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あの日の出会いは、必然だったのかもしれない。 そう思う様になったのは、再会してからの不可思議な出来事の数々に遭遇して数年後のこと。 当初は目の前で起こる出来事にいっぱいいっぱいだったのと、失いたくない想いだけでいたから、余裕がなかったのだと思う。 大事な友人と離れることになってから、何度か見るようになった夢が、次第にリアルになっていく。 元々見ていた夢だが、ほとんど曖昧でなんのことかわからずにいた。 けれど、最近になって考えてしまうのだ。 あの日出逢ったことで、高校で再会したのだと思っていたのが、間違いではないか、と。 もっと昔から自分達は「仲間」だったのではないか、と。 今となっては、真実もわからないし、答えてくれる友人は隣にいない。 -sid要 「それにしても、ここに戻ってくることになるとは、思わなかったなぁ。」 再会の場所にして、夢の中での曰くつきの場所。 かつては、桜の精霊の悲しい物語の舞台であり、自分達にとっても意味がある場所。 要はこの学園の教師として戻ってきた。 「芳が事件の少女の秘書になって、夢が占い師になって、京古が意外にも公務員になって…雅美と別れて数年、短いようで長かったな。」 最後の最後まで、何もしてあげられなかった。きっと、一緒にいられてよかったとか言うのだろうけれど、自分達のいるこの場所を守る為に、彼女は当たり前の幸せを全てすててここからいなくなってしまった。 「いつでも帰っておいで。そう言ったんだから、私だって、帰る場所を守ってみせる。」 あの日別れた彼女。帰る場所はもうないと言う彼女の言葉通り、彼女の両親は彼女の存在を忘れていた。自分の両親ですら、一緒にいる四人組という。いつもの五人組の五人目を、誰もが忘れた。 この世界から外れて、人ではないものになるということは、そういうことなのだと実感させられた。 早夜さんのことがあるから、てっきり曖昧にはなっても、ここまで綺麗に存在が消えるとはどこかで思ってなかったのだ。 だから、わかった。早夜さんはとっくに世界から忘れられ、世界と関わる為に改めて人との関係を作って今があるのだと。 なら、また一緒にいて、この世界で隣を歩けるように、この場所を守ることを選んだ。 きっと、他の三人も気持ちは同じで、その為にそれぞれが進路を選んだのだろう。 「それにしても、意外だと思ったのは、あの人が私達同様に雅美を忘れてなかったってことだよね。」 出会いを繋ぐ、始まりの事件。 誘拐されそうになっていた、雅美の友人である唯ちゃん。彼女は両親の経営する会社の一つを継ぎ、芳を秘書として引き連れ、毎日奔走しながら、この町の為に動いている。 最初こそ、何故急に両親が忘れたのかわからず、覚えている芳と再会し、事態をなんとなく理解した彼女の行動はあやかった。私達なんかよりも、行動的であった。 時折でてくる、この町の開発や合併といった話を全て排除し、町らしさを残す為に会社を発展させながらも、環境を壊さずよりよい街への発展への貢献をし始めた。 両親も急にやる気を出した娘に驚いていたようだが、今では彼女にここのことを任せるぐらいの信頼を手に入れている。 「さて、挨拶をしに…あれ?どうしてここにいるの?」 「こんにちは。本日はこの学校への配属おめでとうございます。」 「ありがとう。それで、貴方がここにいるのは何故?」 「実はお話があってまいりました。」 そう言った彼女は、あの旧校舎のことを話し始めた。 今後もこの学校を残すため、何かあってはいけないので改修工事を施すそうだ。その際に、始まりでもある旧校舎を立て直すことや、要が文芸部顧問兼、図書館管理を任すことなど、この学校に関することを説明された。 「本当はそれ、私じゃなくて校長や古株教師に話すことだよね?」 「話てはあります。ですが、私達の本意の為には、やはり貴方にも話しておくべきことだと思いましたから。」 貴女方は、大事な友人の友人であり、何がどうなってわからなくなった自分に真実を教えてくれた恩人でもあるからと彼女は答えた。 「でも、私達だって、結局雅美が選べるはずだった幸せの為の足かせにしかならなかったんだから。」 