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三章 意外な真実 二十三日がやってきた。今日の集合は二時だと連絡を入れてあるが、一時前に友香とともに部室へ向かう幸里。 理由は簡単。とにかく換気をしてしまいたい。 湿気とカビと暑さのせいで、部室内の匂いが全快酷かったからだ。 「今日は床拭きだよ〜。しんどい。」 「誰か来るかな?」 「さぁ?来ない人は来ない。」 友香が旅行のお土産とくれたお菓子を食べる幸里。 「そう言えば、出来た?」 「何が?」 「展示発表用のファンタジー関連の本の感想もどき。」 「あ、忘れてた。」 「・・・そうかい。」 時間内に出来たらいいのだ。 「どうして今年って、こんなにいろいろあるんだろうね?」 「厄年だよ。」 「確かに厄年だよね、君は。私も前厄だしね。」 はぁと溜息が出る。 そんな時だった。 「・・・花びら?」 薄く桃色に色付いた花びらがはらはらと舞い散る。しかし、今は夏だ。それに、ここは地下で、校舎や体育館やあっても車の排気ガスぐらい。ここに花びらが入ってくるのは可笑しい。 「どういうこ・・・・・・白城さん?」 ドアの入り口が開き、そこに立っていた少女の姿を見て、覚えている名前をつぶやく。 「お久しぶりです。といっても、この前会いましたけど・・・。」 突然の訪問にどういう事かまったく意味がわからない幸里。 「今回はご迷惑をおかけして。」 「・・・迷惑?別に白城さん達から迷惑は・・・。」 「かけちゃったんですよ。今年の大雨と言えば、わかってもらえますか?」 「・・・じゃぁ、故意に?」 苦笑しながら頷く雅美に説明を求める幸里。 「この子が、私達を助けてくれようとして。ちょっとね。」 そう言って、彼女の肩に乗っているものに気がついた。 「・・・トカゲ?」 「トカゲに見えなくはないけどね・・・。現実逃避?」 「・・・トカゲじゃないの?」 「トカゲ?」 二人揃ってトカゲと言うので、どうしたものかと困る雅美。「あ、とりあえず入って。今生徒会が忙しく歩き回ってるから。目立つよ?」 閉じられた扉。その中に入る雅美。丁度、廊下で誰かが歩いていく足音が聞こえた。 彼女の長い話を聞く幸里。そして、相手が誰かはいまいちわからないが、とりあえず話を聞いている友香。 簡単に彼女の話を訳せば、去年出会った時のようなトラブルが結構起こり、巻き込まれる彼女達は今回も巻き込まれ、この水竜に助けられたらしい。それによって、溢れかえった大きな力は結界という壁を突き破って外に出て、被害が出たのだと言う。 滅多に起こる事などはないような事。だが、かつていた者と現在意思を継ぐ者。そして、多くの妖精がそこに留まる。そんな中にいるので、少しでもバランスを崩したり歪めばすぐに巻き込まれるような不安定な毎日。 「それにしても。このトカゲが竜なんてね。」 「トカゲじゃねぇ!竜だ!二度というなよ」 なんと、トカゲと呼ぶ竜は話を話す事が出来るらしい。 「えっと、水神ってあるでしょ?まぁ、お話によって種類はあるんだけどね。水の力を司る神。竜でも同じ。そして、その竜が言葉を話す話せないは人が勝手に想像しているだけ。ただ、こいつは話せたって言う結論が出たってことだね。あとはわからないけど。」 「そうなんだ。」 ちらりと見る。やっぱり、あんな大雨を降らせて今自分達が片付けに追われるような自体に追いやったような原因には見えない。 「竜でもトカゲでもいいじゃん。」 「よくねぇ。俺にはドルラス・ディアンド・ドルベータっていう立派な名前があるんだ!」 「・・・長い。」 「うるさい。」 「・・・アンタが一番うるさい。」 どうやら、互いに敵と認識した様子。 「水茨さんって、結構言うタイプだったんだ。」 「そうなのかなぁ?」 本人は無自覚らしい。 「あ。妹と戦うからかな?」 「すごいもんね。妹と。」 「妹?」 「三人姉妹の長女です。」 「そうなんだ。」 それだけ兄弟がいれば、いろいろと大変なんだろうなと思う。生憎雅美には兄弟も姉妹もいないのでわからないが。 