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終章 人が持つもの 鏡衣智が部屋で今日配達屋が届けてくれた中身を見ていたら、達烏がお茶を入れて持ってきてくれた。 「それは、京さんからですか?」 かつて、鏡衣智が天界で過ごしていた頃の同業者の名前。どんな人でどういったものを抱えているかなどは何も知らないが、鏡衣智と同じような人であると考えている達烏。 表には出さず、ただ己の中に全てを押さえ込んで閉じ込め、己のみで解決しようとする危なっかしい人。 それを支えるのが、話で出てくる少女。自分もその少女のように鏡衣智を引き留められるようになりたい。 「頼んでおいた情報…。引き出しておいてくれたみたいだからね。」 京の知り合いであるある男の持つ情報の量は計り知れない。あの男を敵に回すことは、多くのものを相手にしなければいけないし、己の命さえも危うい。 何せ、自分達の事がほとんど洩れているといってもいいぐらいだから、敵に回った時はその綻びや弱点をつかれる。 「次元が、違うというのに、ですか…?」 「そうだね。でも、それを言うのなら、私も違う次元に存在するものですよ。」 あの配達屋の少年少女やキサ、そして京を含めた者達はこの『世界』に存在するものではない。 「世界は、広いようで狭いものだからね。そして、人が思うだけで、世界は増え、そして消える。」 人の思いで左右される世界だってある。キサのいる夢世界や自分達がいる天界や神界や聖霊界など、存在が危ういものは全て、簡単に消えてなくなる事が出来る。 そう、魔王がいる魔界だって、今回戦う事になる魔王のいる空間の歪みだってそうだ。だが、全ての生物の中には奇麗事だけではなく、醜い汚れた心を持っているから、なかなか消える事はない。 「人から醜い汚れた心を取り除いたら、世界はどうなってしまうんだろうね?」 いいかもしれないが、反対に何の面白みもなければ動く事のない退屈で壊れてしまうかもしれない。 だって、人によっては涙や怒りがひどく醜く嫌う人だっているのだから。楽と喜びだけでなんて、人は生きる事はできないから。 人を憎む時もある。だが、それと同時に和解し、再び手を取り合えて以前より仲が良くなる事もある。それの、繰り返し。 それがなくなってしまえば、ただ皆で同じように楽して笑っているだけの世界になる。 「喜怒哀楽の全てが揃って、人は人らしくなれるのかもしれないね。」 「悲しみ、その悲しみを作った原因を憎むこともある。だが、時が次第に癒す事もある。」 だが、魔王にとっては長い時を得てしまったためか、それとも別の何かが原因なのか、どれだけ時が流れても悲しみから解放される事もなく、恨み憎しみが増していく。 「何かに憎しみを持つことが悪い事ではないが、行き過ぎるのはいけないだろう。きっと、人は皆不器用だから、歯止めが利かないんだろうな。」 だから、魔王はどこまでも突き進み、堕ちていった。 「恋愛も同じなんだろうな。」 同じ人を好きになったもの同士がいれば、誰かが幸せを手にいれ、誰かが幸せを攫み損ねる。そこからこじれる事もある。 だから、やはり人には憎しむ心がなくなることは無い。そして、なくす事も出来ない。 「人が人を愛するのにも、人は人を憎み、そしていがみ合う。」 「…鏡衣智も経験があるのか?」 「さぁね。昔の事は忘れましたよ。」 読んでいたものをしまい、鏡衣智は達烏が渡してくれたお茶を飲んだ。 「今度こそ、会えるよね…。」 前回は会う前に一区切りが打たれた。 「今度で必ず止めるから。ね、………。」 キサが呟いた言葉が聞き取れることはない。 それは、一種の呪を持つ言葉だから。 唯一魔王が愛したキサだけが呼べる、彼の名前…。 「皆まで、巻き込んじゃう事になっちゃうなんてね…。」 きっと、皆は笑顔で何言ってるんだと言うだろう。 皆それぞれ、いろいろな過去を経験してここにいるから。 それぞれの過去を越える為の手助けをしたいと願う人達だから。 だけど、黙っていたかった。 それは大きな罪だから。 「これで、本当に終わりだよ…。」
あとがき 第二部、覚醒編終了〜。やっとです〜。第一部、出会い編より長くなりましたね。 今回、他の連載&シリーズキャラ達登場です。それも、キサちゃんかなり重役?! 近いうちに、今回のを含めて、キサ達の動向をドリーム・キーパーにて連載開始する予定ですので、よければそちらもお読み下さい。 さて今回の覚醒編で、多少戦闘状態入ったり、それぞれの力の守護者達の登場。 京や紫音やキサ達にキャリーシャ達。たくさん登場して来ましたが、この先、第三部でもちまちまと登場する予定です。 紫音は微妙ですが、京や京を通じて凛あたりが登場する予定です。 しっかし、これは当サイト開設時から連載していますが、全然終わりませんし進みませんね(汗 でも、来年ぐらいには終わるかなぁと…。それか再来年ぐらいには…。 |