四 紅い華が舞う

 

 

幸里の舞台が終わり、しばらくそこで待つ五人。きっと他の部員をつれてここへ来るとわかっていたので、動かずにここにいた。

「・・・あら、もうすぐ来るみたいよ。」

相変わらず怪しげにカードをめくっている夢がいうと、本当に向こうの扉から入ってきた。

「・・・そろそろ来る頃だと、カードが教えてくれた通り。」

「とりあえず、場所を移しますか?」

来て早々悪いと思ったが、ここでは音が大きくて話をするには不便だと判断した。立ち上がる五人とそれに黙ってついていく五人。向かう先は使われていないこの第二校舎の屋上。立ち入り禁止となっているが、今は構っていられない。要は芳に頼んで閉じられている扉の鍵を開けさせた。文句を言いつつも、あけてくれた芳に感謝して、一同は屋上へと足を運んだ。

「彼女、こういったことが得意でね。ま、それのおかげで私達は文化祭の日、無事だったんだけどね。」

通常の学生がこんなことを出来ると知ったら不審に思うので、要は先に五人に言っておいた。

「さてと、何処から話をするべきかな。」

「そうね、私達が来て、この花びらのことをあらかじめ知っていたというところぐらいかしら?」

そういって、話し始めた。知り合った桜の精霊が近々ここで同じ花の精霊となったものが、動くということ。

「あの華は彼岸花。知っているでしょう?秋に線路や田んぼ付近に生えている紅い不吉な華。花言葉は哀しい思い出。その通りに、その精霊も悲しい思い出があって、約束の日がこの日だったわけ。」

一拍おいて、夢は続けて話す。

「つまり、今貴方達や私達が見ているものは通常見えないとされるもの。」

「彼女は哀しい思い出の中で唯一幸せな思い出といえた、たった一人の思い人との約束の日という今日、少し力があれば見えてしまうほど、こちら側に出てきている。」

「つまり、簡単に言えば、その約束のために今日こんなに花びらが?」

「その通り。その約束がわからないから、なんともできないけど、もしかしたら探しているのかもしれない。思い人が約束を果たしに、あの日別れたあの人が現れることを。」

まるでそれがキーワードだったかのように、台詞のような言葉が屋上へと響く。

「・・・『残された時間はもうない。だから、君と一緒にいられる時間がもうない。ごめん、ずっと一緒にいたいと願ったのに。』」

急に話し出す幸里にどうしたと風妃が振り返る。

「あの本の話が現実に出てきたってことなのかなぁ?」

と一人首をかしげる幸里に何を一人でやってるのという。

「えっと、以前におかしな本を見つけてそれを読んで・・・。」

それを聞いて、どうやらこの学校にも自分達の学校同様に実際にあった話が残っているのかもしれないわねとつぶやく夢。

彼女達が体験してきたことは、七不思議と学校に残された実話が元になって巻き込まれた。つまり、今回も同じように考えれば実話がもととなって動き、それが解決の糸口になるのかもしれないと思った。

「『貴方がいないこの世で、この長い生を生きるという苦痛。どうすればやわらぐ。どうすれば、もう一度貴方と会える。』といった感じの文があったはずです。えっと、あとは、『約束よ。絶対に。この貴方と出会った場所で、彼岸花を添えて会いましょう。』だったかな。たぶん、これが『約束』じゃないですか?」

この辺までしか思い出せないなぁという幸里に充分ですよと要はいい、納得した。

「なるほどね・・・。そこまで覚えているのは立派だけど、どうやら貴方がその本を見つけて読んでしまったから今回の事がはっきりと目で分かるように動いたのかもしれないわね。」

