プロローグ

 


 

貴方はだあれ?

どうして、泣いているの?

 


ねぇ、どうして・・・

どうしてそんなに、貴方は悲しいの?

 


 


目の前に見える相手に問いかけても、相手はその透明な壁のある場所から動く事はない

 


 


とても、悲しそうに見えるのに

だから、泣いているように見えるのに

手を差し出して、その理由を聞こうと思うのに

壁が立ちはだかって、貴方に手が届く事は無い

 


私じゃ、貴方の悲しみを癒してあげられないのかな?

 


 


でも、どうして私の夢に、貴方が出てくるの

そして、何が言いたいの?

 


 


 その問いかけに、貴方が答えてくれる事は無い

 それでも、私はいつも問いかける

 いつも、悲しそうにしているから

 きっと、重なるのだと思う

 



 彼と・・・

 



 



 世界は一人の王が上に立ち、支配する王権政治で、今までそれは崩れることなく続いてきた。

 そんな世界だが、少しずつ均衡が崩れ始め、崩壊の路へと進もうとしている。

 理由は簡単。今まで人の支配の中で追い詰められてきた、人でありながら人ではない者達、異邦人と呼ばれる者達が各地で反乱を起こしたからだ。

 世界は、人を一番優秀で偉いものだと考え、人意外のものは下とみなして迫害をしてきた。そのつけが今、払わされる時なのかもしれない。

 王はすでに、数名の側近とともに姿を消し、ますます街人達と異邦人との争いが増えた。

 その為か、世界の自然と呼ばれる均衡が崩れ始め、多くの命に襲い掛かり、命を奪うようにもなった。

 自然の摂理の中で生きている事を忘れつつあった人には、それは恐ろしい物だと再認識された時であり、気付くのがすでに遅かったという時であった。

 こうして、世界は荒れ果て、多くの者達との争いが絶えず、そして、命が奪われていった。

 そんな中、一つの噂を耳にした。誰もが、その噂を信じて時を過ごす様になるのだが、その噂とは希望を持たせるものだった。

 どこにでもあるような、救世主が近いうちにこの地に現れるというもの。だが、誰もがそれにすがり、信じた。

 もう、そうするしか、生きる術を知らないかのようで、祈り続けた。

 その噂を聞いた一人の少女もまた、同じように祈った。もしかしたら、その噂の救世主がさえ現れれば、この争いや自然の怒りで感情を失ってしまった幼なじみの少年が元に戻るのではないかと。

 だが、いつまで経っても救世主も現れず、そして少年に感情が戻る事もなかった。