ひらひらと舞い散る白い雪



去年はこうじゃなかった



雪も自分も、そして彼女も








   白い蝶







12月24日、クリスマスイヴ

数年ぶりのホワイトクリスマスとなった日

僕は彼女と出会った





一目で僕は彼女を好きになって、どうやって思いを伝えようかと考えている間に年は明け、一年が過ぎ、再びクリスマスがやってきた。

そして、今年は年越しを一緒に過ごし、2月14日に彼女からチョコレートを貰った。

それだけで、僕はうれしかった。

いつの間にか、彼女も僕の事が好きだったらしい。

僕は、返事をヴァレンタインに合わせてホワイトデイにしようと思った。

贈り物を贈るから、始めてであった場所で会おうと約束した。

交わされる事のない約束を、僕は彼女とした。

その日は3月にもかかわらず雪が降った。

天気予報士もこれは可笑しな事だと言っていたのをニュースで見た。

僕は急いで彼女と約束した場所へ行った。

だが、僕は彼女と会う事はなかった。

何時間待っても、次の日にもう一度来てみても、彼女の姿はなかった。

僕はわかった。

彼女はもういないと。

僕は彼女に置いていかれたのだと。

傍ではひらひらと蝶が舞い踊る。

彼女の服と同じ、白い色の羽をひらひらと動かして僕の傍を飛ぶ蝶。

「戻っちゃったんだね…。」

夢が終わりを告げたのだ。

初めからわかっていたはずだ。彼女は既に存在しないのだと。

彼女は去年のホワイトディに亡くなった事を。

今まで信じられずに、幻影を追いかけていたのだ。

僕は彼女が亡くなった日。天使を見たんだ。

そして、天使が僕に与えたのは白い羽を広げる蝶だった。

期限はちょうど一年後の今日。

お互いが思いを言い合えたら何かが変わる。だけど、すれ違ったらそのままだと。

その意味がよくわかった気がした。

僕は彼女とすれ違ってしまったのだ。だから、会えなくなったのだ。

幻影でも夢でも、暖かい彼女との少しの思い出で癒されたが、失う事はとても辛い。

「…もう、僕は…。」

伝える事は出来ない。その言葉に続く言葉さえ、口から出ない。

僕は、彼女に何一つ伝えられなかった。返事さえ。

僕は家に帰った。電気もつけずに暗いまま、部屋にいって布団の中にもぐった。

忘れたい。そう思った。でも、忘れたくないとも思った。

大切にしたい時間で思い出なのだから。








そして、その日。

僕は夢を見た。彼女の夢。

ホワイトディの前日から見なくなって数日。でも、僕はしっかりと覚えている。

彼女に間違いないと。

彼女は寂しそうで今にも眼から涙を零しそうな危うい表情で僕を見た。

僕は笑ってほしいと思ったが、彼女は首を振るだけ。

そして、さようならと一言言う。

それに、僕は黙っているわけにはいかない。

行かせないと、僕は彼女の腕をつかんだ。

何も伝えられないまま、行き場をなくした言葉をそのままにするわけにもいかないし、悲しそうな彼女を放っておく事もできない。

「一つだけ、聞いてほしい事がある。」

真剣な僕の顔を見て、彼女は少し首をかしげながら聞いてくれるようだった。

「僕は君が好きだ。はじめて会ったあの日からずっと。君と別れる事になったあの日、僕は心をどこかに置き忘れたような感じで、君がいないと駄目なんだと思った。」

僕は必死に彼女に訴える。言葉にはしないけど、行かないでと。

「僕はあの日、伝えようと思った。でも、君は姿を見せなかった。どうしてなんだい。あの日までは、君は僕に会えたはずなんだろ?」

「…。」

「僕は、君が好きなんだ。お願いだから、そんな悲しそうな顔をしないでほしい。僕まで悲しくなるよ。」

とうとう零れ落ちる涙をすくい上げる僕。

彼女が何かを言おうとしているが、僕には聞き取れない。

そして、彼女は僕から離れて、また何かを言う。

だが、僕にはその声は届かないのか、聞き取れない。

彼女は僕ににっこりと微笑んで、光に包まれて消えてしまった。

「…で、行かないで!おいて行かないでっ!」

はじめて出たその言葉は、彼女には届かない。

すでに、消えた後だったから。

そして、僕の目からも涙が零れ落ちた。これで本当にお別れなんだと思ったら、止まらなくなった。