「だからといって、あの人がその幸せと私達の危険を天秤にかけて、幸せを選ぶような人じゃないでしょう?」 もしそんな人だったら、日々親のことで危ない目にあったり上辺だけの機嫌取りといった、人間不信におちいるような連中ばかりの中で、光のような彼女の手をとりはしなかっただろう。 「あの時だって、あの人も、貴女方も、私を助けようとしてくれた。無関心な他の大人と違って、ね。あの後に、余所へ移ることになって、あの人と会えなくなっても、手紙と言う繋がりがあったから、頑張れた。」 本当なら、同じ場所で同じように遊び、学び、共に過ごしたかった。 それが無理だとわかっていても、こんなことになるのなら、一度だけでも我儘を通せば良かったと時々後悔する。 「私は、一緒にいなかったから、どんな『出来事』があったのかわからない。けど、あの人が決めて覚悟をしたというのなら、私も覚悟を決める。ただそれだけ。あの日の恩を返したいだけ。」 ただの、友人として、やりたいことをしたい。 「本人がいたら、泣いて喜びながら恥ずかしがって逃げるだろうね。」 「かもしれない。」 当初なら、こうやって思い出して笑えなかったかもしれない。 「さて、遅刻するわけにはいかないから、そろそろいくよ。」 「そうね。引きとめてごめんなさい。」 「じゃあ、また皆集まるときに声をかけるよ。」 「ありがとう。」 こうして二人は別れ、要の教師としての始まりを迎えた。 -sid京古 その日、必死に書類と格闘していた。 元々、こういった類の仕事は苦手だったが、目的の為に選んだのだから、泣き言を言いそうになるが、必死に頑張っていた。 「新人、頑張れ。」 そうやって、先輩が声をかけながら、先をいく。 絶対に追い抜かしてこきつける位偉くなってやると、心の中で思いながら、最後の書類を終わらせた。 「ふぅ。」 これを普通にやってのける要や芳はやっぱりすごいなと思いながら、提出した後の脱力感を味わっていた。 元々、体力や運動神経には自信があったので、力仕事や持久戦になりそうな作業に関しては、結構器用でもあったので重宝されている。時折書類の段取りで小言を貰うことは日常になりつつあるが、思ったよりは順調だ。 これも全ては、ある目的の為。 取り出したのは、一枚の書類。企画として発案し、なんとか形になったもの。 何もない田舎だからこそ、何かしようと提案した市民へのお知らせなどが載せられた冊子に掲載する文芸やイラストの募集。 元々は文芸部で他の文芸部と合同でしたことをヒントに、いろんな人が書いたものを掲載し、いろんな人に読んでもらおうという企画だ。もちろん、毎回なんらかのテーマがあったりする。 一般も受け付けるが、本当は文芸部の活動の足しになるようにと賞金をつけたのだ。 文芸部がとるという前提をまったく考えていないところが京古らしいと、他の皆は苦笑していたことを彼女は知らない。 「でも、これなら…いつこっちにきても、また一緒にできる。」 あれから、年賀状だけは届くのだ。 一時期届かなくなったことを考えると、届くようになったときの感動は今でも覚えている。 きっと、雅美もその想いを大事にしているのだろう。 イラストだけだったり、詩だったり、変わるそれを、残したい。その為に、毎年最初の号をそれで飾ろうと思ったのだ。けれど、それではその作品が載るのは何故かという問題にいきあたり、作品募集し、誰でも参加できるものにした。 年初めの最初の号だけは、知り合いの作品による例題として載せることにした。 こうやって、彼女の記憶が誰からもなくなったとしても、関わりだけを残そうと思ったのだ。 彼女は確かにこの場所にいて、この場所で育ち、自分達と出逢ったのだと。 単純で、穴だらけの企画だけど、住民自身にこの地域の事に興味を持ってもらったり、地域の参加できる企画に参加してもらって、少しでも賑やかになればいいと上司も許可してくれた。 だから、ちゃんとはじめて、この先も続けていきたい。 「待ってても来なかったら、こっちからいくだけだし。」 今は待つだけでもいい。たった一通のはがきだけでいい。 彼女を覚えている仲間が他にもいるんだ。まだまだ諦めはしない。 -sid芳 「お帰りなさい。」 「ただいま。皆着々と目標に進んでるみたいで、羨ましかった。」 鞄と上着を受け取り、片づける芳。 「ですが、貴方のおかげですよ。」 