六 共同制作の完成

 

 

 

 まずは表紙を決定し、どれを最初で最後に持ってきて、中はどの順にするかなど、人数も作品も多いので結構時間がかかったが、皆満足のいくようになった。そのはずだった。

「また最初・・・。しかも、これまで・・・。」

「また最後だ・・・。なんでこれまで・・・。」

と同時に同じようなことをいう二人がいたが、あえなく無視される。

二人ははぁと同時にため息をついて、今は作業をしなければいけないと動き始めた。

「さ〜て、さくさくやりましょうか。」

まずは志木に始める事を伝えて、今回はもう一台使えるので、そのもう一台の管理者である瀬戸 直美にも連絡しないといけない。

「こちらも瀬戸先生の方にもいきますが、そちら側の印刷機での印刷はそちらから出す人に任せてもかまいませんか?」

「問題ないですよ。」

機械を覚えるのが速い芳と、運ばせる為に雅美に確認をとった。

こうして作業は始まった。長い長い作業は始まった。

現在は一時過ぎ。今日中に追われたらいいなと誰もが思ったが、かなり難しいところだ。

「いってらっしゃい。」

風妃が幸里と双葉と惟智と雅美と芳の五人を部室から送り出したのだが、忙しく作業をしている要や夢は気にしている余裕はなかった。

今回は何事もなく作業はスムーズに進められていった。

「そろそろ、印刷と運びの二人と変わらないとね。」

印刷を教えた後、慣れてきた幸里に任せて戻ってきた惟智と未玖に、交代を頼む。要達の方は、印刷はそのままで運びを京古に頼んだ。

「次、交代してきてね。」

この調子で後半も頑張ろうと気合を入れるが、時間はもうすでに三時を回っていた。大分、お疲れ状態である。

「まだ、テープ止めないといけないのよね・・・?」

「・・・それ、言わないでほしいなぁ・・・。気が遠くなるから。」

「あら?私は事実を言っただけよ?それに、占いでは今日中に終わらないと出ていたもの。」

そんなことを占っているのなら、黙っていてほしいと思う要。そこへ、ここではじめてみる顔があった。聞けば、彼女はよく手伝いに来る他のクラブの部長らしい。

「あ、よしちゃん。」

「手伝いにきた。・・・でも、邪魔だった?」

「そんなことないよ〜。ありがたいし。」

手伝いはここが狭いという問題があるが、多い方が楽だ。一人増えようとも気にせずに作業を続ける要達。

「あ、あと十ページ分だ。」

今自分の折っているページ数を見てつぶやくと、あと少しだと、はりきる人達。この調子で終わらせるぞと、再び気合をいれる。

「あ、ちょっと電話してきます。」

現在は五時半。一人抜けても皆気にせずに作業に没頭する。今はこれを全て終わらせることしかない。

「終わったー。」

杏が戻ってきて、しばらく作業をした後、表紙を含めて印刷と下準備完了だ。

「やっぱり、人が多いとなんかいいよね。それにさ、こんなに太くなるの始めてじゃない?なんかうれしいー。」

「それに、百部もはじめてだよね。」

今回は共同という事で、五十ではお互い二十五部で少ないので百部という長い道を目指したのだった。

「やればできるものだね。」

そういうが、テープはまだだ。なので、完成というわけではない。だが、お互い学校での規則もあるので、本日はこれで終わり。

「もう遅いし、今日はお開きにしましょうか。」

「明日も休みですし、明日もよろしいですか?」

「こちらはかまいませんよ。受験でもありませんし。」

その言葉にぐっとつまる風妃にもしかして言わない方が良かったのかなとあとから後悔したりもするが、言ってしまったものは取り消しようがないので、今は流しておく事にした。

「それではまた明日。解散!」

風妃の言葉に、皆それぞれ帰路についた。お疲れな様子の子もいたりして、明日も来れるかどうか不安なところがあるが…。

 

 

次の日の休みも、一時から集合して、今度は部室ではなく適当な教室へいって作業した。そこへ、この文芸部の顧問だという志木が現れた。

「どう?今日中に終わりそうかしら?」

「ええ、今日中に終わらせる予定です。」

それだけ聴いて、用事があるからと志木はどこかへいった。

なんだか、今にも暴れだして行きそうな風妃に本当に何があったのかと、気になるところだが、聞かないほうが身のためだろうと判断。

その後、皆一生懸命やって、やっと、本当の完成というゴールに到達したのだった。

さらにその後皆で志木が出してくれたお金でお菓子とジュースを買ってきてそこで小さなお祝いのようなものをした。少し前まではお互い知らない同士だったが、一つのことに向かっていくことで、前から知っている友人のような感じだ。

今ここに集まった面々で騒いで食べて飲んで、長い共同制作は幕を閉じたのだった。

 長い長い、だけど短いこの作業は終わり。

 

 

五人はそれぞれ十冊ずつ持って、バスで学校へと戻っていった。

「あー、十冊でも結構重いよー。」

「あたりまえでしょ?何人分の作品があると思ってるの?」

「最低十二人ね。今回途中で手伝いに来たあの人の短い作品と詩も入っているみたいだから十三人かしら?」

「結構多いねぇ。」

「確かに、今回は多かったですね。皆さん、ページ数も多かったですし。」

全員それぞれ紙袋を部室に置いた。

「何か紙の束って感じだよね。印刷前の紙だけの状態。文具店に買いに行ったときみたいじゃない?」

「そう感じるのは貴方だけよ。これは、私達と彼女達の活動の功績よ?そんなものにたとえないで頂戴。」

「何より、紙なんだから紙の束に決まってるでしょ?」

容赦なく言う要と夢にひどいーと訴えても、相手にされない。それをわかっていながらするのだ。だが、騒いでいた京古はふと大人しくなった。京古だけではない。五人全員が同じ方向を見て、動作を止めたのだ。

五人の視線の先はあの窓。そして、そこから姿を見せた桜の精霊、桜妖華。

『ありがとう。私のお願い聞いてくれて・・・。彼女、表に出るのに力を使って、しばらく紅葉と眠るそうよ。』

感謝されたことに、少しどう反応すればいいのか迷うところだ。

「でも、これで一つ、悩みが解消して良かったね。」

にっこり笑って桜妖華は姿を消した。その代わりに、背後から知った気配の主が現れた。今回、領域が違い、力の支配権が違うから手出しできないといいながらも、いろいろと助けてくれた早夜。

「おかえりなさい。五人とも。お疲れ様。」

「ただいま。」

五人は口をそろえて、早夜にいった。

その笑顔を見るのが、今では早夜の幸せの一つ。必ず守りたいと思う。これから何かと、巻き込まれると思うから。

「今夜も私の家に来る?」

どうしようかと考えたが、五人はそろってお邪魔しますと答えた。