◆ 出会うのは可笑しな連中だった+++Stage5







増えたことを事後承諾という形で知った日。別に今更一人増えようが大した問題ではないので何も言わなかったが、ここまで大人数になると目立つ。

性格にいろいろ問題ある連中であるが、容姿でも目立つのだ。静かに平穏に生きたいシイナにとって、人の視線の数々が何よりの苦痛であった。

だが、彼は気付いていなかった。彼自身もまた、注目されていたということに。結論から言って、彼は自分の視線には無頓着であったのだ。

「さて、これからどうする?」

「私は一度抜けるよ。情報屋の仕事でね。」

ラウナの言葉に頷いた。元々は情報屋であるのが彼の仕事だ。それをおろそかにしてはこの先の仕事にも旅にも支障がでるだろう。そこまで自由を奪いたくもない。

結果、ガードだというリュマと何か増えていたおかしな魔物を連れて、町の人混みにラウナは姿を消した。

残ったのはトーカとドルハとカイトだ。前衛はシイナ一人ということか。いや、ドルハも多少は前衛でいけたかと、現在のメンバーで戦闘状況がどうなるか考えていると、ギルドへ行こうよ〜とすでに移動し始めたトーカの呼び声に現実に引き戻され、慌てて追いかける羽目になった。

「で、何故こうなったんだ。」

「ん?しぃちゃんどした?」

笑顔で振り返ったトーカを見て、自然と出る溜息。それに失礼だなと文句を言うトーカ。だが、溜息もつきたくなる。

ギルドで一番の高額で、難易度も際難度なものをこの魔法使いはわざわざ選んだのだから。

実力は知っているが、はっきり言って今回は前衛メインになるのはシイナだ。嫌がらせとしか思えない。

実際問題として、彼等なら近づかれる前に倒すだけの実力もあるだろうが、どんな例外的な問題が起こるかわからないのが現状だ。そもそも、ドルハはやる気の差が激しいから大問題だ。

「るんるんる〜ん。」

鼻歌を歌いながらかなり楽しそうに進む魔法使いが先頭のパーティってどうなのだろうか。

「そろそろですね。」

及ばずながらも足手まといにならないようにはさせてもらいますね、と唯一の良心である男、カイトが細長い棒を取りだした。

それでいったいどうするのかわからなかったが、あの面々と付き合いのある人だ。間違いなく一般的な常識でくくってはいけないのだろう。そう思って、自由に行動してもらうことにした。

「さて、ここみたいですね。」

「どんな奴かな〜、楽しみっ。」

好奇心の強い二人が周囲を眺めて獲物を探していた。やる気満々で、また自分の出番はないかもしれないなと思ったら、一瞬で殺気の中に入り込む感覚に陥った。

「おぉ〜きたきた〜。」

「これはこれは、大所帯ですね。」

さてさて、親玉はもっと奥みたいで残念ですねと言いながら、杖を構える二人。ドルハに関しては杖に仕込まれた細身の剣を構えているといった方が正しいが、シイナにとってはどっちも杖だ。

そして、持っていた棒を何やら言葉を呟くと弓へと代わり、それを構えて言葉を紡ぐカイトがいた。

彼は召喚士であり、薬学に詳しい僧侶系統だと思っていたが、薬草をそろえようと思うと、確かに戦闘は必須になってくる。そこではじめて、単体でも戦える力を持っていることを理解した。

「貫け、雷神の槍。」

矢を空へ向けて放てば、空から雨のように雷の刃が降り注ぐ。

確かに彼は召喚士だ。すでに雷の聖霊か妖獣を召喚し、その力を行使している。

「消えろ、我が前に立ちはだかりし障害。燃やせ、全ての罪を浄化する聖なる炎。」

炎が舞い踊るように周囲を巻き込み、次々的である黒い影を焼き払っていく。

その間にも、カイトは雷や氷の刃で切り刻み、ドルハも切り刻みながら爆発物のようなもので一層していく。

あれだけの数を次々と片付けていく彼等はまさに魔王のごとく強さ。けれど、こんな強さではないと、噂ではきく。大国一つを一瞬で消すだけの力があるというのだから、彼等が手を組んで魔王退治に行けば、あっという間に世界に平和が訪れるだろうが、どうしてもシイナは彼等に聞くことはできなかった。それがなぜなのかわからない。けれど、彼等はあくまで『勇者』一行として魔王退治をするために日々を過ごしているわけではないことだけはわかっていた。

このままではまた何もしないままになる。シイナは華麗な彼等の攻撃の数々に見惚れている場合ではないと、急いで戦闘に加わった。

 

 

 

 

幕間

 

ふぅと一息つけば、後ろに現れた相手に顔も向けずに言葉をかけた。

「久しぶり。元気そうで何より。」

「お帰りなさいませ。…魔王様。」

礼儀正しく頭を下げた男は、見るからに魔王であると誰もが思う特徴を身にまとっていた。けれど、あくまで彼は魔王ではない。魔王の代理でしかない。

それを知っているのは魔王に近い者だけ。

「やめてよ。俺はその名前、嫌いなんだよ。」

「ですが、名は相手を縛る力を持ちます。だから、我らは名を知っていても呼ぶことができない。」

それを知っているはずでしょう、と言えば、苦笑するだけだった。

「トーカにも言われたけどね。」

おかげで変な仇名がついてるよ。そう言った彼は複雑そうな笑みを浮かべていた。

「それで、これはどういうこと?」

「…以前から時間がないことはご存じだったかと。」

「そうだね。」

「急激に彼女の時間が消えていってます。」

「それは、オルデールの見立てでも同じ?」

「その彼の見立てだから、です。」

一気に表情が消える彼に不安そうに見ている魔王の姿をした男。

「フォトン、悪いけど、すぐに調べてくれない?」

「御意。」

そう言ってすっと消えた魔王の姿をしただけの彼。空を見上げる本当の魔王。

「きっと、嫌がるだろうけど、無理やりにでも過去に向き合ってもらうよ、トーカ。」

もう、時間がないんだ。きっとキミは消えることを望むかもしれないけれど、そんなこともう許されない。

「君はこの魔王の部下、四天王の一人だってこと、もっと自覚してもらわないといけないね。」

誰にも聞かれることのない魔王の呟き。周囲に広がるのは何もない世界。

かつてはそれなりに栄えた町があったが、一晩で消えた町に朝日が昇れば誰もが噂をするだろう。魔王がまた現れた、と。

「こんな力、本当はいらないんだけど…人が御せない力を手に入れた人は、罰を受けなければいけない。その代償が町の消滅だと、人は理解していない。そして、魔王はまた悪となる。」

魔王はただの番人に過ぎないというのに。

人が踏み外した道をはじめからなかったものとして消滅させるための、神が定めた運命であり、元々魔王なんてものはこの世界には存在しないのに。

それでも、人は魔王をつくり、魔王と呼び、魔王を倒そうとする。

そうしても、神が選んだ新たな魔王がこの地に降り立つだけだというのに、人は気付きもしない。それがまた、繰り返される悲劇に滑稽だとも思う。

そんな世界に嫌気がさしたからトーカは今人の世界からこちらに来た。

それでも、まだ彼女は人のままだから、時間がない。

「…1週間後か。」

彼女の100歳の誕生日を迎えるのは…。









あとがき
第一部はこれで終了。次回から魔法使いの過去とか片づけてから、前世?の因縁片づけて、勇者がどうするか決める話になる予定です。
今までのようなテンションは少しお休みになります。