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ミルフィアが寝たままのカルステに抱きつきながらずっと叫んでいた。 「・・ミル・・・フィ・・・ア。」 と、カルステが目を覚ました。ミルフィアはそれを見て「良かった・・・。」と言ってギュッと抱きしめた。 「お帰り、もう置いていかないでよ、カル・・・。」 「・・あぁ、悪かった。」 ミルフィアはこれでもういいと思った。だが、そうはいかなかった。これに気付いたカルロが三人のガーディアンに背を向けた。その一瞬をついて三人同時に抵抗で攻撃をした。 だが、カルロとて、気付かないと言うわけではない。ほんの一瞬の出来事だった。
ザッ――――――――――――――――――――――
カルロ、ミルフィアの顔や服、そして、その辺りには赤い血が飛び散る。 「カ、カル・・・。」 ミルフィアが目にした物。それは、酷い光景だった。ガーディアン達も目を疑う。 「イ、
イヤー―――――――
!」 暗く静かな闇の中でミルフィアの叫び声が響いていた。
なぜ、これが決められた運命なの? と、ミルフィアは頭の中にこの言葉が回る。今の彼女にはすきだらけだ。 「ミルフィア!しっかりしなさい。駄目よ、自分を見失わないで!」 と、アクマルスの声がどこか遠くで聞こえる。 確かに、無理も無い状況だ。カルロが攻撃をかわすため、カルステを盾にしたのだ。弱っていても、やはりガーディアンの力は強い。生身の人間ならば、消滅している。 カルロも、この光景に動きが止まっていた。何故だかわからないが、動けなかったのだ。 「カル・・・。」 と、またも眼に涙を浮かべている。このままでは、もうカルとは会う事ができなくなる。 そう思った瞬間、カルロからカルステを奪い返した。 さっきまで、辛うじて目を開けて話してくれて彼は今は完全に動かない。 「よくも・・・。よくもカルを・・。消してやる!」 今日初めて殺して消してやりたいと思った。いや、正確には二回目か。両親が殺されたあの日、殺した犯人を殺してやりたいと追跡して追い詰めたのだ。 小さい頃より、生命の大切さはわかっている。だが、本当に殺してやりたいと思ったのだ。 「お前を、消してやる・・・。」 ミルフィアは完全にきれている。しかも、自我を失っている。普段一緒にいた彼女ではない。それはカルロも思った。 『 この子が本当に、あの子なのか? 』
一瞬の出来事。ミルフィアが呆然としているカルロに素早く近づいてブレスレットを奪った。そして、唱える。 「 チェンジオーバー・クライス 」 姿を変えた次の瞬間にはすでに攻撃態勢に入っていた。 「 ブレード 」 と、手から光の球が現れてそれが長細くなり剣となる。 「 我に力を貸し、悪しき輩を消せ! 」 と、むちゃくちゃに振り回す。だが、たとえむちゃくちゃだろうとも、魔法がかかっている剣だ。かわしても影響は出る。 結構長く時間がたったように思える。三人のガーディアンは力が限界の為、動けない。目の前ではカルロとミルフィアが激しい戦いを繰り広げている。今はミルフィアが優勢だろう。 「お前は絶対に消す!」 完全にいってしまっている。止める手立ては無い。 そして、とうとう終わりがくる。 「さ、今すぐ消してあげるよ・・・。」 と、壁を背に座って追い詰められたカルロ。見下ろすミルフィアが剣を突き刺す。 そこへ、何か影が動いた。 「その・・・へんでいいだろう・・・。落ち着け、ミル・・ア・・・。」 ミルフィアがカルロののどに刺そうとした寸前でカルステが腕を止めたのだ。今は絶対に動けないはずなの怪我。今でも、たっているだけで精一杯に見える。足元にはポタッポタッ・・・、と赤い血が落ちている。 「・・ル・・。」 今、やっとミルフィアは自分を取り戻した。そして、自分がやっている事の重大さに気付く。 