番外編:暴走を止める手段

 

その日、事件が起きた。

「エルっ!」

「どうしたんだよ、兄貴。」

広間でのんびりくつろいでいたエルディーの元へ、血相を変えた兄、アルシファが走ってやってきた。

「ディーがいないんです!」

「え?どういうこと?」

「城中気配を探っても見つからないんです!」

何者かに侵入された形跡はなく、最後に感じ取れる気配の場所は庭の中で、ぷっつり存在が消えてしまったのだ。

「まさか、ディーが帰った?でも、それなら俺達が気付くはずだよな。どういうことだ?」

「だから、焦ってるんですよ!もしかしたら、あのバカ共かもしれないんですよ!」

最近、落ち着いてきたとはいえ、魔王に反発する者はいなくなることはない。

そのため、雑魚で相手にすらならないので放っておいた集団が、最近活発になったという情報を手に入れたのだ。

そのため、近いうちに面倒なことやらかされる前に始末しようと決めたところだった。

「それと・・・町の商人が一人、姿を消しました。」

「あー・・・あいつが密偵者か。」

なら、さっさとお仕置きしてわからせてあげないといけないねと、エルディー黒い笑みを浮かべる。

「先ほど、イルとフェンには連絡を入れました。フェンがすでに捜索しているので居場所はすぐにわかると思います。シーラスカには、周辺をうろつくバカの始末を任せておきました。」

「慌てているわりにはすでに手はまわしてるんだな。」

俺のやることないじゃんと言うエルディー。

「たっだいま〜見つけたよ。」

そこへ、タイミングよく現れたフェンが二人に居場所を報告する。

敵の数やグレンディスの位置など、事細かにだ。

「さ、行きましょうか。先にイルが敵を散らしてくれていると思いますので・・・エル、貴方にディーのことは頼みますね。」

「了解。」

「私とアル兄様で邪魔する人ぶっ飛ばせばいいわけね。」

「そうです。」

まさしく悪魔の微笑。実際魔族なのでその通りだが。

その後、地獄絵図のような、悲惨な惨状がそこにあった。倒れた魔物や魔族の山ができ、周辺の物は破壊されつくしていた。

助けられた側としても、この惨状を見て素直に喜べないし、まだ暴れる気でいるのだ。

「おい。何があったんだよ。」

「こっちが聞きたいけどね。」

エルディーに抱き上げられ、降ろせと言っても降ろす気がないそいつに溜め息を付きながら聞く。

けれど、反対に聞き返され、穴が空いてどんでこうなったとだけ言っておいた。

「侵入しても足取り掴まれるから、あいつら上にいけないんだけど、あの種族は空間移動能力が高くて、魔王の城への侵入もできるんだよね。」

「なかなかやるんだな。」

「けど、侵入したらすぐにわかるから、被害ないけど。」

「今回のこれは被害ないと言えるのか?」

「ディーが無事だからいいんじゃない?」

エルディーの言葉に何でもいいやと考えるのをやめる。そして、そろそろあいつらを止めなくてはいけない。

「あれ、どうやって止めるんだ?」

「うーん。俺じゃ無理。シーラスカなら止められるけど、フェンは無理かな。それに、縦社会って奴が困ったもので、上二人は確実に無理。」

「そうか。」

こうしていると、こいつも話がわかる奴で助かると思うのだが。

「どうしたものか・・・そうだな。」

少しだけ考え、大きな声で彼等の名前を順番に叫んだ。そして・・・。

「いい加減止めろ!」

と、怒鳴った。するとピタリと止まりこちらを見た。そして、飛んできた。うわ、最悪。エルディーごと押しつぶされる羽目になった。

フェン、女の子だからお願いだからもうちょと・・・それとシーラスカもノリで来るな。あとアルシファもお兄ちゃんならもう少し大人しく・・・呆れてるイルドゥカみたいに飛びつくのやめろ。

とにかく、止まった奴等とともに城へ戻り、またいつもの日常に戻るのだった。

 

おまけ

「ディー。」

「それ以上寄るな。鬱陶しい。」

「エルと楽しそうにしてましたね。」

「いつもはアル兄が独占してるじゃん。」

「どっちもウザイ。」

一度こうとなると何を言っても聞かない。暴走が落ち着くまで止まらないというのは、困ったものだと思う。本気で逃げるべきかと少し悩んだのが間違いだった。

腕を掴まれて逃げ場を完全に失っていた。

「じっくり今日のことも含めて話がしたいのですが・・・。」

「なら、何故ベッドの上で押し倒してやがる。やだぞ、俺は。」

「お断りします。」

「俺は?」

「エルも入りたければ入ればいいでしょう。知らない中でもないですし。」

「そう?」

「やめろ。体がもたん!阿呆、離せ、ギャー、さわんな!」

叫ぶがもう無駄だった。うるさいと言わんばかりにアルシファに口を塞がれ、結局二人に滅茶苦茶やられてしまった。