ティアラ×クラウン×ガーディアン
朱紅の翼-叶わぬ願い
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長い廊下を歩いて、広い部屋についた。たくさんの樹やろうそくに火がついている。 「や、シュネルド。久しぶりだね。」 と、挨拶をする。ナオも久しぶりと言う。すると、シュネルドは急に立ち上がって言った。 「なんだよ、来たんかいな?それやったら知らせてくれたら迎えにいってやるのに。」 人懐こそうな男が、顔見知りの四人に向けて言っているようだ。いきなりのこの第一声で固まるミルフィアとカルステ。 「お、こっちが知らせで聞いとったクライス・マスターか?よろしゅうな。」 と、挨拶をする。よくわかんない変わった人と判断したミルフィア。 「あ、シュネルドさん・・・。」 と、思い出して肩からさげていたかばんの中からあのペンダントを出す。 「これ。渡すように言われたんですけど・・・。」 と、手渡す。それを見て、彼の様子が変わった。いきなりカルステの首元の服を上に引っ張って、怒鳴る。 「こ、これ!どないしたんや?渡すようにって、誰からや!」 この様子には何かあると、四人は考える。 「ちょ、ちょっと!カルが苦しいでしょ、その手を離して。」 と、ミルフィアが二人の間にわってはいる。あ、と我に返ったらしくその手を離した。カルステはその場でしりもちをついた。
しばらくして、シュネルアは少し落ち着いたようだ。そして、先ほどの事に対して謝罪する。 「さっきはすまんかったな・・・。だがな、教えてほしいんや。それを渡したんが誰なんかが・・・。」 と、辛そうに言う。どうやら、あの人と関係があるらしい。そう言えば、あの人もどこか寂しそうな顔をしていた。 「メルビアさんです。メルビア・アーレックって言ってました。」 と答えると、彼は目を見開いて驚いている。 「おい、本当にメルビアか?間違いないんか?」 と、体を乗り出してカルステに問いだす。その人がそう言ってましたとだけ答えた。 「そうか・・・。メルビア・・・。」 と、寂しそうにつぶやいていた。 「そうや、お前、ちょっと付き合ってくれへんか。」 と言って、腕を思いっきり引っ張って部屋をでる扉まで行った。 「シュネルア。記憶を引き出すなら、彼の過去のなくした記憶も引き出せますか?」 「お安い御用さ。さー、行くぜ――。」 と、部屋を出て行った。 過去を引き出すと言う事はどういうことだろう? 「ガーディアンは全員生命の記憶を読み取る事が出来るのです。僕も一応できますからね。ですが、彼の記憶はどうしてもある年を境に見えないのですよ。」 ネアルドはそれで、どんな人も助けるお人よしだとわかってガーディアンを召還したんだと言う。 「カルの過去・・・。あの人がどうして過去なんか見るの?」 「彼が会ったと言う、女性が捜している人かどうか確認したいからじゃないですか?」 と言ったと所に、アクマルスが口をはさむ。 「彼、昔ここに使えていた巫女の事が好きでね、愛していたけど、彼女は自由を知り、教えてくれたアレンと言う男の所に行ったのよ。だけど、アレンは人間でしょ?彼女はきっと今でもこの場所から消えたままの姿よ。」 その説明だけで充分だった。あのシュネルアと言う人は失恋したって事。 「え、でも。」 と、思った疑問が一つ。その人が今も前のままでいるって事。アレンという人が人間だと言う事。つまり、その人は人間ではなかったのだろうか。 「そう、彼女は妖精だったのよ。この神殿に住むシュネルアに毎日祈りを捧げる巫女だったの。その妖精の種族が今も生きていられるのは彼のおかげだったからね。」 どうやら、あの二人は深い関係だったようだ。 その頃、こちらでは・・・。 「確かにメルだった・・・。しっかし、こいつ強情だな。ネアの言う通り、一定の年から何にもわからん。」 と、考え込んでいる。シュネルアの場合、相手にじかに触れて記憶を読み取る物なので、相手にも負担がかかる。なので、眠らせてから術をかけた。 「こうしてると可愛ええのになんであんなつらしとるんや?」 と、彼の寝顔を見ながら言う。確かにごもっともな事だ。 「しっかし、どうすっかな・・・。このままやとネアに首しめられてしまうわ・・・。」 と、別の事で悩みだしたのだった。
どう言い訳をしようかと考えているシュネルアをよそに、こちらでは楽しい会話が繰り広げられていた。 「それより、なんでさっさと言わないのさ。」 「え?何をだい?ミルフィアが誰に何を言うんだい?アクマルスは何か知ってるのか?」 「そうよ、当たり前じゃない〜。だから、あんたもナオもあんまりあの子にくっついてちゃ駄目よ。」 「どういう事です?」 「僕も駄目なんですか?」 と、いきなり中に入った者にはわからないと思われる会話。 「こいつ、あの子の事が好きなのよ。」 と言う。ダー!っと、他の者に聞こえないように叫ぶが遅い。 「え?そうなの。」 「ふーん。」 と言った、返答が返ってきた。その後すぐに、はー?っと、二人そろって叫んだ。 「アクマルスのバカ!」 と、顔を真っ赤にして言う。どうやら、男三人は全然気付いていなかったようだ。 「それより、もう言ったのか?」 「言うわけないでしょ!」 と、ナオに力強く否定する。そっか。と少しほっとしたらしい。なんか、娘を嫁に出さないと内に隠す親のようだ。 そんな会話をしている途中、眠っているカルステを抱きかかえてシュネルアが戻ってきた。 「彼は、記憶にかとう鍵を掛けとるみたいや。」 と、一言言って、カルステをネアルドに渡した。そして、今日はゆっくり休みやと言い、部屋に案内した。 なんだか、またも無駄のように一日が終わった。いったいいつになったら封印をしてこの旅が終わるのだろうか。
