◆ 出会うのは可笑しな連中だった+++Stage2








 はっきり言って、これは予想外だ。

そして、生まれてはじめてモンスターに同情した。

「よっし大量〜しいちゃん、これでいいんだよねぇ?」

「へぇ、こいつってばこうなってたんだ〜ほ〜ふ〜ん…結構面白かった。」

ここへ来る前と変わらず元気な二人。倒れている目的の強敵モンスター。

今の目の前の光景が悪夢のようだ。

ことは、ほんの数分前のこと。

遭遇して依頼の強敵モンスター。見るからに体格もいいし空も飛べる翼つき。しかも、堅そうときた。これでは確かになかなか倒せないから依頼が達成されないのも理解できた。

本気でどうしようかと思ったシイナの後ろで、あくびをするトーカ。彼の武器であるだろう銃にのんびり弾を今頃つめているラウナ。

はっきり言ってモンスターはすでにこちらを敵とみなし、戦闘態勢完了状態で、今にも飛びかかってきそうだ。

トーカなんて、魔法使いだから攻撃されれば最悪戦線離脱を余儀なくされる。そう考えて、一応一緒にいるパーティであるので焦ったわけだが、いらぬ心配という奴だったらしい。

「ぶっとべ。」

トーカとラウナの言葉が重なり、同時に放たれる攻撃。

銃口をしっかり敵に向けたラウナは銃弾を連打。トーカは人差し指を対象へと向け、詠唱なしで火の刃を降らせる。容赦のない攻撃の数々が、モンスターの身体を貫いて行く。

ここで初めて知った。

トーカはただの魔法使いではない。上級魔法使いの中でもハイクラスだ。そしてラウナも途中から魔法弾を撃ち込んでいる、弾の入れ替えなし。きっと、最初の弾も普通のものではないのだろう。今ならわかる。ただの情報屋なんてものじゃない。

はっきりいって、この一定距離から一切近づくことを許さない圧倒的な力の差でモンスターへ一方的な攻撃を繰り返す二人に恐怖を覚えた。

そう、彼等は一歩もその場から動いていないのだ。

そして、ラウナはまだ表情的に戦闘を意識して集中しているが、トーカは笑っていた。いつもと変わらないあの笑顔で次から次へと魔法を撃ち込んでいった。

はっきりいって悪魔だ。魔王を倒すことがこの世界の理であるなら、その魔王と言っても過言ではないぐらいだ。

ここにきてはじめて、とんでもない連中と一緒にいることを思い知らされた。そして、敵でないことに安堵した。

「さて、とどめ〜いっくよ〜。」

と、間の抜けた感じで、容赦ない上級魔法を無駄に相変わらず詠唱なしでぶっ放すトーカ。

本気でモンスターに同情した。こんな一方的な虐殺をはじめてみた。

「これだけ焼けたら夕飯になるかな?」

そんなことを言うが、生憎食べたいとは思わない。

「やめとけって。こいつはあまりおいしくない部類の奴だ。」

何故そんなことを知っている?聞いてみたいような聞いてみたくないような…とりあえず聞かないままでいることにした。

とりあえず、目的も思ったよりあっさりと終わったので、依頼達成の為の証拠としてモンスターの爪とお金になりそうな皮やらをとって、町へと戻った。

 

 

 

 

準備を整え、手に入れた紅い石を加工して作った呪具を持って洞窟へと向かった。

何でも、これがないと洞窟で迷って二度と外へでられないらしい。知らない地を旅するのは好きだが、暗い洞窟で一生過ごす気はないので、用心に越したことはない。だからこそ手に入れたのだが…あの日の悪夢からどうも納得いかない。

