第二章 昔話を語る

 


 


 今晩の間に移動するのにどうしようかと思ったから、よかったよと、笑顔で言う。

「えっと、名前を、聞いてもいい?」

「そう言えば、まだだったね。・・・そうね、この世界から言えば、私の名前はミイネかな?」

「ミイネだね。私はローラ。改めてよろしくね。」

 こちらこそと、二人は握手を交わす。そこでふと、ミイネと名乗った女が口走る。

 いろんな意味で、今日一番これに驚いたかもしれない。

「実はさ、たぶん誤解していると思うから言っておきたいんだけど。」

「何?誤解??」

 まったく意味がわかりませんと、首をかしげているローラに苦笑する。まぁ、かつて自分と一緒にいた彼等もまた、長年一緒にいたからこそわかっているが、もし初対面だったら間違えるだろう。

「実はさ、私は男なんだ。」

「へぇ、そうなんだ・・・えっ?ちょっと、それって?!」

 のんきにミイネのお茶のおかわりを入れていたローラだったが、ポットを落としそうになった。

「え、男って、本当に?」

名前からしても、どう見ても女である。だが、相手は女ではなく男だと言う。

「一応ね・・・。ローラは女の子でしょ?」

 言わないままでいたかったが、そのままもまずいでしょと言われ、別に気にしないが、それはそれで驚きだった。

 いつも、間違われるのだと言うミイネ。本当は、ミイネという名前ではないらしいが、この世界の名前で合わせればミイネでいいのだと言う。本当の名前はまだ、教えてもらっていないが・・・。

 そこまで聞くのは駄目なのかもと思いつつも、少しミイネに興味をおぼえ、知りたいと思うようになった。

 だが、本当に男なのかと疑いたくなるほど、ローラより美人であった。少し、それが癪な気もするが・・・。

「そう言えば、この世界でって言ったよね?もしかして、本当に異邦人というか、それどころか異界人って言う奴?」

 的確な指摘に、苦笑するミイネ。

「確かに、そう言うかもしれないわね。私は、この世界で言う異邦人と同じような扱いだろうし。」

 人とは違うもの。異邦人と同じような扱いに入る人。

 この世界では異邦人はかなり嫌われている。まぁ、異邦人達にとっては、この世界の王や人間が嫌いなのだろうけれど。

「ミイネも、人が嫌い?」

ちょっとした疑問。もしかしたらそうなのかなと思ってしまったから、聞いてみたくなったのだ。

「そんな事はないよ。私のいた世界では、対立なんてものはなかったからね。」

 その世界の事が、知りたくなった。

 顔に出ていたのか、聞きたいかと問いかけてくるミイネに、素直にうなずいていた。すると、ミイネはいいよと答え、話し始めた。

 まるで、独り言を話しているかのように。

 


 



 神が自ら創られた命。それは四つあり、その四つは、強い絆で結ばれ、先生と呼ぶ人に育てられて来た。

 それなりに、幸せだった。自分達以外の者がどこでどうしているかなんて、知る事はなかったけれど、自分達だけがいるだけで、それで何も問題は起こらなかった。

 そんなある日、先生の妹で、自分達も懐いていた人が、反逆を起こした。主に背き、牙を向いた。

 最初は逃げた。だけど、簡単に追いつかれた。そして、嫌だけど、戦うしかないのかもしれないと思った。彼女の性格を良く知っていたからだ。

 一度、こうだと決めれば、それを変えない人物だったから。それは、先生と同じで、自分達四人とも同じ。だからこそ、余計に話し合いで解決は無理なんだと思えた。

 そして、彼女は魔法を使い、先生の時間を止めた。そして、自分達をばらばらの場所へと飛ばした。

 その後の事はわからない。ただ、自分が今まで知らない場所で倒れていたということだけが、わかる事実。

 


 



 長いけれど、簡潔に話を聞いて、ローラは夢幻のような物語を聞いている気がした。

「じゃぁ、今旅をしているのは・・・?」

「三人を探すためだよ。」

自分達は、どこにいても、場所がわかるはずだから。それ程の強い絆で結ばれているから。

「生憎、この土地には三人の気配はないから、いないみたいだけどね。」

 だから、別に出て行っても問題はなかったのだと言う。だが、もう少しゆっくりしたかったという事もあるみたいだった。

 まだ、ミイネは信じられていないのだった。先生と呼ぶ人があの後どうなったのかはわからないが、一番問題なのは、自分達の敵になってしまった妹の存在だ。

 いくら、あの時は敵に回り、どうしても話し合う事など出来ないとわかっていても、今までを知りすぎているからこそ、安易な考えでそんな事をするはずがないのだとわかるから。

「大変、なんだね。それと比べると、私なんて、まだまだなのかも。」

 そう言えば、ローラはどうなのと、反対に問いかけられた。

 ローラは、少し苦笑しながら、そうだねと言いつつ、彼の事を交えて話をし始めた。

 かつていた、自分の両親はこの荒れた世界の犠牲となり、すでにいない事。そして、大切な人がいたが、その彼は今、この荒れた世界のせいで、感情を失ってしまった事。

 ミイネなら、話をしっかりと聞いてくれるだろうし、他の人のように、ぐちゃぐちゃとうれしくない事を言ってくる事もないと思うから、話せた。

「どうしても、取り戻したいの。彼、本当に綺麗に笑って、人の為に涙を流せる人だったから。」

 ローラの言葉に、ミイネも何か思い出す事があるのか、取り戻したいねと言う。

 きっと、先ほど話してくれた三人かその先生、もしくは妹の誰かが似ているのだろう。喜怒哀楽がはっきりしていたり、綺麗な笑顔だったり、人の為に涙を流す人。

 もしかしたら、ミイネはその中で本当に好きな人がいたのかもしれない。そして、その人こそ、笑顔と涙の人。

「はやく、会えるといいね。探している三人と。」

「ありがとう。ローラも、その彼がはやく笑顔を取り戻せるといいね。」

 うんと、うなずき、今日はもう寝る事にした。

 明日のため、毎日休息をとる必要があるし、これ以上話をすれば、自分は涙を堪え切れないから。もう、涙は見せないと決めたのに、その決意が揺らいでしまいそうだから。

 ミイネは、自分には天使のようで、それがまた、辛いのかもしれない。