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「大丈夫?生きてるかい?」 お隣の男が声をかけてくるが、反応する元気もでない。 「それにしても、本当におたくはおかしなヴァンパイアだよね。」 赤い食べ物なら大抵代わりになり、強いヴァンパイアでありながら、必要になる血液は持ちがいいし少量でいい。聖水や十字架など、世間で言われるものには何の問題もない。少々日に強くない程度で出歩くことはできる変わり者。 そんな変わり者のここまでぐったりする程の苦手なものが、まさかのキュウリだなんて。 「でも、何でまたキュウリなんて食べたのさ。」 駄目だとわかっているものを、何故ときくと、反対の隣人がおしかけてきて、無理やり口に押し込んで去って行ったらしい。確かにあの女ならそういう奇行をしてしまう。納得した。 「ほら、とにかく口直ししろ。」 差し出された腕。何とかかみつき、得た血で口直しして、どうにか身体を起こす。 「何なんだ、あの女は。最近家庭菜園にはまってると聞いたが、あんなものまで栽培してるとは…。」 さすがは魔女だなというが、家庭菜園の品としては間違ってないのに、体質が悪いお前のせいだとはとにかく黙って言わないことにして、背中をさする。 「だが、助かった。俺は死ぬかと本気で思った。」 「大げさだな。わからんでもないが…もう少し気をつけろよ。」 ハンターはハンターでも、『ヴァンパイアハンター』が狙ってるだろというと、知ってるけど無視だという彼に、男もあきれ気味ながら、らしいから放っておく。 「でも、ハンターじゃなくても動くだろうけどな。最近、事件が続いてるからな。ヴァンパイアに襲われて血を奪われたっていうのが。」 「俺はそんなことするほど餓えてないし暇でもないがな。」 「誰も、お前が犯人だとは思ってないさ。むしろ、お前の無害さは、やる気のなさと同様に有名だろうしな。だが、ヴァンパイアが危険な存在であることは人からどうしても認識される。」 だから、事件が起こればやはり危険だと認識され、ハンターへの依頼が増える。その結果、彼等のような妖怪は住みにくい世界へと変わっていく。 「ま、どうにかするだろ。その為の7貴族当主であり、それをまとめる総裁がいるんだからな。」 「どうだろうな。最近は7貴族という七光りだけの意味しか知らない馬鹿もいるからな。」 時代の流れから、本来の役割を忘れてる連中が多すぎる。それも事実だが、そこからはずれたところにいる自分たちがとやかくいう問題ではもうない。 「ま、無茶はするなよ。」 「…そんな予定ねぇよ。」 そう、今も昔も、俺は俺のままやる気のないヴァンパイアでいい。7貴族である事実が消えなくても、7貴族という権力を使うつもりもないし、どうこうするつもりもない。 7貴族でも古株の一角が、先に手を打つだろう。そうでなければ、ここの管理人のばあさんが動くだろう。 あのばあさんも性質が悪い程、力を持った曲者の狐だ。 「だいたい、このアパートを標的にされたらここの奴全員が敵意向けるんだから、俺がどうこうする問題じゃないだろ。」 俺だけでなく、お前だって、漫画読みながらごろごろしてられないだろ。そういうと、男は笑っていた。 |