| ぬいぐるみと店員 とあるゲームセンターにて、一人の少女がひたすら一つのクレーンゲームの前から動かず、必死にとろうとしていた。 何度も何度も、失敗してはお金を入れなおして、そんな少女の姿に周囲の人達も見ては通り過ぎていく。 「何でとれないわけっ?!」 少女の周囲で人が一度は立ち止まる原因は、こうしてかなり騒ぐからである。 それでも、諦めることなく必死にやる姿に、人によっては微笑ましく、人によっては何あれと呆れたりされながら、だが少女は周囲を一切壁があるかのように気にすることなくチャレンジしていた。 そして、とうとう少女は目当てのものをゲットしたようだ。何故か集まったギャラリーが拍手を送る。 少女は戦利品を頭上高く持ち上げ、それはもう満面の笑顔で喜んで今度こそそこから去っていった。 そしてここ、少女の家。 「あのな・・・頼むからバイト先で騒ぐのやめてくれ。」 「いいじゃん。別に迷惑かけてないだろ。」 「あと、その格好もな。」 「何でだよ。母さんが選んだんだぞ。」 むっと剥れる少女もとい、少年と、何か疲れ果てている兄である男。 実は、母親のせいで時折女性のような服装を着る少年は、元々見た目が可愛いこともあり、まったく違和感がなく女として見られてしまうのだった。 そして、兄と称したが、実際は兄ではなく見た目これだけ格好いいのだが、女で姉だというあべこべ姉弟だった。 バイト先の従業員からは、ある意味有名になってしまっている二人。 「それに、姉貴が欲しかったんだろ、これ。」 確かにいった。これは彼女が好きなキャラクターのぬいぐるみで、いつも新しいのが出るたびにバイト後に客として混じって手に入れている。 かなり男っぽいが、こういったぬいぐるみ好きな女の子なのだ。そして、弟は見た目女の子っぽいがかなり男前な性格をしている。 だが、こういうことにかんしては不器用らしく、下手なのだ。彼女は自分で欲しいものを手に入れようとゲームで景品をゲットする彼女だが、先日誕生日ならあれがいいと別にいいっていってるのにしつこく言う弟に無理だとわかっていて指差したのが今回のこれ。 その結果、ずっと居座ってとれるまでやっていたのだ。つい数時間前まで。 「だって、姉貴にプレゼント、したかったし。」 「気持ちだけでいいっていっただろ。」 だからこそ、粘って何が欲しいのか聞いて、その上で答えてくれたそれを手に入れようと頑張ったのだ。 それに、これをずっと集めてることもしっていたから、何を持っていないのかは自分にはわからない。だからこそ、聞いたのだ。 そして、あれならまだ持っていないのだとわかって絶対にプレゼントすると決めたのだ。 「ダメ。俺は結が好きだって言ってるだろ。」 「・・・私は弟としか見れないっていつもいってる。」 「だから、弟として今は一緒にいるんだろ。だけど、弟だったとしても、好きな相手に贈り物するぐらいいいじゃねーか。」 再婚同士の連れ子だったが、仲良く毎日が楽しい。けれど、弟でいつまでもいられない自分がいることにも気付いた。 弟だとしか見てくれないこともわかっていた。 それでも諦められない。だけど、相手のことも考えずに行動することはできない。本当に好きだから。 「本当に、気持ちだけでうれしいんだってば。あの二人、忙しいから家にいないから。誰かがいるってことが、私にはうれしい。だから・・・でも、これはありがとう。うれしい。」 「どういたしまして。」 +++++++++ 赤と蒼と紅 「なぁ、あれって・・・」 「話しかけるな。」 「でもさ・・・あのままにしとくのもあれだと思うんだが。」 「・・・。」 今、二人の青年が振り向きたくないけれど、振り向いてそこにいるであろう人物をどうにかしなければいけないということで頭を悩ませていた。 本来なら他人であるし他人のふりをしていてもいいのだが、あれを少なからず何であるのかは知っている為、そのままそこに放置していくことが戸惑われるのだ。 とくに、炎のような真っ赤な髪をした元気な子どものように感情がころころ変わる青年にとっては。 一緒にいる澄んだ空のような青い髪をした無表情で眼鏡をかけた青年にとっては、この赤い髪の青年すらも一緒にいるのが面倒だと思っているようにも見えるが。 「仕方ない。・・・何してるんですか。・・・カミサマ。」 「あ、やっと気付いてくれた?」 振り返り、七色の色に輝く派手なマントを被った男が嬉しそうにしていた。二人が『気付いて』くれるまで、そこでなにやら不思議な踊りをしていたのだ。 何でも、本人曰く相手に気付いてもらう為の何らかのお呪いらしいが、恥ずかしいのでやめてほしいというのがこの二人の言い分だ。もちろん、聞いてくれないけれど。 「あと、私たちに用があるときはその趣味の悪いマント羽織ってこないで下さい。」 「えー。いいじゃん。これ結構気に入ってるんだぞ。」 だって、これは自分の側にいる奴等と同じ色の名前が全部入ってるのだから。 それはわかるが、青年はその派手なマントが嫌いだ。けれど、一緒にいるもう一人は色は綺麗だよねと着る気はないけど暢気にそんなことを言うぐらいなので、近くにいることは問題なさそうだ。 「それで、何の御用ですか。」 「あのね、あのね。朱鷲(シュジュ)ちゃんと灯影(ヒエイ)ちゃんにお願いがあるんだ〜。」 にぱっといい大人が子どものように満面の笑みで近寄ってそんなことを抜かした。 