これは、勇者と魔法使いが出会ったことによってはじまる物語。

 

 

 

◆ 出会うのは可笑しな連中だった+++Stage1

 

 

目を覚ましたら知らないところにいた。そして、助けてくれたと言う村人Aに礼を言って旅だった。

もちろん、記憶はしっかりあったし、自分の名前もどこの誰であるのかも覚えている。ただ、どうしてここにいるのかだけが不明だ。

そんな彼、この世界において『勇者』という称号を持つ連中が大勢いた。といっても、その中で今もまだ誰一人この世界の敵である『魔王』に辿り着いていないけれど。

ちなみに、彼は勇者であるが、生憎魔王退治に興味はない。ふらふらと歩いて、適度にモンスター相手してはお金を稼ぎながら、世界をとりあえず見て歩いていた。

そんな彼が、どうしてか意識を失って助けられたらしい。生憎、その前後の記憶だけが損失していて、なんだか気持が悪い。

湖に行って、噂の妖精だか魔物だかの見物にいったところまでは覚えているが、そこから先がなく、思いだそうと考えながら歩いていた彼は気付かなかった。

ぎゅむ…       

何だか変な音がした。しかも、ふみつけてしまった感じだ。まさかモンスターかと足元をみると、そこには行き倒れていたのか、動かない人がいた。

とりあえず慌てて足をどけて呼びかけて見ると、目を覚ましたらしい相手が、こちらの顔を見て、にへらと笑った。

分厚いレンズの眼鏡をかけたぼさぼさ髪をふたつにまとめているだけの、行き倒れだったもの。

「何か、久々に人に会いました。」

「こっちはさっきまで人に会っていたから久々ではないけどね。」

「ん?もしかして『勇者』ですか〜?」

腕輪から称号を言い当てられ、間違っていないし隠すことでもないので頷いた。

「へぇ〜珍しいっすね〜。」                                                       

そういって、そいつは立ち上がってこちらを上から下まで見て、楽しそうにしていた。いろいろと謎だ。

「あ、うちは一応『魔導師』のトーカっつー名前。よろしくね。」

差し出された手をつかみ返し、とりあえず『勇者』のシイナだと名乗った。

「でさでさ、勇者ってことは魔王退治でしょ〜でもってその為に仲間集めでしょ〜?何で一人?」

とりあえず、最初は入れ替わりでパーティを組んだりもしたが、魔王退治のやる気がないので一人でぶらぶらしているのだと答えると、すごく面白そうにトーカは一緒についていってもいいかと言ってきた。

まぁ、いてもいなくても問題ないし、来るもの拒まずなので好きにしたらいいと答えると、お礼を言われた。

こうして、勇者は魔法使いを手に入れた。それも、この先知らなくてもいい事実を知る羽目になる面倒事の元であると、今は知らないまま。

 

 

 

シイナがトーカを拾って数日。森を横断して適当に倒したモンスターの皮や爪を売ってお金に換え、変わったことがないか情報を求めギルドを訪れた。

ここにくればお金になる仕事もあるだろうし、危険なことがあればそれを避けて進めばいい。そういった情報も含めて手に入れる為に行く必要がある。そして、こう言う時勇者という称号は役に立つ。

向こうから勝手に教えてくれるからだ。

「いらっしゃいませ。」

何の御用でと、お決まりの文句を言う相手に最近の情報と仕事のことを尋ねると、どうやらこの近くに厄介なモンスターがいて困っているらしい。しかも、それが結構強い奴らしく、何組か失敗しているらしい。

よし、それには関わらないでおこう。そう決めた。だが、この魔法使いが余計な事を言い出した。

「お、すごいよ。」

「何が?」

「ほらここ。報酬。」

指さされたそこに書かれたもの。確かに今自分達が欲しいと思っていたものだった。

そこまで欲しいわけではないが、この辺りは大抵見て歩いたので、そろそろ次へ進みたいわけで、その為には面倒な洞窟を抜ける必要がある。その洞窟を抜ける為に必要なのが、この紅い石だった。

