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きっと、過酷な運命をたどる事となる。 だけど、彼等には強い絆があるから、他の誰にも割り込めないような信頼があるから。 離れる事を知らない程のものだから。 黙っている事を許して欲しい。いえない事を許して欲しい。 だから今は、精一杯の幸せを教えて育てようと思う。 今はまだ、知らなくていいから。 できれば、彼等には幸せでいてほしいと願うから…。
四人の子供達
その日、私と妹は神に呼び出された。 「朱音、灯音、只今参りました。」 神の玉座の扉を管理する者に言い、中へと入った二人。 自分達をここまで育て、多くの物を与えてくださり、全ての生物の命と未来を握っている、唯一信じられる神に頭を下げたまま、呼ばれた要件を聞く。 「近いうちに四つの新たなる命が神世界へとやってきます。」 それは、いつもの事で、なんら変わりの無い事。いつも、神木が光を放つ卵を生み出し、それに天使が歌いかければ答え、新たな天使が生まれるというもの。 天使の他にも、神木の側にある木や別の唄によって姿形が違うものが生まれる事もある。 それで、いったい自分達に何があるのかと、少しわからない二人は続きを待つ。 「その四つは我分身であり、その中の二人は我力の糧となり世界の柱となる者と我を補佐し尽くし続ける者がいます。」 その神の言葉に、二人はすぐに察知した。 どうやら、自分達の代で行われる事になった事を理解したからだ。 「その四つの命の世話、灯音に任せます。何か会った時の補佐として、朱音を連絡係りにします。」 頼みましたよと神に言われ、できれば断りたかったが、二人は『はい』と答えたのだった。
神の分身となる四つの命。 力の糧となり世界の柱となる者と自由を失い補佐として従い続け一生を終える者。 あとの二人も間違いなく二つの命に力を吸い込まれ、四つが二つとなるのだろう。 二人は神の玉座から出て、自室へと向かう中、黙ったまま考えていた。 まさか、千年に一度の何も跡形が残らずに命を終える、世界のバランスを保つ為の生贄の柱となる者と、一生を自由に過ごせず神にのみ誓いを立て、全て神の意思のままに過ごす事を義務ずけられた、束縛される者の二人と余る二人の命の世話をする事。 つまり、四人のうち一人は生贄となって死に、一人は自由を失って束縛され、残りの二人は引き寄せられる二人に飲み込まれるというもの。 それを分かっていながら、世話をするようにと、神は頼んだのだ。 その事を、聞かずともわかってしまった二人にはとてもつらい事。きっと、神も二人の心情を知りながらも、知らないふりをして頼んだのだろう。 天使はいつでも優しく純粋で無垢な心を持っているから、すぐに傷つく事はわかっているから。 それでも、そうせざる得ない。 もうすぐ起こってしまう。地上の厄災が。そして、自分の右腕として補佐をする者もまた、その厄災で失う事もわかっていた。 だから、補佐が必要なのだ。 あの者は、地上へ行けば二度と戻ってくる事はないだろうから。 そして、もしかしたら変わるかもしれないから。 世界のために生まれる生贄としての価値を持ち、それ以外では扱われない者が、変わるかもしれないから。 今回の未来だけは、神自身でも読めない。 だから、かけたかったのかもしれない。 今まで繰り返されてきた事が覆されるかもしれない。 それに、少しすがりたかったのかもしれない。 だからこそ、起こった別の悲劇もあったのだが…。 神はそろそろ引退の時期かもしれないと、考えていた。
そしてとうとう、その時がやってきた。 灯音は神から言われたとおり、神界から隔離されたように、結界で守られた場所にこっそりと立つ神殿へ四つの塊を抱えて向かった。 その四つこそ、神の分身であり、悲劇の始まりでもある四人の子供。 灯音は何かあればすぐに連絡ちょうだいよとだけ言い、普段の仕事へと戻っていった。 灯音と五人だけの神殿。他には何も無いさみしいところ。 灯音の心情を察してか、一人の子供が真ん丸の目を輝かせるようにして開き、相手を見ながら手を延ばしてきた。他の子供は眠っていたが、この子供だけは何か察したようだ。 「そうだね。負けていたら駄目だよね。今は、私が貴方達の子供なのだから。」 一瞬、紫の光がさしたのか、その子供の目の色が紫色に輝いた。 「…頼りないけど、これからよろしくね。愛しい我子供達。」
その時すでに、灯音は名前を付けていた。 手を伸ばす子供を抱きかかえた時、何かに反応してか、他の三人もまた目を覚ましたのだ。 その時にふと、名前が浮かんだ。この名前がこの子達の名前なんだと思った。 だから、迷わずその名前を呼んだ。 一番末であると言われていて、他の三人以上に他人の心情に敏感な子供。紫の輝きが何かを訴えるような、子供。 もしかしたら、この子はすでに自分の運命を知っているのかもしれない。そう思った。 「絶対、守って見せるからね。たとえ、どんな事があっても…。」 まだ、決まったわけじゃないから。 「ありがとう。なぐさめてくれるのね…。ありがとう…紫音…。」 零れ落ちる透明の雫。紫音と言われた子供は、少し不安そうな目で見つめながら、手を伸ばし続けた。 大丈夫だからと笑みを作ってあやしてやる。 その後、灯音は忙しく過ごした。 やはり、この子達はまだ何も知らない赤子だから。
どうか、助けて。 あの子達の幸せを願うだけだから。 私はどうなってもいいから。
あの子達の幸せを、笑顔を奪わないで。 今、私の中にある唯一の希望の光なのだから。
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