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その日も魔界は平和だった。

ただ、魔界の魔王や時期魔王やその兄弟達といった、魔界の重要面々に何故か気に入られてしまった哀れな人間を除いてだ。

彼は現在、いきなり夕食会を催して、朝まで騒ごうということになり、その食事を作っている。普段ならここは立派な城でたくさんの使用人たちがいるが、拒否権を無視されて全員が彼の料理が食べたいと言い出し、文句を並べながらキッチンに向かっていた。

何だかんだと言いながらも、人数分用意する自分を呪いながら、手抜きをすることなくびっちりと料理を作り上げていく。

そして、集まる食堂のテーブルに並べられた食事を見て、魔王のドルフィーヌや彼女の弟の子ども達の目の色が変わったのを見てしまった。

何か、余計なことになりそう。そんな予感がした。

最悪だと思いながら、食事を進めていくと、思ったよりすんなり食事が終わり、あれっと首をかしげる。

しかし、油断してはいけない。何度もここへ来てから学んだことだ。

やはりといっていいものか、ろくなことにはならない。下にいくつもある広い部屋の一つに集まり、ゲームの用意をはじめていた。それに、自分も強制参加。

しかも、先日やった魔王様ゲームとやらだった。

「さぁやるぞ。」

ドルフィーヌはかなりやる気満々だった。

そして、逃げたいが始まってしまった魔王ゲーム。

魔王となったのは、フェンだった。相変わらず運がいいなと思っていたら、とんでもないことになった。

「じゃあ、天使は悪魔に好きですと告白するー。」

と、かなり面白半分に言った魔王命令。これはやはり嫌がらせなのだろうか。

「悪魔は俺だな。」

と、シーラスカがカードを見せる。もう、逃げたい。

「天使は・・・ディー様だ。」

かなり楽しそうにしている。やはりフェンも悪魔だ。自分からカードを奪って全員に見せられる。これで完全に逃げることはできなくなった。

「ディー様。好きって言えばいいだけだよ。」

その言葉を言うことが嫌なのだが・・・聞き届けてはくれないだろう。

しょうがないと、諦めて、じっとシーラスカを見てボソッと小さな声でいう。

隣に座っているアルシファが何故か怒ってる。事態が悪化してるなぁと思ってると、いきなり目の前にシーラスカが現れ、抱きついてきた。

「もう、相変わらず照れ屋さんだね。可愛い奴め。」

ぎゅうっと人形みたいに抱きつくシーラスカを必死に引き離そうとするが、びくともしない。これだから体力馬鹿は嫌いだと思っていると、そこまでですという言葉とともに割り込む手があった。

またこいつはと思うが、かなり機嫌が悪くなっているので放っておくことにした。

「俺はお前の抱き枕じゃないぞ。」

「わかってます。」

それなのに、しっかり抱きつかれ、アルシファの膝の上。まったく聞いちゃいない。

「じゃあ、次いくよ。シーラスカもそれ以上ディー様に手を出したら半殺しにするから。」

殺しはしないが、半殺しにはするらしい。

「次の魔王はだ〜れ?」

フェンの声に、ドルフィーヌがカードを見せた。正真正銘の魔王。性質が悪そうだと思っていたらまさしくそうだった。

「そうじゃな・・・太陽が祝福のキスを全員に・・・。」

「全員に誰がやるかっ!」

ぐわっとつい自分が太陽ですと言わんばかりに反抗するグレンディス。

「ならば、この中で四人選んで、ならよいぞ?」

魔王命令だから実行しろよと言われ、うっと言葉につまる。

背後から抱きついたままのアルシファの顔をうかがうと、ここで選ばなかったら後が怖いとすぐにわかった。

しょうがないと腹をくくり、離せとアルシファの腕の拘束から抜け出し、両頬を手でつかんでキスをした。

こんなおいしい状況をアルシファが逃すはずもなく、こんな時に何を考えてやがるこの馬鹿はと逃げようとしても遅い。

「・・・っ・・・ん・・・。」

腰にまわされる腕。

「兄貴、今はそれぐらいにしときなよ。」

エルディーの止めがはいり、嫌そうだが、さっきよりやわらかくなったアルシファがグレンディスを解放する。しかし、すでにふらふらになっているグレンディスにはこれ以上は御免被りたい。

「さっさと命令終わらせて次のゲーム進もうぜ?」

と、顔を覗き込んで問いかけるエルディー。つまり、いつまでもこんなことをしていても、余計に事態が悪化するだけだと理解したグレンディス。もう誰でもいいわっ!と、ちょうど近くにいたエルディーにキスをする。

