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変わらず旅をしている。だが、依頼の魔物討伐を受けると、依頼内容の予想以上の魔物と遭遇し、その魔物を誰よりもざっくざく倒す魔法使いの背中を見て進むと、何だか怖かった。 「滅茶苦茶怒ってるよねぇ。」 「でも、仕方なかっただろ、あれは。」 「おかげで、いつもは構ってくれることにかまってくれないんだ。」 悲しいと凹んでいるドルハと、苦笑するしかない正真正銘の魔王、ラウナ。 リュマは連れてきた目玉の魔物を連れて城に戻ったらしいので、カイトを入れて五人で旅を続けている現状だが、勇者と対象の魔王が一緒にいる時点で、旅の目的がなくなっているのだが、なりゆきのまま続いている。 「でも、そろそろ止めなくていいのか?」 かれこれ1時間。ずっと出てくる魔物を狩り続ける魔法使いを指差すと、そうだねとあまりやる気のない返事だけが返ってきた。 本当に自由人だなと思う。 「でも、今は好きにさせてあげようかとも思うしね。この前無理やり彼女の意思を捻じ曲げたわけだし。」 それに付き合うぐらいどうってことないと言う魔王はとても寛大だ。むしろ、暴れまわるトーカこそ魔王と言われてもおかしくない。 本当、今更だが面倒でろくでもない連中と一緒にいるなと思うシイナだった。 「でも、そろそろここの目的のボスが登場みたいだし、終わらせようか。」 「そうだね〜ちょっといってくるよ。」 ラウナの言葉に、やっとトーカと共に参戦するドルハ。一礼して、補助に回るカイトはやっぱり保護者のような立ち位置だと思う。 「さて、三人いたら、ここの依頼は終わりそうだから、暇を持て余してるわけだけど。何か聞きたいことでもある?」 確かに、聞きたいことはあった。 先日の件で、彼等がこの世界で言われる魔王一行であり、だけど、魔王とは本来の役割の意味が違うものであることを知った。そして、トーカが過去のことで魔術で見た目が変わらないままで過ごしていたが、100歳を迎え、このままいくと死ぬと言う事実を知り、結局強行手段で命の長さを歪めたことをとりあえずは理解した。 だが、この世界のこと、魔王のこと、先日の魔王とは違う、けれど、実態の人間にとって害のある魔物のこと。 そして、どうして勇者という職業である自分に今も一緒にいるのかと、聞きたいことはいろいろある。 何より、魔王が存在する理由が、この世界の人にとって、御せない力を手にして、暴走する危険があるとき、町単位で消滅させてでも歴史からあったことすら消そうとすること。 そんなものが存在しなければ、魔王だって人から理解されない場所にいて存在する必要もなく、普通に過ごせるのではないかと思うのだ。 「お前達が危険視しているものって、そもそも何故この世界に現れるんだ?」 「ああ、人の枠にとどめるには強すぎる力?この世界がそもそもの問題だから、その為に、監視者がいるし、魔王がいる。そして、絶対ないとは言えないから、この世界は魔王を悪として、悪さをしないように、人は知らず知らずのうちにこの世界の理に従って、退治しようとする。」 二つの間には誤解しかないが、そう言う風に世界ができているのだと、彼は言った。 「だから、強い力を持っていても、絶対ではない。だから、魔王が死に、新しい魔王が生まれる。」 それを繰り返す。そして、繰り返していることすら誰も気づかない。きっと、魔王は存在意義を理解しているからこそ、この世界の在り方を理解しているのだろうけど、長い目でみても、どうしてこう繰り返すのかは魔王にすらわからないのだと、苦笑した彼は、先陣切って暴れるトーカの方を見ていた。 「確か、言ったよね。この世界を常に視ている存在のこと。管理者であり、監視者。それに会ったことがあるって。それが、トーカじゃないのかって。核心はないけど、その監視者なら、この世界のことについて魔王より詳しいよ。その存在だけが、常にこの世界の歴史を視て生きている唯一の存在だから。」 今は仲間として大事だけど、いつかそれが悲劇の引き金になるんじゃないかと怖く感じることもあるけどと、苦笑する彼と同じように、シイナも暴れるトーカの方を見た。 あれだけ好き勝手暴れている彼女が、あれを見るだけでは世界を知る監視者だとは到底思えない。持つ力だけでいうなら、異常としかいいようがないもので、魔王が排除する『異常』と同類ぐらい危険なものだが、あれで器に収まっているから、魔王も手が出せない厄介な存在だ。 「ま、トーカはあれで力を制限してるから、反対に魔王がどうこうできるとは思えないけどね。」 でも、君と出逢って、やっとトーカを失う可能性が一つ消えて、思ったより楽しくしている彼女を見て、ちょっと安心してるのだとシイナは言う。 「結局、この世界のことって、知ってるようで知らないことばかりってこと。そもそも、トーカから聞いたけど、君こそ、過去の記憶がないんだろう?」 「そう言えば…何だか賑やかだったから忘れてた。」 「意外と、この世界はそうなのかもしれないよ。」 「どういうことだ?」 「目が覚めたら、魔王だった。目が覚めたら知らないところにいて、職業が勇者だった。ただ、それだけで、それ以前のことはなくて、そこからがその人物の始まりで、過去には意味がない。」 「あんたもそうだったのか?」 「気づいたら、目の前に監視者だと思われる人がいて、魔王だよって教えてくれて、それが始まり。そう言う意味でも、この世界はおかしいのかもしれない。」 何だかそれを聞くと、自分が元々誰だったのか考えるのが無意味のような気がしてきた。 そもそも、最近は彼等と出逢ってから考える暇すらなかったのだから、今更と言えば今更なのだけど。 「ま、君さえよければ、勇者一行のままで、一緒に旅をさせてくれたらうれしいけど。」 「別に、好きにしたらいいだろ?今更だ。…あ、トーカにも言ったが、どっかいくなら先に一言残していくぐらいしろよ。」 「そうだね。」 ラウナからすると、もしその記憶が引き金を引いて、勇者がいなくなることはありそうだと思ったが、口にはしなかった。 新しい物語の歯車は回り始めた。 まだ、物語は終わらない。続く物語に待つのは、希望か絶望か、今の彼等には知る由もない。 幕間 「まさかとは思ってたけど…本来転生するはずのない魔王が、勇者として戻ってくるなんてね。」 元々おかしな世界だけど、本当に、おかしくて、酷い世界だと思う。 「前の魔王は、人と仲良くありたくて、だけど、魔王としての仕事を放りだすとさらに悲劇が起こるからと気を張りすぎて、消えていったからな。」 勇者紛いの人助けをしていたことを、思い出すと、自然と笑みが浮かぶ。 本当に、このおかしな世界を愛していた魔王だった。 だから、余計にこの世界を壊さないように気をつけようと思った。 それこそ、魔王が長く生きられるように、魔王が最悪の結果を選ばないようにと、先回りを続けて、結局彼は、人を助ける為に、人の世界の国を滅ぼして消えた。 「できれば、今の魔王にも気づかれつつあるから、いなくなろうと思ったのに。」 思ったより居心地がよくて、何だかんだといってとうとう人間ですらない身体にもなってしまって、けど、楽しんでいる自分がいる。 「そろそろ馬鹿な奴らも動き出しそうだし、本業の時間だよね。…なんで、人は同じことを繰り返していくんだろうな。」 |