第1章 対決の前兆 灯露は久しぶりにぐっすりと眠りにつき、夢を見た。ここ最近ではばたばたとしていた事が多かった為にこれほどぐっすりと眠れた事は無かった。 灯露を含め、魔王復活を企む組織の悪魔と呼ばれる者達を倒すメンバーがそろい、顔を合わせたあの日から一週間が経っていた。 だが、今のところ何も異変は起こっていない。諦めたのかなと思いつつも、慎重に何年もかけて計画してきたのだろうから、そう簡単に諦めるわけがないと鏡衣智が言うので、灯露もそれなりに注意を祓っている。 その為か、熟睡する事が出来なかった。だが、疲れが溜まっていたのだろう。今日はぐっすりと夢の中だ。 夢の中は暗く静かだった。ここには灯露以外のものはなにもないと感じるほど何も無く闇が広がっていた。 灯露は何もないと感じていながらも、どこかで何かがあると確信しているのか、何かに向かって歩き出した。歩いて歩いて、ひたすら何も無いその場所で何かを見つけようと歩いた。 コツコツと灯露が歩く場所には音がした。ここには間違いなく歩く道がある。何かに導かれるように、忘れた何かを取り戻す為に、灯露は意識が遠のく中、歩きつづけた。そして、一つの光が灯露に差し、思い出したかったが思い出したくなかった過去の光景が広がった。 その瞬間、灯露は目を覚ました。はぁはぁと息が荒い。身体も、寝ていたわりには疲れている。あの夢は現実だったのだろうか。 「何だったんだろう、あれは・・・。」 しかし夢から覚めてしまえば何も見えなくなる。胸の奥で何かがパチンと音を立てて壊れるような感じがするほどの何かを見たが、思い出せなかった。 「何を、忘れているのだろうか・・・。」 だんだんと自分の事に不審な点がある事に気付き始め、この先何かが起こる予感がした。そう、この予感はもっと前からだ。だが、何時からなのかはわからない。 「・・・やだな、こんなに中途半端なんて・・・。思い出せないじゃない。おばあちゃんもお母さんも教えてくれない幼い日の自分の事。誰か、教えてよ・・・。」 布団をギュッと掴み、顔を押し付けた。自分が今どういう状況なのか、何に怯えているのかがわからないという恐怖が灯露を襲っていた。 次の日、何事も無かったかのように空は晴れる。灯露は思い身体を起こし、支度を始める。今日は連休明けで学校がある。そして、もうすぐ試験も始まる。 「やば、時間ないし。」 灯露は慌てて階段を駆け下り、朝食を簡単に済ませ、勢いよく外へ出て行った。 「まったく、最近余裕が無い子ね。・・・また、この感じ・・・。あの子が変わったのは何かが始まるからなの、お母様。」 今は無き母の顔を思い浮かべながら、窓の外で鳴いている黒い鳥を見ていた。また、何も出来ずに灯露の心が傷つくのを見ているだけの自分になると、無力な自分を呪っていた。 灯露は一週間の通常の生活により、夢の事もあるが大分落ち着いている。 「おはよう、風里さん。」 「おはようさんどす、灯露はん。」 通学は皐月を迎えに行く前に風里の家によってから行く。皐月を迎えに行った後は、いつも郁と雅季に出会う。今では羽梟も途中で出会い、六人仲良くと言うのか、楽しく通学している。といっても、中には口ゲンカも混じり、仲がいいとは断言しにくい点もあるのだが・・・。 「灯露、おはよう。」 「おはよう、郁。雅季さんもおはようございます。」 「おはよう、灯露さん、風里さん。」 という具合に、相変わらずこの兄弟は皐月の事は眼中に無いらしい。 「羽梟さん、おはようございます。今日は何か情報ありますか?」 「んあ?情報は無かったよ。ただ、達烏さんが悪魔の方に何か動きがあったような事を鏡衣智さんに言っていたかな?でも、本腰で仕掛けてくる気配はまだ無いらしいけど。」 「そうなんだ。でも、まだいまいち実感がないんだよね。」 「・・・灯露、そのような化け物に近付いてはいけない・・・。」 「失礼なお嬢さんだね。君も十分化け物の仲間でしょう?」 「・・・違う。私は修道女だ。お前のような輩とは違う。仲間でもない。」 「はいはい、郁は立派な修道女さんだもんね。もうすぐ一人前になれるんでしょ?でも、仲間ではあるから、そこは否定しちゃだめだよ。」 灯露の言葉が入り、この対立は収まる。ただ単に、郁は灯露が自分以外、しかも人ではないものと仲良く話をしているのが嫌なのである。しかし、灯露が言うのならばと、今は前より強く警戒したりすぐに攻撃態勢に入ったりはしなくなった。少しは進歩したのだ。 そんな会話が六人で交わされる。誰が見てもただの友人同士の語らいに見えるだろう。とても仲の良い、友人同士に。きっと、この六人が世界の重大な鍵を握っている物だと、誰も気付かないだろう。 五人はそれぞれの教室へ行き、何時もと変わらず授業を受けた。 昼休みに入った頃、放送で、六人は校長室へ呼ばれた。何故かはわからないが、誰もが鏡衣智関係だと感じていた。 灯露達が校長室を訪れた時、すでに他のメンバーはそろっていた。 「まったく、ここを使用に使いよって・・・。」 どうやら、ここの校長もある程度話の内容を把握しているようだ。 「まぁまぁ、そういわないで下さいよ。」 