「私、こんな・・・。」 とてもおびえている。それも、しょうがないだろう。 「だ、大丈夫・・。お前は悪くない、だ・・・だから、心配・・・す、する事は無い・・・。」 と、途切れ途切れで言う。立っているだけでも精一杯なのだから、話す事など普通は出来ない。 「 ホーリー・クロア 」 と、変身もせずに唱え、カルロの力を吸収した。カルステのブレスレットはまだカルロが持っているはずだ。 「カル・・・。魔法・・・。」 と、驚いていた。カルステは少し微笑んでその場に倒れた。 「カル、カル!ねぇ。」 と、慌てて駆け寄り、体をゆする。どうやら、気を失ったらしい。この怪我であれだけ動いたのだから。 「カル〜。」 と、首あたりにギュッと抱きついてホッと一安心。 こちらも、驚いていた。クライス・マスターとは、制服のようなあの服を着るもの。しかも、今まで普通にしている時には魔法など使えなかったはずだ。
この三人にアクマルスが近づいてきた。カルロは今、別に問題は無い。問題はカルステだ。 「ミルフィア、ちょっといい?」 と、ミルフィアをその場から離れさせて、治癒魔法をかけた。 「これで、傷はふさがったわ。でも、まだ安心できない。ほら、起きなさい、カルステ。」 と、カルステを起こした。 三人のガーディアンとミルフィアには笑顔があった。 「カル、良かったよ〜。」 「お帰りなさい、駄目じゃないですか。」 「そやで、めっちゃ心配したんやぞ。」 「そうよ、ミルフィアを何べんも泣かして〜。」 と、四人から言われた。いまいち今の自分の状況をわかっていないカルステだった。 「・・・とう・・。」 と、小さな声で一言言った。四人とも聞こえなかったが、たぶんこうだろうと思った。 “ありがとう”と言ったのだと。迷惑かけて悪かったと言う謝罪と、心配してくれる仲間がいてくれてうれしかった。
そう、和んでいた四人。それを見ていたカルロ。彼はもう動けない。 「うわっ!」 と、急にカルロの叫びが聞こえた。振り向く五人。そこには、知らない人とカルロの姿があった。カルロはナイフで切られたような傷ができ、血がにじんでいる。 「まったく、何度も失敗をして・・・。」 と、手を前に伸ばして魔法を使った。 ミルフィアは無意識にカルロをかばった。先程まで、殺すとまで言って攻撃してた彼女ではなくなっていた。 「あら、命拾いしましたね・・・。ま、いいでしょう。ですが、もうあなたは戻る場所はないですよ。ハデア様の命令です。」 命令?仲間を消すなんて、いったい何を考えているんだ。 「ちょっと、何よ!」 と、文句を言う。だが、役立たずにはようがありません。と一瞬眼が凍りったように見えた。 「ま、いいでしょう。ハデア様の愛する姫様が言うのですから、彼の生命はそのままにしておきましょう。」 何の事だ?私が姫? 「あなたは、ティアラを創りだした姫の生まれ変わり。そして、後ろにいる彼は王子の生まれ変わり。ハデア様が憎む男の生まれ変わり。しかも、異邦人ですね・・・。」 異邦人。その言葉は誰もが反応した。反応を見せないのは、当の本人ぐらいだ。 「ちょ、ちょっと!異邦人って、カルは違うわよ!」 「ま、思いは自由ですよ。ですが、彼は異邦人です。間違いはありません。まったく、あの王子とそっくり。いやらしいったらありゃしませんよ。」 と、無気味に笑いながら闇の中に消えた。
カルロを連れて一緒に神殿にもどった。 戻った時、ナオとマオになぜこいつがいるんだ、と問い詰められた。当たり前だが、笑ってごまかした。 「さて、最後はレンファさんのところですね。」 と、次が最後のガーディアン。どんな人だろうかと興味がわくミルフィア。 もうすぐ終わる旅。 太陽と月の光。世界を光と闇にわけ、見守る守護者。
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