もしこれがこの世界で一番偉いカミサマで自分達がそのカミサマに仕える、それも身の回りの世話及び代行権限を持つ秘書的な立場でなければ、無視していただろう。 もしくは、黙れと言って一発おみまいしてから立ち去っていた。 とくに灯影なら間違いなくそうしていた。 けれど、悲しいかな、灯影はこのバカの子守が仕事なのだ。 「今日はこれが食べてみたいんだ。」 そう言って、かつて灯影が地道に作ったレシピブックを見せた。 また勝手に部屋に入って持ち出して・・・と、怒りを覚えるが、日常のように毎回やられるので、これだけではすぐに怒らなくなった。 少しは成長したと思う。 「久しぶりに、コレ、食べたい。」 だって、これは初めて会った時にはじめてくれたものでしょう? と、彼が言うから、あんな昔のことを覚えていられたことの気恥ずかしさや驚き、そして仕方ないと思ってしまうほど付き合いが長くなっている自分。 「あ、ボクも食べたい。けど、こっちがいいな。」 それまで黙っていた朱鷲が口を挟む。どうせ作るのだから別にいいかと、今日だけは、今日だけはわがままにつきあってやろうと灯影は思った。 灯影にとって、あの日は大切な思い出であり、それを覚えていてくれたことがうれしかったのも事実だからだ。 それに、あまり厳しくしすぎて脱走されても困る。探すのは自分達なのだから。 「わかりました。適当に他も見繕って作ります。よって、今すぐ戻って仕事して下さい。わかりましたね、カミサマ。」 「む。こういう時は名前だぞ。」 友のくせに駄目なヤツだなとそいつはいう。けれど、簡単に呼べるはずがない。 「そのうち、ならね。では、私も仕事がありますから。朱鷲もでしょう。」 「あ、そうだ。遅れたらアイツうるさいんだよね。」 「では、失礼します。」 二人はカミサマに背を向けて歩いていった。その後姿を見送り、少しだけカミサマは寂しそうにしたが、すぐに笑顔が戻る。 「また、すぐに会える。」 だって、夕食の約束をしたから。 ++++++++++ サンタはくるのかこないのか 眠らずに、何度も枕元の靴下と窓の外を見ていた。 サンタがやってくるのを、布団の中でわくわくしながら待っていたあの頃のように。 ボクは約束の日に約束の場所へと急いでいた。 ボクはずっとずっとサンタに願いを書いて夜を待っていた。 途中で寝てしまって、結局サンタには会えないけれど、いつも手紙の返事をくれて嬉しかった。 その時、ボクはサンタと約束をしたのだ。 ボクが『ボク』として十年後も生きていることができたのなら、『もう一度』会おう、と。 嬉しかった。ボクはサンタが誰なのかを知っていた。だから、彼に会えることが嬉しかった。 彼もまたボクに会ってくれるということが嬉しかった。 だからボクは約束の十年後のこの夜に、約束した、彼との思い出の場所へと走っていた。 ボクはずっと一人で、ボクはボクであることが許されなかった。 それでもボクはボクとして生きようとした。ボクはボクだから。 たとえ誰がボクをボクでないとしても、ボクはボクとして生きると決めた。 ボクをボクとしてみてくれた彼との思い出が、ボクをボクでいられるようにしてくれた。 けれど、彼とボクは一緒にいることはできなかった。唯一一年に一度だけ会えた。 いつも、サンタを待つ夜、ボクは彼を待っていた。 だけどもう待つこともなくなる。彼が待っている。ボクは会いに行く。 やっと、彼に会える。 約束の場所でボクは待つ。彼がくるのをボクは待つ。だけど、一向に彼は姿を見せない。 どうしてだろう。彼は約束を破るはずがない。 それでもボクは待った。待って待って、体が冷たくなっていっても、ボクは彼が来るのを待った。 静かに雪が降り始めた。彼とボクが出会った日も、雪が降っていた。 きっと、きっと彼は来る。あの日と同じだから、きっと会える。 ボクはだんだん眠くなる意識を必死に起こして、じっと彼を待っていた。 すると、足音が聞こえてきた。ほら、やっぱり彼は来た。 「会いたかった。やっと、会えた。・・・・・・・・・はボクに会いたかった?」 だんだんと掠れた声。 ボクの目が閉じて、意識も遠くなっていく。 だけど、大丈夫。いつもサンタを待っていたあの夜のように、朝目が覚めたら誰もいないなんてことはないから。 目を覚ましたら、きっと彼がいてくれるはずだから。 ボクは静かに眠りについた。 完全に動きが止まったそれに目をやり、近づいて抱きしめた。 「冷たい。・・・まったく、君はバカだよ。大バカ者だ。」 零れ落ちる雫が、それの頬を伝って旨の上に落ちる。 「私は、そんなバカなところが好きで、嫌いだよ。」 いつもは暖かいふさふさの毛がところどころ乱れ、冷たい。息もすでにない。 「帰るよ。・・・そして、こんなバカな戦いとっとと終わらせる。」 背後に控えていた人影が応え、薄い毛布を差し出した。 命が尽きた哀れな愚か者にかぶせ、抱き上げた。 「私は、お前に会えなくなることよりこの世からいなくなってしまうことの方が、嫌だったのに。」 どうして、先に逝ってしまうのだろう。問いかけても、もう応えはない。 補足 ボク・・・呪いで獣に姿になった人 私・・・一国の主 敵国が一般人を呪いによって強化した兵の軍団作ろうとしてボクも被害に会う ボクと私は幼馴染だが、身分差から、一時期会えない間に敵国に軍事力拡大の為に一般人浚われた中にいた |