ご・・・賑やかで迷惑な傘使いの師弟







その日、少しだけ寄り道しようと思った。それがいけなかったのだろう。またあのゴスロリ女と遭遇した。

「ここであったが百年めよ!」

びしっと相変わらず服に合わない派手なレモンのような傘を向けて、女は突撃してきた。

本当に非常識な女だ。せっかくの寄り道という名の墓参りも台無しだ。

「私はあんたを倒すって決めたの。賞金額は知らないけど、あんたなら結構な額がついてそうだもの。」

ハンターという連中にも組織形態があり、面倒なことにランクごとに対象について賞金額がついているらしい。俺はこれでも7貴族なので間違いなく賞金額は高いだろう。だが、ハンターごときに俺が7貴族であることを知られているとは思えないので、そもそも額がついていないだろう。

それに、新人で実力もなさげなこの女が最初に狙うには、分が悪いのに、わかっていない。だから、余計に面倒だ。

「いい加減にしろよ。俺はお前に構ってる暇ないんだって。」

「あんたになくても、私にはあるわ。だって、最初にあったとき、ぶっ飛ばされて屈辱受けたもの!」

賞金額より、そっちが本命なんじゃないかと思ったが、面倒が増えそうなので言わなかった。

「とにかく、覚悟なさい!」

そう言って、女は傘の柄を抜き、刃をこちらへ向けた。開いていた傘は閉じ、そちらもこちらへ向け、銃として狙っている。仕込み傘という奴だが、それにしてもこのレモン傘は趣味がよろしくない。そもそも、ハンターのような世間であまり目立つわけにはいかない存在が持つものではない。目立ちすぎだ。

でも、思ったより動きは悪くない。それなりに型を持って、攻撃を仕掛ける剣、逃げ場を塞ぐ銃弾。扱い方は悪くない。だが、経験はまだまだだ。軽くよけると、すぐに顔にでる。そして、焦りがでる。そして…何よりだめなのが体力が持続しない。

「今日はもう終いだ。」

俺はすっと影から影へ移動するように、気づかれずに動いた先で、持つ手首をたたき込み、麻痺させる。その為に堕ちる刃。慌てて向けられた銃口も、ふっと方向をずらし、すっと取り上げる。

「筋は悪くない。だが、そんなんじゃ『月姫』は継げないぜ。」

そう言って、俺は姿を消す。ばっと女が振り返るころにはもういない。

「また、逃げられた!しかも師匠を知っているとは…やっぱり強者ね!私の目に狂いがなかったということね!」

次はつかまえると意気込む女。もう二度と会わないことを願う俺は帰宅すると、勝手に入り込んでいる『女』に文句を言う。

「おい、いい加減お前の弟子をどうにかしろ。月姫。」

「何を言うのよ。いいじゃない。けなげでかわいいでしょ?それに、私はもう月姫じゃないわよ。」

そう言われても、月姫というハンターでの通り名しかしらないので、俺はそれ以外で呼ぶつもりはない。

「あと、俺の家に何度もくるな。ハンターだろ。」

「いいじゃない。隠居の身だもの。」

「だが、7貴族でも知られるハンターのくせに、仕返しされたらどうするつもりだよ。」

「あら、そんなことならないわ。だって、貴方と一緒だもの。」

そうでしょと言う女。本当に面倒くさい。

「でも、嬉しかったんだもの。ハンターからも、毛嫌いされて、一人だったから。」

変わり物は、同じ味方からも疎遠される。そん中、命の危険の際に助けてくれたのが、敵であるはずのヴァンパイア。

「うるさかったな。さっさと殺せって。」

「そうよ。情けなんてごめんよ。」

「生憎、俺は殺す面倒は嫌いだ。」

「でも、普通は助けはしないわよ。」

だから、誰からも助けてもらえない一人きりの私は嬉しかった。だから、ハンターをやめた。そういう女にため息がでる。俺はそんなつもりで助けたつもりではない。

「それにしても、貴方があの有名な…。」

「俺は有名じゃない。」

「そうね。ハンターも、妖怪達が憧れる7貴族ですら、ほとんどの者達が貴方について知らないでしょうね。」

だから、不思議で興味を持ったのかもしれないわ。そういう女に、お茶飲んだら帰れよと一言言って、俺はそれ以上会話に付き合う気もなく、休むことにした。