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「帰ってなかったのか。」 「貴方こそ、もう少し貴方自身の価値を考えて、他者がいる中で無防備でいることを控えた方がいいわよ。」 「大きなお世話だ。」 そもそも、害があると認識されているものは、通常この中に入れないのだ。この女は一度、成行きで助けて以来、敵意がなくなったせいで、簡単に入れるだけだ。例外になった奴に無防備だとか問われたくない。 「あら、どこかいくの?」 「ああ。元々、出かける予定があったんだ。」 「ふーん。」 俺は女を無視して支度を続ける。少し気温が昨日より低いのか、ひんやりする今日。寒さは俺にはあまり関係がないので、冷凍庫に入っているアセロラシャーベットと出して朝ごはん代わりに口にする。 「朝からアイス?」 「俺たちみたいなのにとっては、何でもいいんだよ、結局な。」 「そういうもの?」 「そういうもんだ。」 少し考えた女は、自分にもよこせというので無視した。だが、あまりにしつこくてうるさいので、仕方なく適当に手前の奴をつかんで放り投げた。無駄にキャッチをしっかりするからむかつくが。かといって、こぼして掃除する羽目になるのも面倒なので、結局俺にとってはどっちも気に食わない。 「あら、イチゴアイスなんだ。」 「俺は赤いものなら何でもいいからな。」 「そう言ってたわね。さむっ!おいしいけど、やっぱり寒いわよ。」 「なら食うな。」 そういいながらもくれるからいい奴だ。だが、結局本心も何もかも隠して何もなかったようにしてしまうから、彼を知る者は歯がゆい思いをする。だが、彼はこういう奴だから、仕方ないのかもしれない。 「さて、お前はどうする?」 「そうね。帰ろうかしら。でかけるんでしょ?」 「ああ。」 また来ると言い、二人でアパートの入口まででてきた。そこで、突然大きな影に攻撃された。 「何っ?!」 「…ああ、面倒くさいのがきた。」 大きな影。それは、鉱物でできた巨大人形。その頭上に乗り、操る張本人。 「今日こそ、観念なさい!ドールマスターである私に跪くのです!」 「黙れ。人様の家の前にこんなでかぶつ持ってくるな。迷惑だ。」 「本当に。迷惑な大きさの銅像だわ。さすがに入口のオブジェにもできないものは、迷惑以外なにものでもないわ。」 相手ははじめて俺以外がここにいることに気づいたようだ。 「あなた、誰よ。化け物…?その割に、気配は人間よね。」 「ええ、私は人間以外になったことないわ。」 何だか、この二人の喧嘩に発展しそうな勢いだ。それなら勝手にしてくれという感じだ。 「俺は用事があるから、喧嘩なら余所で勝手にやってろ。あと、お前はこの銅像はきっちり持ち帰れよ。」 そういって立ち去ろうとすると、元々の目的の為に女が動いた。 軽くよけて、何事もないように足を進める。だが、地面に穴が続いていくのはあまりいただけないものだ。 「迷惑。何度も言ってるだろ?」 ガシっと、重たい人形の腕を片手で抑え、ひねり返して倒す。その時に、操る張本人も地面に落ちた。 「俺は用事がある。邪魔、するな。そして、帰れ。…じゃーな。月姫も弟子をどうにかしろよ。」 そう言って、俺は立ち去った。今度は誰にも止められることなく。だから、あの後二人がどうなったのかしらない。 帰宅した際に何もなかったから、二人とも帰ったのだろう。 |