これであと二人。

「兄様達ばかりずるいー。ディー様。」

と、席を立って自分からグレンディスにキスをする。もう滅茶苦茶である。だが、命令下した魔王は別にそれでも問題ないというし、反対に面白がっていた。

「フェンっ!俺にもっ!」

と、シーラスカまでもがやってくる。もちろん、フェンがすぐに撃退したが、状況がよくなったわけでもない。

そこへ、グレンディスにとっては神の手が差し伸べられた。

「いい加減にしておけ。」

ぐいっと強い力で腕を引かれ、誰かの腕の中にいた。

「イルドゥカ。」

「ゲームの罰が終われば次に進まねば終わらんだろうが。」

まったくと言いながら、イルドゥカの隣に座らせられるグレンディス。やっと彼等も大人しくなってほっとし、適当に目の前にあったカップの中身を全て飲み干した。

「おいっ!」

慌てたイルドゥカが止めようとするが遅かった。

ふらっと身体が後ろに倒れかけるのを咄嗟に支えるイルドゥカ。さすがに様子がおかしいことに気付いたアルシファ達もまさかという思いでいた。

「まずい・・・。」

本気でやばいと顔に出るイルドゥカに、珍しくドルフィーヌも何事だと思うのだった。

「こやつ・・・。」

と、全て言う前に、ぱぁっと花が咲き誇る可憐な乙女の笑みのごとく、笑ったグレンディスがイルドゥカに自ら抱きついた。

「うさぎー。」

しかも、名前ではなくうさぎ呼ばわり。間違っていないがかなり複雑である。

「ディー!」

「酔ったみたいだね。」

「可愛いからいいけどな。もちろん、フェンも可愛いよ。」

「お前は黙れ。」

そんな四人の会話を聞いた他の四人が呆然と見ていた。

「うさぎ、好きだぞ。」

と、言い、罰ゲームの最後の一人。彼からのキスを受けることとなったイルドゥカ。

相変わらずこういうことには駄目なイルドゥカ。顔を真っ赤にして、やはりといっていいのか、兎になってしまった。

そんなイルドゥカに抱きついて擦り寄ってくるグレンディス。確かにその姿は可愛いが、普段が普段なだけに別人に思える。

「ディー!駄目ですよ。」

「そうだよ。」

さすがに独り占めされて面白くない奴等は動く。

しかし、すぐにきっと睨まれて嫌いと言われたら、彼等は固まるしかない。ある意味哀れな奴等である。

そして、何を思ったのか、じっと黙っているキルマを見る。そして、にこっと笑みを向ける。

そんな笑みが可愛いなと少し思うキルマだが、突如目の前にある彼の顔にさすがに驚く。

「お前・・・犬か。」

「え?」

何のことだろうと考えていると、ちらりと視界に入った兎もとい、イルドゥカが狼と言い、成る程と納得するのだった。

彼は変化をすれば狼だ。狼は確かに犬かもしれない。だが、狼であるので犬と呼ばれるのは納得いかなかった。

しかし、目の前で目を輝かせて犬だと言う彼に、つい「はい」と答えていた。そんな自分が馬鹿だと思いながらも、抱きついてくる彼をどうにもできない。

どうしたらいいのだと隣にいる姉と妹の顔を見るが、助けてくれる気配はなかった。むしろ、殺されそうな殺気を感じるのだった。

それは、彼等もまたこの人間に興味を持ち、好んでいるからだろう。

「えっと、これは・・・。」

親鳥に懐く雛鳥のようにくっついてはなれないグレンディス。しっかりもう一方の腕には兎のイルドゥカもいる。

「まぁよいではないか。」

面白そうに見ていたドルフィーヌが声をかけ、魔王ゲームを続けることとなった。

そして、魔王の座を手に入れたイルドゥカ。

「星は昼寝の時間だ。寝に行くぞ。」

酔っ払った彼は止められない。ならば、前回のように寝かしつければよい。

それに素直に従うグレンディス。

もうお開きかと片付け始めるドルフィーヌ。

しかし、まだ問題が残っていた。

「・・・キルマよ。諦めて付き合え。」

「・・・。」

グレンディスはイルドゥカとキルマを離そうとしなかった。

キルマはこの時、この場にいた全員の殺気を向けられた気がした。

とりあえずということで、キルマはグレンディスを担ぎ上げる。それに嬉しそうにするグレンディス。

今日も平和に昼寝を決行。

神父は動物達に囲まれながら夢世界を楽しむのだった。

そして、目を覚ました神父の叫びが響くまで、そこは静かだった。








あとがき
動物に懐かれやすいのだと思われる。