太陽の光が窓から差込み、朝が来たようだ。 「ふにゃ〜、おはよう〜。」 と、まだ眠い目を擦りながらすでに起きている三人のガーディアンに挨拶をした。ネオとマオは別の部屋にいる。 「あれ、どうしたの?そんな顔して・・・。」 三人とも、様子がおかしい事を察知した。昨日と何か違う。 「あれ、カル・・・まだ寝てるの?めずらしい・・・。」 と、ふとまだ寝ている彼の姿が目に入った。 「・・・だ。」 と、ネアルドが何かを言う。だが、聞き取れなかった。なんだか言いにくそうだった。 「・・ねや。こいつ、昨日眠らせてから起きひんねや・・・。」 シュネルアがそう言った。聞き間違えでは無い。カルステが目を覚まさない? 「ど、どういう・・・事・・?」 「たぶん、精神的になんらかのショックが起こりよって、意識が鍵のかかった心の奥に閉じこもってるんやと思うんや。」 一瞬耳を疑った。カルステが起きない。もしかするともう話す事が出来ないのかもしれない。 「ねぇ、どうして!どうしてカルは起きないの!」 と、シュネルアの首もとの服を思いっきり引っ張って力任せに前後に振る。 「落ち着いてください、ミルフィア。彼の事を心配しているのは僕達も同じなんですから。」 と、二人を離すネアルド。ミルフィアはその場にペタンと座り込んだ。 「カル・・・。」 そして、また泣き出した。どうしていいかもわからず、とりあえずその部屋を後にした後ろの三人。
別の部屋に行き、ナオとマオも呼び出した。 「どうしてだ・・・。カルステが起きないだって?」 「そうや、昨日の記憶の読み取りでなんかあったんやと思うわ・・・。」 原因ははっきりとわからないが、これしか思い当たらない。 しばらくの間、その部屋は静まりかえっていた。 「でも、このままでもいけないわね・・・。」 と、アクマルスが口を開いた。 「アクマルスの言うとおりだな。今はどうするか考えないとな。」 「な、思ったんやが、もう一回記憶を読み取って原因を調べた方が早いんちゃうか?あの深い闇の中に隠され、しっかりと鍵のかけられた心の奥の今は忘れられている記憶ってのがどうもきになってな。」 と言う。それにはここにいる全員が気になっていた。彼は昔の記憶がまったくない。いつのまにか怪我を負ってミルフィアの小屋の近くにある、小さな公園のような森の中に倒れていたのだと言う。 その時に、きっと何かが起こったのだろう。そして、その記憶を拒絶するほど、忘れてしまいたいほどの強い記憶。強ければ強いほど苦しむ事となる。だが、それはかえって自分を消す事にもなる。 それが、記憶封奥異。記憶を心という無限の空間の奥に封印してしまう事。 もしそうならば、彼にいったいそれほどまでしたいと願ってしまう出来事とは何だったのだろうか。 「早いとこどうにかせなやばいで・・・。体がきっともたんやろうしな・・・。」 そう、このままでは体がどんどんと衰弱して元に戻る事が不可能となる。今の状態は魂が心の閉ざされた扉の中にいる。体の中に入っていないのと同じような物だ。 「どうしたらいいんだ。どうしたらカルステは目を覚ますんだ?」
その頃、部屋に残っている眠ったままのカルステと涙を眼にいっぱいためて我慢をしているミルフィアがいる。 「カル〜、どうして目を覚ましてくれないのさ。約束したじゃない。約束破る気?もう、私との約束なんて忘れちゃったわけ・・・?ねぇ、答えてよ〜。」 と、その場に崩れる。今までもこれからも、ずっと一緒だと信じて疑わなかった。朝起きたら彼がいて、遅くなったときは夕食を当番ではなくても作って待っていてくれた。落ち込んだときは、不器用な彼だがいつも励まして助けてくれた。 「私じゃカルの助けにならないの・・・。」 静かなその部屋の中で、小さく声を殺して泣いているミルフィアがいた。 部屋にやってきた一同は、かすかに聞こえる声で中を覗いて必死にこらえつつ泣いているミルフィアを見てとても苦しかった。
輝く太陽は少しずつ空高く昇っていく・・・。今日も、世界中の生命の為にたくさんの光を浴びせながら・・・。 だが、この神殿では暗く闇に包まれた朝だった・・。 誰もが、笑顔を消していた。 大切な物をなくした時の悲しみ。そんな簡単なものではない。
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