人の想いは時に現の世へ形を成して現れる。

それは真実か偽りか。込められた想いだけのそれは想いのままにそこにある。

ひっそりと人が気づかぬすぐ側に潜んでいるそれは、時に影響を与える。

 

プロローグ

 


 友人と別れた帰り道。日々通るその道は、彼女にとって慣れ親しんだ道だ。

 親は迷子になるなよと言うが、通い慣れたこの道で迷う方が可笑しいし、彼女自身もそこまで幼い子どもでもない。

 けれど、彼女はその日、家に帰ることはできなかった。

 歌声が彼女の耳に届き、誘われるように家に続く道とは違い、右へと曲がった。

 けれど、右に曲がったからといって、帰れなくなるほど彼女は方向音痴でもない。

 ただ、今の彼女はその歌が何の歌であるのかを知っていた為、興味を持ったのだ。だから、家はすぐそこなのだからと、少し寄り道をする気になったのだ。

『・・・・・・はどこへ行くのかと、キミは何を望むのかと、あの頃はまだ何も知らず・・・ただ側にいれば良かった。』

 聞き取った歌詞から、自分の聞き間違いではなかったのだとわかった。だから、余計に気になって歌声のする方向へと歩みを進めたのだ。

 すでに、彼女にとって知っている町の風景ではないということに気付かず、歌声目指して行ってしまったのだ。

 その日、彼女が家に帰ることはなく、数日後に捜索願いが出され、一ヶ月した頃になって発見されることになった。

 それも、最悪の形でだ。

 彼女の自宅近所にある総合病院の植木にて、眠るように横たわって遺体として発見された。

 これが事件の始まりであり、その後も続く失踪からの不審死の事件として警察が認めざる得ない最初の被害者だった。