そこでうずくまって泣いている僕。

夢であっても、現実ではないかというぐらいはっきりとわかるこの世界。

そんな僕に、かすかに声が聞こえてきた。

でも、聞き取ろうとはしなかった。僕の心は、涙を流して壁を作って全てを遮断しようとしていたから。

それでも、声はだんだんとはっきりと僕の耳に届く。

懐かしいような、そして暖かいような声。

その声に聞き覚えがある。

ふと、僕は顔を上げて声のする方を見た。

そこには、あの時見たものと同じ、白い蝶がひらひら飛んでいた。

もしかしたら、また会えるかもしれない。

僕は立ち上がって、蝶を追いかけた。

蝶はただ、どこかに導くかのようにひらひらと飛ぶ。

そして、僕は彼女と同じように光に包まれた。











ゆっくりと開ける瞼。

長い夢を見ていたなと思いながら、ぼやける視界がだんだんと鮮明になっていくのを他人事のように見る。

そして、視界がはっきりと見えてきた時、自分の名前を呼ぶ声と、何度も追いかけた大切な人の泣き顔が見えた。

「…あれ…?…は…くら…ん…?」

「そうよ、馬鹿!もう、心配したんだから!」

馬鹿馬鹿と何度も言って、僕の胸の上を叩いて泣き叫ぶ人。

先ほど自分が追いかけた愛しい人。

僕は何がなんだかよくわからなかった。だけど、目の前に彼女がいる、その事実だけで今は何もいらないから、彼女に腕を伸ばして泣く彼女をあやした。

そうして、何時間もずっと、そうしていた。





それから僕は、彼女から簡単に説明を聞いて、驚いた。

自分はあの日、返事を返した後に彼女とそのままでかけた。

そこで、事故にあったのだ。彼女が子供を助けようとして変わりに二人を庇って。

なんとも間抜けだ。

自分はずっと意識不明の状態で、彼女を残したままでいたなんて。

僕はずっとその出来事で彼女をなくしたのではないかと殻に篭っていたのだ。

まったくもって、情けない。

しかも、天使が出てきて彼女と一年の猶予って何よ?

彼女に言ったら、よけいに心配させて困らせてしまうから黙っておくけれど。

でも、それだけ僕にとって彼女は大切な存在で、彼女にとっても僕が大切な存在だと思い知ったのだから、まぁいいかもしれない。

きっと、この先はなれる事はないだろうなと思う。

今、強い絆で結ばれたと思うから。

あの天使が、それを伝えてくれるかのように、病室の窓から白い蝶がひらひら飛んでいるのを見た。








今日は晴れていた。

4月1日。エイプリルフール

彼女が心配した僕が死ぬ事。それは嘘。

僕が心に篭ったほど愛する彼女が死んだという事。それは嘘。

あの夢も、彼女が抱えた現実も、全部嘘。

嘘。全部嘘。たとえの世界だけで通じる、現実では嘘の物語。







僕はその後病室にやって来た友人に散々言われ、両親や彼女の両親からも心配の言葉と文句を言われた。

でも、それは僕の日常だから。

戻れなかったら、二度とないこの光景。

大切にしたいと思う。








蒼い空が広がる中、ひらひらと白い蝶が蒼に負けることなく映えて綺麗だった。





美しく飛ぶ蝶。

彼女と同じ白い服を連想させる蝶。

彼女を迎えに来させはしないよ。絶対に。

そして、僕もついて行かないよ。





僕の帰る場所はここだけだから。







       あとがき

 珍しく、連載物ではなく、単品の読みきりを更新。
 いつもなら、連載のどれかの番外編を書くのだが…。
 ホワイトデイという事で、それを題材にしたものを書くのはあれでは難しく…。
 しかし、なんともまぁ、お決まりな展開でわけのわからん文章でしょう。
 はじめに考えていたものと、かなり違ってきているし…。うーん、何処で間違ったのでしょう?
 でも、連載物ばかりの更新だったので、たまには単品もいいかもと思い、今回なのですが。
 如何なものでしょうか?かなりどきどきものですよ。
 しかも、ホワイトディなのに、最後がエイプリルフールってどうよ?
 何かがやっぱり間違っている…。
 とにかく、記念日を集めたらという事で逃げようかな…(苦笑



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