| ◆ 過去と現在、そして長い未来+++Stage4 結論から言って、あくまでも情報として『仲間』のことを知っただけで、このまま忘れたことにしておきたい程の、とんでもない内容だった。 確かに彼は言った。魔族にもいくつもの種類に分類される。そして、彼等は魔族でも『魔王』と人が呼ぶものの管轄下のものだが、あくまで定められた規律を守るための行為であり、人から見ればそれが悪とされるのも理解しての行動だと認識している。そこまではいい。 だが、トーカはまだ人であり、今年で100歳を超える状態で、実は危険なことになっているということと、確かに魔王の管轄下の魔族であるが、ドルハを含め、彼等は魔王直属の『四天王』と呼ばれる上位階級の者達であること。 そして、実はと語られた、ラウナの正体。 確かに最初からとんでもない連中だとは思っていた。確かに魔族だと言われても今更驚きはしない。 だが、だけど、だ。これはないだろう。 「何だか幻滅させて悪いけど、5代目の魔王は俺なんだよね。」 軽いノリでのカミングアウトに本気で泣きたくなった。 今更聞いてしまえば魔王を退治するなんてこと、できそうにないとは思ったが、こんなところにその対象が普通に出歩いてるなんて誰も想像もしないだろう。 むしろ人間社会に普通に紛れ込み過ぎて反対に怖い。 「それで、なんで『魔王』がふらふら出歩いてるんだよ。」 「基本暇だからだね。暇つぶしに始めた情報屋が結構楽しくて充実してるからさ。」 いろんな人と関わると本当ろくでもないのもたくさんいるけど、いい人もたくさんいるから面白いし、そんないい人の手助けできると達成感とかいろいろ楽しいじゃんとさらっという自称魔王の男、ラウナ。 「俺は何も聞かなかったことにする。」 心の中で思ったことがつい、口に出てしまい、何だかにやにやしたラウナが気持ち悪い。 何だかんだといって気にいっていた連中であるので、今更正体など気にしないと思っていた。ただ、今後の他の連中とのトラブルの際での対応の為に知っておく必要があると思っただけなのに、こんな時にこんな事実を知るなんて。 とりあえず、頭の整理がおいつかないので、横においておくことにした。そして、できるのならばそのまま忘れたことにしておくことにした。それが一番世の為だ。そう納得させた。 「それで、何でトーカがそんなにまずいんだ?」 確かに人であるのなら、寿命として年齢は問題だろうが、彼らの様子を見る限り、それだけではないだろう。 「この近くが彼女の故郷だとは言ったよね?」 「ああ。」 「村の風習で生贄として虐げられる存在がたてられる。それが野生の魔物でも何でもいい。だが、トーカがそれにあたってしまった。」 それで何となく状況の悪さだけは認識できた。 「本来、対象の死亡の確認とともに、見せしめのように遺体をさらされ、風化する。もしくは、魔物の餌になる。だが、トーカは魔物の森へ入り、唯一生きて戻った人間だった。それも、多くの魔物を殺して、だ。それで祟られると余計に阻害した。だが、力を恐れてどちらかというと無視されていたという方が近いな。それで、その後覚えのない罪で処刑されるはずだったのを、俺が拾った。」 当時は魔王が出たとか騒がれて、トーカのことは魔王に殺されたとかいろいろ噂はたったがうやむやになったのだと彼は言った。 その因縁の森に連れていかれた。それは彼女にとって過去のトラウマそのものであり、ラウナはある状況になることを恐れていた。 「どうして彼女が森に入った生きて戻れたか。」 「そういえば。知ってるんですか?」 「丁度、見てたんだ。」 そういって、カイトが自分の召喚獣の一体が森が騒がしいので術によって覗いていたらしい。それで、事態を彼等は把握できたようだった。 「確かにトーカは人間だ。だけど、強い力を持っていた。その力が何であるかは、その話を聞いて理解できた。」 トーカは人間であるが人間ではないのだと、彼等は言った。 その意味がいまいち理解できないシイナに、ちゃんと説明するよと、また違う昔話をはじめた。 世界を創る上で必要なものは光と闇。そして、四つの大きな属性、火、風、地、水。バランスを保つと世界がそこに存在する。バランスが崩れると世界が壊れる。これを管理するのが精霊という存在であり、その精霊を統括しているのが精霊の王。 精霊の王は光の王と闇の王の二人で、互いに同じ力を持つからこそ片方が呑み込む強い力にならずにすんでいた。 だが、王は二人ではなく一人になった。 一つの器のなかに、光と闇の要素を取り込み、一つの人格になった。 けれど、普段は光が表に出て、だからこそ、バランスを保っていた。けれど、光が力を失うと、支えていた闇の力が強くなり、光を呑みこんでしまう。 「その結果、歪んだ世界は崩壊を始める。火の怒り、風の狂い、地の荒れ、水の乾き。整える光の力がなくなると人が住めない世界に成り変る。」 「えっと、それはわかったが、それといったい何が…っ、もしかして。」 「想像したことが同じかどうかはわからないが、トーカがその身に持つ力は精霊王の力であり、一定の心身の崩壊を超えると厄災が引き起こされる。トラウマそのものであるあの森の中では、トーカは非常に危険だ。もしすでに精神損失状態であるのなら、間違いなくこちらを敵として攻撃してくるだろう。」 今の彼女は間違いなく、人が指す魔王そのもの。闇を纏った彼女には、半端な覚悟で近づけば殺される。 「殺さない程度に、だけど、それぐらいの勢いでやらないと、俺達も危ない。だから、改めて問う。それでも一緒に来るか?」 「それは今更だ。」 さんざん人のことを巻き込んでおいて、本当に今更だ。そもそも、嫌いだったら一緒にいなかったし、とっくにパーティから外れている。 「それに、あいつだって馬鹿じゃない。どんなに変わろうが、結局あいつはあいつでしかない。」 どうせ、暴れても、殺せやしない。そう言ったシイナにそれは甘い考えだとラウナは言うが、何故か自信を持って言えた。 「もし、本当にあいつが壊れることがあるのなら、あんたを殺した時だろうから。」 「え?」 「そうならないように俺『達』がどうにかすればいい。それだけだ。だから、あいつは結局俺達を殺すことは不可能だ。」 今まで旅で一緒にいて、その時に見せた表情の全てが嘘であるはずがない。心から彼女は彼らを大事に思っている。だからこそ、彼女にとって何よりも失いたくない存在に違いない。 それを部外者であるが、自分が守ればいい。ちゃんと戻ってこれる場所があれば、いつでも帰ってこれる。 彼女にとって、帰る場所があることが何よりも大事なことで意味を持つのなら、そこに付けいる隙はまだある。 幕間 「対象。確認。」 「お前は…あの頃と同じ、だが、あの頃より深い。…恐ろしい奴だ。だが、敵はとる。そして、お前の力を我等が得て、我等が新たな『魔王』となる。」 攻撃体制。とりかこむいくつもの気配。それをすべて認識する紅。 「我の敵と認識…眠れ。お前たちはこの世界にイラナイ。」 ざっと、一瞬で周囲の気配全てを吹き飛ばす。相手もそれは予想外だったのだろう。 「あとは、お前、ただ一人。イラナイ。だから、消えるがいい。」 向けられる敵意と魔法による刃の数々。 「こちらとて、おとなしく引き下がれない。我等はこの地に住まう魔物。この地は我等のもの。誰にも渡さない。」 少し感じる恐怖。だが、それ以上に今までの想いからくる高ぶる感情がそれを上まる。 |