達烏が言うには、この校長は幻想人でありながら、その力を持たなかった堕落の烙印を押された人らしい。だから、今回生贄として捧げられる事はないらしい。 で、その校長がこの鏡衣智を知っている理由は幻想人としてだけではなく、校長の父親と鏡衣智がどこかで知り合って、友人同士になったのがきっかけだったと言う。今では腐れ縁と言う奴らしい。 何かあるたびに、出会うらしい。五十年前もそうだったが、今回もこの事に巻き込まれてしまったらしい。 「で、皆を呼んだわけは、相手側に少し動きがあったから早めに報告しておこうと思ってね。」 「動いたって、どのように?」 「ちゃんと話すから、話の間に言葉を入れないでくれよ、雅季君。」 「わかりました。で、話して下さい。」 「気がはやいね、まったく・・・。」 鏡衣智は苦笑しながら、話を始めた。 「実は、ここにいる六人はまだ、誰も完全に覚醒して力を使いこなせていないんだよ。」 「鏡衣智や私、邦陣は力を制御して使いこなす事ができていますが、灯露さん達はまだ完全に覚醒しきっていないのですよ。多少は力に目覚めて使えるかもしれませんが・・・。」 そう言いながら、達烏はどこからか六つの小さな球のついたブレスレットを取り出した。 「相手は完全に覚醒して、力で対抗されないうちに生贄の儀式を終えようとして、動き出したようなんです。なので、出来れば一人には絶対にならないようにしてほしいのです。それと、だいたい皆さんがどこにいるか把握しておきたいので、これをつけておいてほしいのです。完全に力が解放された時、それが無理やりだったり、体が追いつかなかったりした時、これが補助してくれます。」 達烏は六人それぞれにそのブレスレットを渡した。 とくに、変化だけの状態の白藍さんが一番危ない。郁さんも、魔を魔によって抑え、そして聖によって祓うやり方をやっているので、少し危ないです。魔には魔によって抑えるよりも、光によって抑えて光や聖によって祓うもしくは封じるのが一番いいのですよ。」 確かに、間違いではないと、何も言い返さない郁。 「後は、雅季さんです。聖水や浄化関係に詳しいですが、大人数にはすぐに対抗できる状態ではないと思います。雅季さんの場合は、郁さんと一緒にいないとあまり意味がありませんし、郁さんも同じです。魔放石と魔封石は二つで一つと同じ事で、使う者が別の者でも、互いが見えない何かで繋がっているような関係の者ならば問題がないですから。後は、確実に覚醒して使いこなす事です。」 達烏は四人にそれぞれ気をつけるように言った。そして、灯露と皐月にも一番厳しく言った。 「幻獣人の生贄としての価値だけではなく、儀式に必要な太陽と月の力の魔力を宿す者ですから、後回しにされても、必ずどこかで手を出してきます。幻想獣はこの二人以外にも捜せばいますが、太陽と月の魔力を持つ者は貴方方二人しかいませんから、必ず姿を見せて仕掛けてくるでしょう。」 気を抜けば、殺される状況にいるのだ。灯露はもっとしっかりして、足を引っ張るようなことはしないようにと思った。 「さてと、私達はこれで一度家に帰るよ。留守に侵入者を許すわけにはいかないからね。」 鏡衣智は立ち上がった。それが合図かのように、黙って側の壁にもたれかかっていた邦陣が壁から離れて鏡衣智の元まできた。達烏も立ち上がった。 「あ、そうそう。」 校長室の扉に手をかけて開けるだけ開けた鏡衣智が六人と校長の方に首だけ向き、思い出したかのように言った。 「今、気配が一瞬だけした。奴等の。だから、気をつけるんだ。いいね?」 達烏と邦陣もその気配には気づいていたようだ。 鏡衣智達が去って行った後、校長の大きなため息が聞こえた。 「まったく、これだけのうちの生徒を巻き込みよって・・・。」 校長は良い人のようだ。五十年前の経験からか、今度は誰も巻き込まれないことを願っていたそうだ。しかし、それはことごとく無駄に終わった。もうすでに、この六人は巻き込まれていたのだから。 「とにかく、危ない事は止めておいてくれ。こちらの気が持たん。」 五十年前、そうとう大変なことが起こったと言う事が、この校長の表情からわかった。 その後、六人は教室に戻り、五限目の授業開始のチャイムが鳴ったので、大人しく授業を受ける事にした。 もう二度と、このように平和な時間を過ごす事も、授業を受ける事もなくなるかもしれなかったからだ。だから、六人共、今は今を楽しんでいようと、思ったのだ。 だが、神様はいたずら好きだ。 五限目を最期まで受ける事は出来なかった。 +++ あとがき +++ 久しぶりに書いた。なので、少しこの先の展開と設定を忘れてしまって、新しく考えなおしました。 でも、あまり変わらないけど、少し設定が増えたかも。 はぁ、いったい何処まで続いて何処で終わるのやら。いちよう、これは第二幕の一章なので、まだ第三幕を予定しているのでまだまだだろうと思われますが・・・。 この第二幕はいったい何章まで行く事やら・・・。出来れば、第一幕よりは長くなる予定ですが、十三から五ぐらいには終われるといいなぁ。無理かな? とにかく、頑張って続けていくので、これからも見捨てずによろしくお願いします。(ぺこ 戻 進 |