少しだけ、うらやましいなと思ったが、それを口にする事はなかった。 とりあえず、原因はわかったし、そんな非現実な事を他の誰かに言っても信じてもらえないか、利用されかねない。 「あれ?」 「どうしたの?」 「彼がいなくなったなぁって・・・。」 そろそろ二時になるので、他の部員達がくるはず。なので、雅美は帰ろうかと考えていた所なのだ。 「そういえば、見かけないね。」 何処だろうかと探していると、意外なところで見つけた。 「・・・何してるの?」 「あ・・・。」 「ちょっと、何食ってる?!」 べりっと引き離しにかかる幸里。 「もう、駄目じゃない。すみません。」 「いいよ。ちょうど、一つずつ上げようと思っていたので。」 ドルラスは机の上に置かれた鞄の中に入っている、友香がお土産として持ってきたお菓子を食べていた。 「まったく。何してるの!」 大雨もだが、ここではもう一つ悪戯をしていくようだ。 「迷惑な奴だな。トカゲのくせに。悪戯ばっかり。」 「悪戯とは失礼な奴だな!」 「トカゲだろ。そんなバカな事をするぐらいだし。」 どうしてか、この二人は喧嘩腰になるようだ。 その原因は、やはり妹だろう。歳の離れた妹とは、意見の食い違いや同じであるからこそ対立しあう事はよくあるから。 今の彼女には、目の前にいるのは子憎たらしい妹と同類のものなんだろう。 「そろそろ帰らないとね。」 「あ、そんな時間?」 「だって、来るんでしょ?これから部活だろうし。」 「あ、ごめん。片づけが・・・。」 まぁ、原因はここにいるが。原因に手伝わすのはわかるが、雅美にまで手伝わすのはどうかと思う。 「本当にごめんね。」 「でも、不可抗力でしょ。こいつがちゃんとできない半人前だったんだよ。」 「お、言ったな!」 自分は正当なる水を司る竜王の息子で、竜王として意思を継いだのだと叫ぶ。だが、生憎幸里にはどうでもよいことである。 「黙る。」 ぺしっとはたく。扱いは先日の何かと似ている気がするのは気のせいだろうか。 帰るということで、部室から出て門まで向かう。 やはり、お見送りぐらいはしたいなというところだ。 「とにかく、気をつけてね。」 「ばいばい。今年も文化祭来るね。」 無事に準備が終わるかどうか心配な今、そういわれては間に合わさないといけないなぁと思う。 最後に贈り物を受け取って下さいと言われた気がしたが、何が贈り物かよくわからないまま、門まで送った。 門で一度止まって、もう一度別れをいう。 そのまま、彼女は家に帰るだろうと思っていた。 駅まで歩いていく彼女。 なんだか、二度と会えないような感覚になる。姿が視界から消えたように、何も残らず消えてしまいそうで。 「・・・また、何かあるのかな。」 その問いに答えてくれるものはいない。 そんな時、ふと見上げた空。 近くにはたくさん人がいるが気付く気配はない。 「・・・これが、贈り物ね。」 空に掛った七色の橋。 『何かあったとき、必ずかけつけられるように。巻き込んだ私達のお返しとして。貴方に繋がる架け橋を。』 風に乗って聞こえてきた声。きっと、あの竜が言葉を送ってきたのだろう。 「虹なんて、珍しいね。雨もふっていないのに。」 そう雨は降っていない。こんなに晴れた青空だから。 間違いなく、あの竜が空に水を撒いたのだ。 「ただの、あのトカゲの・・・水竜の悪戯だよ。」 「そうなの?」 もうすぐ、時間がくる。部室に集まるだろう。 「戻るか。」 「そうだね。あ、どうしよう。」 「何が?」 「先生へのお土産。」 「数あるの?」 「あるけど、どうしたら良いと思う?」 「いちご好きな君はいちごを置いて、みかんをあげたらどう?」 部室へと向かう為に階段を下りる。 部室の扉を開ければ、杏と泉の姿があった。 「部長。」 「あ、来たね。」 「他の人来てませんけど。」 「まぁ、来るでしょ。たぶん。」 とりあえず、床拭きをはじめようかと、雑巾を取りに上へと向かう。
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