「ん?」 「貴方が最初に、誰よりもはやく、雅美が帰るこの場所の為に動いた。だから、です。」 同じ友人として負けてられないです。そう言う芳の姿を見て、昔を思うと周りを見れるようになったものだと唯は思う。 芳にとって、機械とその世界だけがあり、そこに他者が入ることはなかった。 共通の目的がなければ、唯とて彼女の眼中にはなかっただろう。 「勝負してるわけではないですが、この場所と雅美への思いの強さは社長もなのでしょう?」 「そうね。人間不信を、少しは信じてもいいかなと思えるようにしてくれた、大事な友人だもの。」 同じ学校へいけなくて、その時に同じ思いを共有することも、助けてあげることもできなかったけれど、また会える希望があるのなら、負けてられないのだと彼女は言う。 「だって、律儀に届くのよ?住所も宛名も不明。だけど、確かにあの人が出した最後の繋がり。不審物にされそうなところを、ひったくったあの日の私が偉いって褒めたくなるもの。」 ひったくってからは、この筆跡のイラストや詩が書かれた、なんの変哲もない一枚のはがきだけは破棄されることなくこの部屋まで通される。 「さ、仕事。そろそろ、企画案内とお願いがきてるでしょ?」 「ええ。本当に京古も無茶苦茶です。」 けれど、嬉しくなる。確かに、雅美のいた痕跡が残っているという事実に。 -sid夢 誰よりも、夢の世界に近く、誰よりも、夢の世界のことを知っているだろう。 だからといって、今の夢自身にとって、何かできることがあるかと言えば、ほとんど皆無というものだ。 「現実は悲しいもの。」 かつても、今の世でも、この力が恨めしかった。この力を気味悪がられ、疎遠になっていた。 そんな自分の手をとってくれたのは、今も昔も、きっとこの先も彼女であり、彼女と共にあった者達だ。 どうして、忘れてしまっていたのだろう。 「天空は、誰よりもこの世界を愛し、誰よりもこの世界を憎んでいた。」 その結果、天空はこの世界からいなくなった。そして、残ったのは、天空を失う事で世界を呪った男の言葉。 誰が悪かった。そんなものはない。 切欠があるとしたら、自分たちが彼女と近くありすぎたことだろう。 そのせいで、自分達を失った天空はこの世界を憎んでしまった。 世界の扉を守る番人となろうとして、自分達を消した新しい番人のせいで、天空は一人になった。 人の気持ちに敏感で、人の為にあろうとする彼女は、一人であることを選びながら、一人であることを誰よりも怖がっていた。それを知っていたのに、自分達はどうしようもできなかった。 「もう、あの頃夢みた普通の幸せなんていらない。あの頃のように共にあるというのなら、もういらない。」 皆がこの場所を帰る場所にするために奔走するというのなら、自分はいつかの未来の為に、戻れるようにするための力を得ることを探すだけ。 かつてもっていた力が全てなくなったわけではない。だからといって、すぐにどうにかできるものでもない。 騒動の原因の男がいうように、番人としての世界の理が変わったというのなら、そこにつけ込むことはできる。 それこそ、今のあの男は私達にとっての敵ではない。むしろ協力者になってくれることだろう。 ならば、それを利用してでも、かつて選べなかった未来をつかんで見せる。 「何もできなかったあの頃とも、何も知らないあの頃とも違う。思い出したし、存在を知っているし、力を覚えている。」 今度はもう、間違えない。 「ようこそ。」 今日も、カフェの片隅で、相談事を持ち込む者達を占い、導く。 もちろん、朝はカフェの定員として働いているが、こちらの方が思ったより有名になった。 けれど、それでいいのだ。いつかここへ現れる誰かを待っているのだから。未来に描いた世界で、自分はここであの場所に帰る為の出会いがあることを知った。だから、ここから離れる気は毛頭ない。 あとがき 現代編での、データ消えた最終話の後のサイドストーリー。 雅美以外のそれぞれのキャラで、未来編で出てくる前ふりだったりします。 現代編の番外編んにのみでていたキャラもいたりします。 最初とは少し違うけど、全員就職先が雅美との関係に関する目的の為なので、本来の予定と違う方向へ行った人もちらほら。 未来編で出た際は、あの後こうしてこうなったんだと思っていただければ… |