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「真っ白だな。」 窓から見る外は真っ白の世界になっていた。今日は予定がないし出ることもないから支障はでない。それに、ここの大家は古い大狐だ。簡単に崩れるようなアパートの造りにしていないし、結界が頑丈にできているので生活上で問題が起こることはないだろう。 「だが、寒すぎるのと扉が固まって開かないのも困るな。」 頼まれていた資料作成ができたので、大家に渡すために部屋を出ようとしたら扉が開かなかった。 「どうしたものか…。」 突然やれと言ってくる大家も大概問題ではあるが、それで言われたことをしておかないと後でうるさいし、何より容赦なく放り出す程の実力者でもある。 「面倒だ…。」 部屋や扉を壊しても文句を言われるのでどうしたものかと考えた結果、仕方ないので力を使って窓から出ることにした。 「疲れるからいやなんだがな。」 呪を唱え、指を切り、血で模様を描くと、出来上がる。ヴァンパイアが使う移動手段の一つ。すっと触れれば手は窓から外へと抜ける。そのまま前へ行けば体も外へすり抜けていく。 外へ出ても、2階ではあるが、空を飛べるヴァンパイアなので問題もない。 「寒っ、最悪。」 すたっと降りると、真っ白の中に自分の足跡がつく。今日は他の住人も外へでていないのかと思っていると、前方に一人見つけた。 「エルフィン…?」 「ああ、レイ殿。おはようございます。」 綺麗にきっちり挨拶を返した彼女にこちらも返しておく。 「お前のところは扉固まってなかったのか?」 「いえ、固まってました。ですが、私にはその程度のこと、どうにでもなりますから。」 そう言えば、彼女は炎龍であったことを思い出した。温度を上げて凍ったところを溶かせば問題ない。 「今から、大家さんに呼ばれてとびらを開けるところなんです。」 成程と納得した。こうやって、アパートの扉は開き、住人も外へ出られるようになるのだろう。ならば、もう少し大人しくしておけばよかったと少しだけ思った。 「俺も大家に用があるから一緒にいくか。」 「え、あ、はい。」 下を向いたら、次第に彼女の足元の雪が綺麗に溶け、彼女を中心に円形に雪がどんどんなくなっていった。 今、この場所の気温のすごい上昇の仕方に、多少困ったが、雪のおかげで何事もなく冷えた。 「どうやら、お前はこなくてよさそうだな。」 綺麗に茹ったアパートは屋根の雪もなくなっていた。この調子だと、扉もあいていることだろう。 「いえ、報告はしないと…。」 「そうか。」 とりあえず、一緒に大家の部屋へいき、現状報告をした。俺は頼まれた資料を渡すと、お駄賃代わりのように、ちょうどあった米袋を一袋貰った。 仕方がないので、先日勝手に冷蔵庫もたくさん補充されたことなので、人間でごはんを食べる必要のある優那とついででコウリュウを呼んで夕食にした。 「あ、そうだ。これ渡しておく。」 そう言って、コウリュウに渡された一枚のカード。そこに描かれていたのは、風の精霊だった。 「優那ちゃんにも渡しておくな。これは、風の加護がついた奴だ。」 どうも、今日といい、精霊の力が少しおかしいのだと彼はいい、水と雪の精霊はどうにかなったが、まだ風の精霊が落ち着いていないとのこと。何かあってからはいけないので、渡しておくのだと言った。 「わかった。貰っておく。」 その後、普通に夕食を食べて彼等はそれぞれの部屋へと帰って行った。 |