにも多すぎる魔物の数と、同じ雇われの中でも異質な奴等のことが気にかかっていた。 確かに、雇われた仕事として戦ってはいる。だが、無駄な動きもなく、払うように倒すだけだ。それだけならいい。その払ったあと、魔物の方がそれ以上襲ってこないのだ。 普通なら、何度でも今目の前にきている魔物と同じように、対象をどうにかするまで攻撃を続けるのだ。 頭がいい奴なら、攻撃の仕方も選ぶから離れて様子を伺う奴もいるかもしれない。だが、あの違和感を感じる奴等だけは、戦っているふりをしているだけのように見えるのだ。 「なぁ、トーカ。」 「…悪いけど、カイトを援護しながら、『気づかないふり』して、そのままいて。」 普段のふざけた感じはなく、真剣な声音から、頷いて少しそこから下がってカイトの側についた。 「なぁ。」 「周囲の魔力の流れを探りながら、それを気づかれないように隠して戦闘しているから、邪魔するなってことですよ。」 「…あいつってやっぱり魔術師としてはすごいよな。」 「ええ。きっと、純粋に魔術だけなら、『魔王』をしのぐでしょうね。」 力の制限をかけていなければなおのことと言うカイト。ここで、シイナはカイト達もトーカの持つ異常に気付いているのだと知った。 「それにしても、本当きりがないな。」 「ええ。…だからこそ、不自然すぎるのでバレバレなんですけどね。」 すでに、自分達と不審な奴等のグループしか護衛は残っていない。 気づかれない程度に注意して周囲を伺えば、明らかに魔物は商人や連中よりも、自分たちを先に狙っている。 「よっぽどの理由…積荷が原因か?」 「かもしれません。トーカが行先で乗り気になれない理由が積荷とこの魔物も原因と繋がっているのかもしれません。」 「そっか。」 少し離れたところにいるトーカをちらりと見る。あれから一歩もそこから動かず、襲い掛かる魔物を魔砲弾や魔術で倒しながら、あの状態で連中の魔力や魔物を操っている可能性の魔力の流れを探っているのだから恐ろしい奴だと思う。 「ぶっ倒れたらどうする気だ?」 「それはないでしょう。」 自分たちですら、トーカが休んでいるところを見たことがないのだと言われ、バカなと思う。そんなことありえるはずがない。 「ですが、近づくと気配で起きるんですよ。」 それこそ、手負いの獣みたいだと苦笑する。だが、それが本当なら、共に旅をしていた中でも、きっちりと睡眠をとってなかった可能性がでてくる。 「そんなんで大丈夫なのかよ。」 「今まで問題を起こしたことないので何とも言えませんが…魔王様や貴方の側だと、どうやら違うようですけどね。」 「俺?」 あの魔王なら主だからわかるが、自分の側というのがわからない。 「気のせいだろ?」 そうやって会話をしながら魔物をしのいでいたら、突如トーカが動いた。 「いい加減、うざいっ!」 くらえと、上級魔術を二重で発動する。何て無茶苦茶な奴だ。普通はそんなことできるはずがない。やっぱり、異常の塊だと思った矢先、魔術がある一点に落ちる。 その瞬間、周囲に歪みが生じ、ビリビリと電磁波みたいなものが目で視えた。 「何だ、これ?」 「これで、魔物に指示を出していた、ということでしょうか。」 再びすばやく発動した魔術で、トーカを狙った護衛を引き受けてついてきた不審な奴等もぶっ飛ばし、ついでに残ってる魔物まで一掃した。問題を見つけてからの対処がやたらはやい。 「…どういう、ことです?」 「あいつらがここを通れなくしてた原因。魔物を襲うように指示だす電波の元は壊した。だから、もう安全。OK?」 そういうと、まさかと言いながらも、それからあれだけでてきた魔物がぴたっと姿を見せなくなったことで信じてくれたようだ。 「じゃ、原因の排除は終わったから、ここでお別れでいいよね?」 「あ、いえ。できれば…。」 もしもの為にと、あっさり原因解決した俺たちにこの先もと要求してくる商人に、トーカは断りたがっていたが、決断は俺に任せると言ってそっぽむいてしまった。 「お願いします。」 「…わかりました。目的の町の近くまで、でよければ。」 「ありがとうございます。」 結局、他に仲間がいるかもしれないし、街にたどり着くまでに魔物以外でも物騒なことはたくさんある。だから、トーカが気にしている目的地には入らないようにして、その手前までは送って行くことにした。 これの選択が、この世界にあってはいけない『力』というものの意味を知る旅になるとは思いもしなかった。 幕間 「どうだった?」 「間違いないみたいだよ。」 「…。」 「どうする?さっきトーカから連絡あったけど、近くに勇者君もいるでしょ?」 「そうだな。」 けれど、仕方がない。魔王の仕事は何があっても遂行される。 その結果、軽蔑されるとしても、いい。 「結構気に入っていたが、仕事は仕事だ。行くぞ。」 「魔王様の仰せのままに。」 魔王の判定が出れば、魔王も魔王の配下も動く。 歪んだ力を使う連中はまだ気づかない。 自分達に迫るカウントダウンに。 |