誰もが皆、誰かに必要とされて、祝福されてこの世に現れる

誰一人として、犠牲になるべきものはいない

だけど、この子達は皆、犠牲になるべき運命を背負わされて生まれてしまった

守りたくても変えられない運命

でも、少しでも希望があるのなら、望み続ける

この子達に少しでも幸せが訪れるようにと

ただ、犠牲となるだけのためにここにいて、私と出会ったわけではないのだと

思っていてほしい

 

 


>生贄に選ぶ子供

 


 

朱音が四人の赤子を育てて数年が経った。

天使は数年までは人の子供と同じように育つ。

この子供達はやはり特別なのか、人よりはやく育った。

そして、運動能力も力の能力も知恵もすごいものだった。

だから、その数年は毎日が驚かされっぱなしだったのだ。

 


「魅音〜!!」

「うるさい。」

どこかで教育を間違ったのだろうかと、いつも悩んでしまう光景がそこにあった。

魅音は何故か他人の前ではいい子にして、いい子を演じる。だが、同じものを持つ三人には遠慮はしない。それも、一人を除いては優しいが、除かれた一人に対してはかなり言い方も冷たかった。

「なんなんだよ、お前は〜!」

今日も仲良くけんかを始める二人。

どうしてこう、口が悪くなってしまったのだろうか。後の二人は大人しくてここまで口が悪くないというのに…。

「もう、駄目だよ。ねぇ、紫音。」

「そうですよ。どちらも悪い悪くないという問題じゃないでしょ?」

いろんな意味で、保護者になれるぞと拍手を送ってしまう。

この四人はもともと同じものでありながら、どうしてかまったく違う個性というものを持って育ってしまった。

それが良いのか悪いのかは自分にはわからないのだが。

だが、他の子供達と同じように元気にすくすくと育ち、幸せ一杯な彼等が見られるのなら、別にいいのかもしれない。

 

あと数百年後、彼等は皆、幸せを奪われる。生まれた意味を知る。

もちろん、教えるのは自分の仕事。そして、最後のこの子達の親としての責任。

恨まれる事は覚悟している。

それだけの事をしているのだから、当然だと、受け止めているだろう。

そんな時、ふと紫音がこちらを見た。

じいっとこちらの様子を伺うように見ている。

本当に、賢くて他人の思いを感じ取るのが上手い子だと思う。

だからきっと、この子が神の補佐として自由を失い束縛されると思う。

にっこりと微笑みながらどうしたのと問いかければ、なんでもないと、にっこり微笑み返してくれた紫音。

自由を失っても、その笑顔を忘れないでほしいと思う。

まだ、わからない未来であっても、きっと変えられないと思うから。

そして、もう一つ気になるのが、一番純粋で人を疑う事を知らない、そして他人が傷つく事を嫌う異音。

きっと、唯一女の彼女が生贄と選ばれるだろう。

純粋な白い心を持つ者の方が、長くバランスを保たれるからだ。

そして、あとの二人は紫音と異音にそれぞれ力を吸収されて何も残らないだろう。

いけないと思いつつも、そんな暗い未来を考えてしまう。

「どうしたら、いいのでしょうか。」

このまま隠し通す自身もないし、この子達は賢いから気付くはず。

それでもそれを受け止めて、無理に笑顔を作って心配ないというだろう。

結局、幸せを願う自分が、彼等の幸せを奪っているのだ。

 

今日の勉強時間が過ぎた後、灯音は庭でいつものようにお茶とお菓子を頂いて、仲良く話をする時間をとった。

はじめたのは彼等がしっかりと意思を持ち始めてからだ。

まぁ、これも一つの勉強というものだ。神界ではよくあることだから。

それに、異音と紫音は料理の勉強にもなるからちょうどいいのだ。

自由を失ったり、跡形もなく消えたり、そして、生贄として選ばれるには勿体ないいい子達。

「灯音先生。今日はね、ジャムも作ったから、パンも作ってみたの!」

食べてと、お皿に乗せて渡してくれる。

「ありがとう。」

優しい子供達。いつか、何もかも失い、幸せさえない子供達。

涙がでそうだったが、それはこらえた。

自分は泣くに値しない酷い天使だから。

たとえ神が命令し、許していたとしても、自分には耐えられないほどの罪を犯しているのと同じだから。

そう、堕天した悪魔となった天使と同じ。

いっその事、自分が生贄と選ばれたらいいのにと、何度も思った。

しかし、きっと変わることはないのだろう。それが運命というものだろうから。

 


今日も、平和な一日は過ぎていく。

そして、一刻一刻と近づいて行く。

この、幸せの終わりが…。