◆ 出会うのは可笑しな連中だった+++Stage3






シイナが明日までの時間潰しに引き受けた届けモノという簡単な依頼。住所の通りだとここだと、辿り着いた建物の扉をノックするとどうぞと中から声が聞こえた。

「すいません、少し散らかっていて…えっと、ありがとうございました。」

そう言って、シイナが渡したものを受け取って礼を述べた青年。最近おかしなのが近くにいたので忘れていたが、本当に普通の青年であった。むしろ、褒め言葉だ。

「あ、よければこれからお茶にしようと思っていたんですが、いかがですか?もう少ししたら知り合いがきますが、すぐ帰ると思いますし。」

とりあえず、断るつもりだったが、そのままお茶に付き合うことになった。結構引かない強引なところがあるようだ。

そして、お茶をいただくこと数分。きっと彼が言っていた知り合いなのだろう。きっと、彼と同じ普通な…と思ったら大違いだった。

「あれ?シイナ君じゃないか。こんなところで何してるんだい?」

現れたのは、同行人の一人のラウナだった。この怪しい笑顔ではない綺麗な笑顔でいたってまともで普通な青年の知り合いがラウナだとは思わなかった。

それが顔にでていたようだ。

「俺、情報屋だよ?ここには薬草の調達でくるわけ。」

彼程そういったことに詳しい人を他に知らないからねと言われ、納得した。

部屋にある、難しそうな図鑑や書籍、薬品の棚、プランターの数々から、彼がどういった人物か何となく想像がついた。

「あ、そだ。シイナ君。」

いきなりこちらに話を向けてきたラウナに首をかしげると、今日から彼も一緒でいいかと言われた。

「最初にも言ったように、誰がついてくるとしても構わないけれど、本人の意思…。」

「大丈夫です。ここにはあと数日しかいない予定で、もう移動するつもりだったから。」

もしよろしければご一緒させてもらえませんかと、お願いしてきた彼に頷いた。最近出会った中で一番好青年だ。というより、ドルマが一番胡散臭いのがいけない。そういうことにしておこう。そして、トーカが変わり者すぎるからだ。きっとこれが普通なんだ。やっと普通に戻れる。そう、その時までは思った。

宿代がかかるでしょうと、今晩ラウナ共々止めてくれたいい人、名をカイトと名乗った青年に少し感動していた俺は次の日驚きのあまり固まる羽目になった。

「ね、すごいでしょ。」

目の前で、建物の中身が綺麗にごっそり、彼が取り出した腕輪の装飾の中に吸い込まれたのだ。

「改めまして。召喚士のカイトと言います。よろしくお願いします。」

出会った時と変わらない『普通』の綺麗な裏のない笑顔。だが、はっきりいって実力は謎の、もしかしたらわかりやすく怪しい連中より怖い人なのかもしれない。そう、少しだけ思った。

 

 

 

 

胡散臭い笑顔に出迎えられ、何故か機嫌が悪いらしいまったく笑えていないトーカと合流し、一行は船旅をしていた。

本当ならば、もう少しこの先へ進むのはシイナだけでは時間がかかっていただろうが、このメンバーならば問題ないし、何より、行くと言い出したら聞かないのだから諦めた。まぁ、世界を旅出来たらシイナはそれでいいので文句もない。

けれど、こうして改めてこのメンバーを視ると変な感じだ。

どうやら全員知り合いであるらしいが、どういう知り合いなのかまったくわからない。この世界において、勇者がいて、勇者は仲間を集めて魔王を退治する。それが当たり前であるが、果たしてここにいる彼等は大人しく勇者が仲間になってくれと頼んで仲間になるだろうか。

間違いなく断る。そういう奴等だ。だからこそ、自分はラッキーだったのかもしれないが。

「ある意味、バランスはいいよな、こいつ等。」

周りに気配りができる、誰にも優しいお母さんのような立ち場にいるカイト。

放任主義で適当であるように見せかけて、抑えるところは抑える大人なドルマ。

つかみどころがなく、けれどわかってて子どもと大人を演じ分けるラウナ。

じゃじゃ馬で手のかかる常に賑やかな子どものトーカ。

けれど、必要に応じて、真剣に戦闘に参加して、それぞれの立ち位置がしっかりしている。

やはり、一番子どもが必要以上に暴れて、それに悪乗りする兄貴分のようなラウナと時折煽るドルマ。

「…やっぱりお母さんが一番大変だ。バランス悪い。」

けれど、手綱をしっかり握るカイトは最強だとも思った。

「おぉ〜しいちゃん大変!でっかいたこきた!」

大変だと思うなら嬉しそうに指さすな。そう思ったが、言っても無駄だろう。本気で楽しいのだろうから。

そもそも、船を襲う化け物がいるから、退治してくれるならタダで乗せてやるという約束であったので、仕事をしなくてはいけない。けれど、今日くらい大人しくしておいてほしかったものだ。

何故なら、間違いなくあのたこはここで今日トーカという存在と出会ってしまったからこそ、倒される運命になった。可哀そうだなと少しだけ思ったが、餌にされる気がないので剣を抜いた。

戦闘開始から数分。

「…この世界に勇者って必要なんだろうか。」

すごく楽しそうにたこを焼く魔法使いの姿に思った。相変わらずドルマはやる気なくこの騒動でありながら本を読んだままだし、ラウナは何故かトーカをあおっているし。

唯一、揺れで怪我した他の乗客の手当てや誘導するカイトが良心といったところか。

今まで適当に過ごして、適当にあればいいと思っていたが、思ったより世の中は平穏とはかけ離れた過激な世界だったようだ。適当に過ごすのは難しそうだ。

とりあえず飛んでくるたこの必死の抵抗から船を守ろうと思う。

もし船自体に傷がつけば、沈んでしまう。そうしたら、たこを退治することすら意味がなくなってしまう。

「どうしてこうなったんだろう…。」

適当主義がいけなかったのだろうか。勇者は考えても答えは見つかりそうになかった。

 

 

 

 

幕間

「で、八つ当たりで暴れたわけ?」

「当たり前でしょ。適度に動かないと身体なまるじゃん。」

「普段から浮いてて動かないのに?」

「うっさい。」

ふーんとそっぽ向く相手に、ごめんごめんと、本気で謝る気がなさそうな声音で返され、さらに不満げになる。

「ほら、今は大人しくして。」

「む〜これぐらい大丈夫なのにぃ〜。」

「甘く見たらだめだってば。」

ほらできたと、腕に巻かれた包帯から相手の顔に目線を戻す。

「ありがと、いっちゃん。」

「いえいえ。どういたしまして。」

よしよしと頭を撫でると素直に笑う。

「ま、気をつけないと駄目だよ。」

立ち上がる相手に目を向ける。

「だって、『俺達』は『人』じゃないけど、君はあくまでも『人』なんだからね。」

「…わかってるよ、そんなこと。」

けれど、あの日に私は『人』であることを止めたんだから、今更そんなものいらない。

むしろ、喜んで悪魔になってみせる。