朝、リュウエンの泊まった客室へ向かうと、すでに起床していて、しかも女王陛下まで居座っていた。

「いないと思っていたら、こちらでしたか。」

想像はできていた。だが、若い、夫のいない女が男の部屋に居座るのもどうかと思う。

「そうそう、ヴィレッド。」

「何でしょうか。」

どうせ、ろくなことを言わない。そう思っていたが、まさかの問いかけに、反応が遅れた。

「今日、剣の手合せ。リュウエンもやるわよ。相手しなさい。」

「はい?」

何を言ってるんだという意味ででた『はい』の疑問形。肯定と受け取った女王は笑顔で朝食を食べに行くと彼を連れて食堂へ向かおうとする。

「あ、ちょっと、女王陛下!」

「後で、集合ね。じゃ。」

「よろしくお願いします。」

そう言って、部屋を出ていった二人。扉には面白いことを聞いたと、笑っているジュリがいつの間にかいた。

「ジュリ!まさか、お前の入知恵か!」

「いや、今回は違うぞ。」

笑っていたが、笑みを抑え、仕事ができたことを伝えてきた。

「まぁ、狙いは王子様が帰る頃だろ。それまでにだいたいはあぶりだしてウーリアとカルテスが片づけるだろう。あとは、こっちだが…。」

「了解した。ミュリーに伝えておいてくれ。水場で俺とアイツで敵う奴はいない。動いたら即知らせてくれ、と。」

「はいはい。あ、そうそう。」

思い出したように、また嫌な笑みを浮かべたジュリ。

「あの王子様、弱くて狙われるだけなのは嫌なんだとさ。」

「何が…。」

「今回みたいなこと、何度もあったんじゃねーか?」

だから、向こうでできない手合せをやりたい。その結果が、食後の剣の手合せなんだろうと彼女は言い、がんばれと肩をたたき、去って行った。

「多少危機感を持ってほしいとは思いましたが…できれば、仕事を見てはいただきたくないんですがね。」

大変な一日になりそうだ。そうため息をつき、食後に来るだろう二人を待つため、稽古場の準備をしに向かった。

 

 

何処からともなく、狙うように撃たれる銃弾。的確に追いかけてくる足音。

何がどうなっているのか、彼等にはわからなかった。

「何なんだよ。」

「まさか、これがこの国の死神…?!」

ならば、やばい。そう判断した二人は国の唯一の出口である橋を目指す。

「やっと追いついた。やはり、年か。」

ごきっと腕を鳴らす、思ったより弱そうな優男が目の前にでてきた。

「お前、誰だ?」

「誰って、そうだな。名乗る必要があるなら名乗るけど?その前に、そっちに先に名乗ってほしいけど。」

どうする?と、笑顔で聞いてくる男に、無視することにした二人は、横を通り過ぎようとした。だが、腕をつかまれ、男の前に戻された。

強い力で戻された為、よろけて転んだ二人の足元に狙ったような銃弾。

「吾輩の友が、ヌシ等が女王陛下の客人に危害を加える企ての一味だと言われてきたのだが、そうなのか?」

よくわからないが、バレているのなら、この男をどうにかしてしまえば逃げられる。優男一人で、銃弾の主はここにいないのなら、二人でやればとそう考えた男達はナイフを取り出す。

「どこの誰だか知らないが、邪魔するならここで死んでもらう!」

そう言って飛びかかる二人。簡単によけ、素手でナイフをつかみ、バキッと二つに折る。

何が起こったのかわからない二人の目の前で、重力に従って落ちる刃の破片。

「あ、そうだ。もう、敵みたいだからヌシ等は名乗らなくていい。だが、吾輩達は立場もあるからな。名乗っておくことにするよ。」

そう言って、どこからか一メートル程の大きな鋏を取り出した。

「吾輩はシャンデリーシャ王国騎士団所属兼庭師のカルテス。狙撃者は同じく騎士団所属兼監視長のウーリア。いずれの時にまた、冥府にてお会いしましょう。」

カチャンと二つの刃となった鋏。振り下ろされれば、男達の意識は消える。

「まずは二つ、ってとこか。…そっちはどうだ?」

『そこから北東。そっちの鼠は一匹だ。』

「鼠退治は大変だな。」

『そう言うな。…ミュリー回収してくれ。私も南東の鼠の始末をしにでかけてくる。』

『わかりました。カルテスはそのまま仕事をお願いします。状況が変わったらまた指示をします。』

「はいはい。」

本人がいなくても、やり取りができることになれはしたが、どうも変な感じがするのはいつものこと。

「やっぱり、吾輩はこういうやり取り苦手だ。」

さっさと仕事を片づけて、庭の手入れの続きをするかと、カルテスは歩き出した。

ちょうどそのころ、その場に転がる骸に誰も気づいかれることなく、消えた。