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終 桜と私の願い
普段と変わらぬ日常を過ごす。学校というところはそうだ。 要達は叶舞の文化祭の翌日には、平常通り授業があり、早夜の家から直行で五人仲良く登校した。五人が出て行った後、早夜も学校へと向かった。 五人がいない間に、ゆっくりと話がしたかったから。母と友人という関係を築いた孤独から解放されたな桜の精霊と。 「桜妖華・・・。いるんでしょ?」 文芸部部室の窓からではなく、中庭の木から話しかける。すると、それに答えるように、木からうっすらと人の影が見え、それがだんだんと実体化していく。 『・・・来ると、思った。私はまだ、貴方にもお礼を言っていないから。』 桜妖華は早夜にも今回のことに関してお礼を言った。 「でもね、私の方こそ、お礼を言わないといけないんだよね。」 今回は願いも思いも一緒だった。そう、自分自身が動けない事まで、一緒。 「桜妖華があの五人にお願いしなくても、私がしていたと思うから。そんなに気にしないで。」 そして、少し持つ空気を変えた早夜。桜妖華も少し哀しげにそこに立つ。 桜妖華は感じる事によって、先日の件を知っていた。あの男の事も、もちろん知っていた。強い力を持つ者として、恐怖を覚えながら、あの日あの時間あの場所の事を、感じ取っていた。 「もしかしたら、貴方や私の願いを壊す輩が出てくるかもしれない。」 『・・・龍華をこの世から切り離した時と同じように・・・、番人同士の争いが、起こるのね・・・。』 それぞれの区分けされた領域を支配し、管理する番人と呼ばれるもの。 早夜は母の龍華からそれを受け継いだ。つまり、母を消そうと企むもの、この領域をほしがるものが、動き出すという未来が見えてくる。 『・・・そう言えば、番人が変わっていたみたいね。以前より強力な力を持つ、番人に。』 「・・・そうなのよ。できれば、そんな事に巻き込みたくはないけれど、彼女達はあまりにもこちら側に来すぎたのよ。」 大切に思い、巻き込みたくないと思っても、運命で決まっているのか、巻き込まれてしまう五人。 『私の心を解放して、助けてくれた恩人・・・。今の私の願いは、彼女達の幸せ。』 「私の願いも同じよ。いろいろと、彼女達の笑顔に助けられたからね。本人達は気付いていないだろうけどね。」 願いはたった一つ。それは彼女達の幸せ。思いはいつも同じ。
あまり長居は危険だ。どこで誰が聞いているかわからない。自分より力の強いものならば、簡単な事なのだから。 桜妖華と早夜はそれぞれ戻った。 それぞれ、ひっかかる思いと願いを胸に秘めて。今はまだ何も言わずにお互い離れた。
動き出すのは近い未来。どうなるかは、誰も知らない。
唯一知っているのなら、何もしてくれない神ただ一人・・・。
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