「なぁ、なんで俺についてきたんだ?」

はっきり言って、シイナがいなくても彼等は単体で強い。

「ん?一緒に旅するのは駄目なんですか〜?」

「いや、そんなことはないが…。」

「なら気にしなくていいじゃん。」

「そうですよ。それより、ここ出たら港町ですよ。」

その言葉に、知っているのかと聞けば、当たり前だと返された。

「だって、情報屋だから。」

その言葉すら胡散臭く思えるのは何故だろう。

わかった。先日のやる気のない姿勢から一瞬にして集中して、あれだけの戦闘をこなしてしまったからだ。

確かに人は見かけによらない。だが、この二人程見た目によらないおかしな連中もいない。そう思っていた。だが、世の中広い。いや、狭いのか。

結論から言えば、『トーカ』の知り合いにはろくなのがいない。

「おんや〜もしかしてトーカちゃん?」

「ん?お〜ミスターディーじゃん。何してんの?」

「あ、本当だ。ドルさんこんにちは。こんなところで会うなんて奇遇ですね。」

仕掛けを解除して進んだ先で出会ったもの。

モンスターかと思えば、怪しい男。ヒト型の高レベルのモンスターかと思ったら、どうやらトーカ達の知り合いだったようで警戒をといた。

「実はさ、昼寝してたら迷ったんだよね〜困った。」

もし道知ってたら一緒に連れて行ってくれない?とか言ってくる。それも、トーカ達ではなくシイナに向かってだ。何故だ。知り合いなら知り合いに尋ねるものではないのか。

とりあえず、二人と同じように好きにすればいいと言えば、何か喜んで抱きつかれた。男に抱きつかれてもうれしくないし、何気に強い力に痛い。

「で、最近見かけなかったのって、ここでずっと迷ってたから?」

トーカの問いかけに、少しだけ首を傾げた男はそうだねと笑顔で答えた。しかも10日ぐらいときた。

いったいどうやって生きていたんだと問いたい。だが、聞いたらいけない気がした。

「とりあえず、はじめまして〜。」

笑顔でそう言った男はとある貴族でいろいろ言えないこと多いからごめんねと、胡散臭いことこの上ないことを言った後、ドルハだと名乗った。

「だからドルさんで、ディーさん?」

「違うよ。情報提供の際に使う仮名でMr.Dってこの人使うからそのまま呼んでるだけ〜。」

つい口に出た疑問に即座に応えてくれたトーカに簡単に礼を述べ、聞き覚えのある情報ソースの名にそれ以上聞くのをやめた。

間違いなく、知ればろくなことにならないことだけはわかったからだ。

世の中、知らなくてもいいことはたくさんある。そういうものだ。そういうことにしておけばいい。

こうして増えた仲間を連れて進む洞窟。今までより手ごたえのあるモンスターに苦戦することもなく…というか、ドルハもそうだが反則的な強さを持つ三人のお陰で楽ができたというべきか。

本当に、この人達は何者なんだろうか。聞いたら世界観が変わってしまいそうだから聞かないが、とりあえずドルハは洞窟でるまでの仲間だと思っていた。

だが、どうしてか楽しそうだからこれからも一緒に行く〜とか軽いノリで言いだした。

まぁ、問題があるわけでもないし、助かるので別に拒否はしないが、本当に何なのだろうか、このメンバー。

歩く破壊兵器ではないか。本当にモンスターに同情する。

だが、こちらも生きる為に同情はするが向かってくる奴らに手加減などできないからおあいこいうことにしておこう。

こうして、洞窟を抜けて港町についた一行は宿で一泊した。

 

 

 

 

目が覚めると、朝がきていた。そして、一緒にいた連れは宿から姿を消していた。

ここでお別れかと思えば、違ったようだ。

『ちょっと散歩してくる〜夕方には戻るから置いていっちゃやだからね〜。』

という、メモが残されていたからだ。何処へ行ったのかはわからないが、戻ってくる意思があり、この先もまだついてくるつもりのようだ。

明らかに自分よりも強いのだから付いてこなくてもよさそうなものだが、彼等の考えることはよくわからない。

「あ、シイナ殿。お目覚めいかがですか?」

そう言って声をかけてきた男。綺麗にきっちり着こなしたそれが、安物で適当にしている自分とは大違いで、そもそも何故この男が声をかけてきたのかも、相手の事もわからず少々混乱した。

