いち・・・住人は皆ふつうじゃありません







その日、冷蔵庫には何もなかった。

日差しの暑い日々が続いたせいで、だるい俺は三日ほどごろごろとすごし、買い物もいっていない。だから、食べたら食べただけなくなるのは当たり前なのだが、何だかがっかりする。

「仕方ねぇな。」

面倒ではあるが、このまま買い物にでなければ、餓死するだろう。仕方ない。

立ち上がり、着替えて上着を手に家を出た。

どうせボロアパートで、住んでいる住人もろくでもない奴等しかいない。泥棒なんて入りたいと思わないだろう。だから、鍵なんてかけない。

「今日も眩しい。」

最悪だと思いながら、俺はサングラスをかけて、近くの小さなスーパーへと足を進めた。

「あら、あの人。」

犬の散歩をしているらしい、どこかこのあたりに住んでいる住人だろう。別の奴と噂話をしている。暇な連中だ。

俺は無視してスーパーへ向かう。適当に目についた食べたいものを籠に入れ、レジを済ませる。

開く自動ドア。突然空から飛び降りてきた人影。

「またお前か。」

現れたのは、ゴスロリ女。普通のゴスロリ女と違うところは、あいつがハンターだってことか。

「相変わらず服と合わないレモン傘だな。」

「何よ、大きなお世話!これは先代からの形見で、私の武器なんだから!」

覚悟しなさいと、傘を閉じてこちらへ向けて構える女。本当に面倒だ。今日も、相変わらずそれなりに強い日差しの中、仕方なく外に出てきたというのに。

「帰るから。お前も帰れ。」

俺はパチンと指を鳴らす。すると、突如現れる黒い影の大群。

「同じ手に何度も…って!逃げるなんて卑怯よ!」

うるさい女を回避し、俺はアパートへ帰宅。

「おや、でかけてたんかい?」

「ああ。ばーさんも今日も元気そうだな。」

「もちろんじゃよ。まだまだ若いもんには負けん。お前も、あんな小娘に負けるんじゃないよ。」

それこそ、7貴族の名が泣くよと言う。

「ばーさんこそな。あんたも、俺と同じ7貴族だろ?」

「とっくに引退した身じゃ。」

くっくっくと笑って、引っ込んだ。

本当に、このボロアパートは変な住人が多い。家を継ぐ気がない、7貴族と呼ばれる俺のようなヴァンパイアやあのばーさんのような天狐といった、力あるわけありが済んでいる気味の悪いと評判のアパート。

今日も、だらけた住人達の個性的な日々が過ぎていく。

「俺に相手にしてほしいなら、せめて、その結界ぐらいこえられる力ぐらい持てよ。」

追いかけて入口まできていたゴスロリ女に一言かけて、俺は部屋に戻った。

悔しがる女の叫びが聞こえたが、実力がないのなら関わらない方がいい。本当の意味で7貴族に誇りがある連中とぶつかったら、あんな女、すぐに消されるだろうから。