何ということだ。入手方法がややこしくて困難だと思っていたものが、こんなところにあるとは思わなかった。

だが、実際そのモンスターを倒さないことには無理だ。

さぁ、困った。どうしたものかと考えるシイナは、できればこの依頼を受けたくない。だが、そう考える暇はなかった。

何故なら、同行者となった魔法使いのトーカが勝手に引き受けてしまったからだ。

最悪だ。

そう言えば、ここ最近雑魚ばかりでほとんど棒のようなものの上に乗って歩きもしないこの魔法使いは、いったいどんなことができるのか知らない。

もしかして、この面倒な依頼を一人で片付けなければいけないのだろうか。そのことに思い立った瞬間、最悪だともう一度同じ言葉が出てきた。

けれど、引き受けてしまった以上は仕方ない。とにかく行くしかない。

これで失敗したら信用が下がって、依頼の内容も下がりそうだが、なるようになれだ。

こうして、シイナは仕方なく魔物討伐に向かうことになった。その間、元気に鼻歌歌いながらご機嫌な魔法使いが恨めしかった。

森に入ると、いつもならでてくる雑魚っぽいモンスターが一匹もでてこない。しかも、不気味だ。間違いなく何かがいる。なのに、相変わらず鼻歌歌いながら遠足気分の魔法使いにげんなりとなる。

どうせ戦うのは自分になる。本当に最悪だと本日何度目になるのかわからない溜息をつきながら進むと、獣のような低い咆哮が森の中に響いた。

「おぉ、これはいる〜近いね。」

「そうだな。」

「よし、ぱぱっとやっちゃおう。」

「そうだね。そうしてくれると助かるよ。」

「そんな簡単に…って、あんた誰?!」

いつの間にかシイナとトーカの横に増えていた人物。

「やぁ、トーカ。久しぶりだね。相変わらずな感じかな?」

「うん。相変わらずな感じがどれを指すのかわかんないけど、私は変わらず私のままだよ〜。」

そう言って会話を続ける二人はどうやら知り合いのようだ。

「で、誰ですか。」

尋ねると、そいつも笑顔で答えた。やっぱり魔法使いと同類かと思ったらちょっと違った。

「俺は情報屋のラウナ。街の住人のことから、現在の勇者全員の進行状況など、いろいろ知ってるから、御用があれば何なりと…もちろん、商売だからお金もらうけど。」

そう言って渡された名刺を受取り、荷物にしまった。

「それで、なっちゃんはここで何してるわけ?」

「おいおい、いい加減なっちゃんはやめよう。」

「む。わかってて言うところがひどいよね。とにかく!何でこんなとこいるわけ?」

さっきから気配感じてて変だなとは思ってたけどと言うトーカに、仕事だとばっさり質問を斬ったラウナ。

「ま、仕事は終わったわけだ。で、暇だからトーカちゃんのご機嫌伺いにきたわけだ。」

「何それ。じゃあ、終わったでしょ〜帰らないわけ?」

「いや、何か面白そうだから御一緒させてもらおうと思ったんだけど…どうだろう?」

役には立つよと、今までトーカに向けていた目線をシイナの方へと向けた。

トーカの時と同じで、誰が増えようと別にかまわないので、その通り言えばしばらくよろしく〜とフレンドリーな彼に握られた手が上下思い切りふられて少し痛かったのは内緒だ。

こうして、仲間が増えたが、変わらず戦闘への不安は消えない。何故なら、情報屋というだけあって戦闘向きっぽく思えないからだ。

はぁ…溜息もなくならない。

 

 

 

幕間

「それで、どうしてここにおられるんですか。」

「そうだね。暇つぶしだというのは実際当たってる。」

「…気をつけて下さいよ。貴方に何かあったら困るんですから。」

「そうしたら、守ってくれるんだろう?トーカちゃん。」

「…敵陣に突っ込むことだけは止めて下さいよ、ラウナ『様』。」

戦闘を歩くシイナの後ろでこっそりと交わされる聞かれることのない会話。もし聞いたとしても、その言葉の意味をまだシイナは知らない。