「あれ?わかりませんか?」

そう言って、苦笑した相手は名前を名乗った。

「はぁ?!」

はっきりいって詐欺だ。詐欺そのものだ。

確かに最初視た時から胡散臭い奴だとは思っていた。そう、思っていたとも。だが、格好を整えるだけでこれだけ変わるものだろうか。

その見るからに金持ちそうな紳士は、確かにドルハと名乗った。つい昨日出会った洞窟で迷子になった浮浪者のような格好をしていたあのドルハである、と。

髪を整え、前髪をあげてこのきっちりとした格好。まったく別人だ。多少言い方が変わっているが、わざと崩した口調にしてそれは証明された。

昨日トーカと口喧嘩していた時のものと、同じであった。

何だかトーカと出会ってから変わった連中と知りあうようになったとは思うが、考えない方がいいのか、それとももう少し考えた方がいいのか…悩むところだ。

「それで、アンタはいいのか?」

「ん?何がですか?」

「…その口調、何か変な感じがするからやめてもらえない?」

「そう〜?だってね、一応この格好の時はあんまりちゃらちゃらしてるとうそくさいってトーカに言われちゃったからさ〜でもさ、この方が楽だけど、人の反応見ると楽しいからどっちでもいいんだけどね〜。」

とりあえず、胡散臭いどころか全体的に嘘の塊ということにしておこう。詐欺という言葉そのものを被って歩いている男だ。きっとそうだ。

「それで、俺に声をかけてきたってことは、何か用があったのか?」

出会って一日。ほとんど交わすことのなかった会話。そんな彼がわざわざ声をかけてきたことに疑問を感じ、訪ねてみれば愉快そうに笑う。本当に、彼『等』はよく笑う。それも、不気味に、だ。

「本当何の用だよ。」

「いえ、ごめんごめん。ただ、思った以上に頭のいい方だと思ったからさ。」

何だかけなされているのだろうか。

「あ、もちろん褒め言葉。今まで出会った連中は気付かずそのまま別れることが多かったから。久々に面白いと思った。それだけ。」

人の心を読んだみたいに次から次へと言葉を並べる男。

「で、『何の用』なんだ。いい加減俺も行くぞ。」

「ごめんごめん。とりあえず、トーカは夕方意地でも戻るだろうけど、たぶん死にかけてるから今日の夕方じゃなくて明日の夕方に変更しておいてくれない?」

「どういう意味だ?」

「まぁ、これはシイナ殿が知る必要のないことだろうけど、トーカが話せば聞けばいいよ。とにかく、明日の夕方まで自由行動でいい?」

「別に構わないし、そもそも最初に言っただろ?好きにすればいいって。」

「それが問題なんだってば〜。」

だからこそ、ついて行くという意思を見せないと放っていかれる可能性があるからの伝言じゃないと言われた。

こんな奴に言われるとは思わなかったので少しショックだった。

確かにそのつもりはなくても、そうとれることもあるかもしれない。

「わかった。とにかく、トーカが戻るまで次へ進まなければいいんだろ?」

「そうそう。」

伝えたからねーとドルハは隙のない身のこなしでそこから去っていった。

「確かにあの姿だったら貴族だと言われても納得できるかもしれない。」

そう思えるほど、昨日の姿と違いすぎる男を見送り、とりあえず情報収集でもするかとギルドへ向かった。

 

 

幕間

「ちゃんと明日って伝言しておいたよ。」

「…。」

「もう、まだ怒ってるの〜?」

ほら、とりあえずお茶と差し出したカップを奪い取るように取った相手は、それを一気に呑んでカップを男へと投げ返した。いつものことなのであっさりそれを掴むと、チッと舌打ちされた。

「本当、君は俺と彼に対して態度違うよね。」

「はぁ?そもそもの原因が何言ってやがるっ、ふざけんなっ!」

動けない相手は適当にあったものを掴んでは投げた。

「とりあえず、ごめんってば。」

謝る男が近づくと、睨みつける目は変わらずだが、とりあえず何もなくなったこともあり、モノを投げつけることはしなかった。

「低血圧なのも知ってるし、無茶した自覚もあるから全面的に俺が悪い。それは謝る。だからさ、とりあえず、休もう?じゃないと、いつまでたっても動けないよ?」

数日の空腹のせいで、手加減なく食事させてもらっちゃったからと言えば、また舌打ちし、頭を叩かれた。

「っとに、どこか紳士的だ。詐欺だろ。むしろサギさんって改名してこいよ。」

体力バカーモンスターだとか次から次へと低レベルな文句を言うのを一通り聞く。

「まぁ、そうかもしれないね。」

だって、人ではなく吸血鬼ですから。

男は口元だけにやりと不気味に笑った。