これはこれで困り者だわという要。まるで、雅美から聞いた話が関わっているかもしれないなんて。

「・・・でも、そんな本は確か去年はなかったはず。」

「どうして?あ、そっか。平ちゃんは去年図書委員だ。」

「一昨年もなかったはず。私も見ていないから。」

「だよね。それだけ古かったらこのクラブ、何故か図書委員の人口密度が多いから眼に触れるはずだし、そういった奴って結構面白そうって手に取るだろうし。」

どうやら、この五人は図書委員になっている経験もあり、よく利用してよく本を読んでいるようだ。

「じゃぁ、やっぱり、今回は私のせいですか?」

「そうなるだろうねぇ。どうしようかな。その話をどこまで覚えているかによるんだけどな。」

自分達は七不思議もあの実話も良く知っている人がいたからこそ知り、取り込まれる事がなかった。

「今もあるのかしら?」

「さぁ?もうないんじゃない?だって、誰の目にも触れなかったものが、そう簡単に探して見つかるとは思わないしね。」

「なるほど。つまり動いても動かずって奴。」

過去に可笑しな空間へ入り、どれだけ走っても前に追いつかないし戻れないということを経験している雅美は納得する。

そんな時、ふわりと風が吹き、今日何度も眼にしてきた花びらが舞い始めた。

「ちょっと、やばいかもしれないわね。このままいくと・・・。」

「桜妖華は他に何かいってなかった?」

もう、人を取り込めるほど表に出てきたという証拠。舌打ちする要はふと桜妖華や早夜がいっていた言葉を思い出した。

「そういえば、誰かが鍵を持ってるって・・・。」

そこまで言って、重大なことに気付いた。だいたい今まで人目に触れなかった本がどうして今回に限り人目に触れたのか。

もしかしたらそうかもと、五人は同時に納得した。桜妖華との出会いも、巻き込まれたのも、その時に雅美が七不思議でその話を書こうとしたからだ。

つまり、今ここにいる誰かがこの相手が現れる何らかの鍵を持っているのだ。その鍵を見つければなんとか抑えられるかもしれない。

「えっと・・・。」

名前をあやふやにしかまだ覚えていない京古。

「水茨さんよ。いい加減覚えなさい。」

忙しいときに何をしているのと怒鳴る夢。

「だって、ややこしいし・・・。」

「今はそれどころじゃないわよ。水茨さん!」

要が幸里のもとへ向かい、夢が名を呼ぶ。気付いた幸里は振り向いて驚いているようだが、今はそんなことを気にしている場合ではない。

「何か、ここ最近何か身に着けていない?」

「何でもいいの。小さくても、人によっては価値がないものでも!」

問い詰められても直ぐには答えは出てこず、気付けば前に体験したように、巻き込まれると気付いてすぐに指示を飛ばす。

「巻き込まれるわ!」

「京古、郁!そこの四人を早く中に連れて入って!」

言うよりも、二人の行動は早かった。

まだ考え込んでいる幸里を見ている時、ふと、雅美は見えた鞄についているキーホルダーに目がいった。

「それ、それはどうしたの?」

雅美はどれという感じで首をかしげている幸里の鞄をつかんで、そこについているキーホルダーを指す。

「これ、何処で?」

それをみて要も夢もこれが原因だと気付く。それは小さめのガラス球の中に紅い華がその中で時間が止まり咲くように花開いているもの。

「あ、これ?えっと・・・そう、図書館で本を見つける前日に店で最後の一つなのかなぁ?一つだけ置いてあって綺麗だったから買ったの。」

「それだ!」

やっともとを見つけたが、時間はもうなかった。

要達はできる限り巻き込まれないようにと急いで校舎内へと非難しようとした。

「・・・私がもとだったら、巻き込むのは悪いから・・・。」

幸里は思いっきり要と夢の背中を押して中へ追いやった。

「ちょっと、何考えてるの!」

その行動に風妃が幸里を引っ張り込もうとして服をつかんだ。予定外の事態にやばいと要も外にいる三人を引っ張りいれようとしたが、時間切れというものが来てしまった。

まだ外にいた雅美と、幸里、そして幸里の服をつかんだ風妃はその場から消えた。

あたりにたくさんの紅い花びらを残して、消え去った。

「嘘・・・。」

実際人が消える現場を目撃して、呆然とする未玖達と厄介な事にならないといいけどと、厳しい表情を残す要達。

「とにかく、ここから離れましょう。」

「一度、知り合いに連絡を入れてみます。次に何処から現れるか、彼女だったらわかるはずだから。」

そういって、一同は部室へと戻ることにした。あそこなら、誰も立ち入らないし、邪魔も入らない。それに今は、このことにどうするべきか、早夜に聞くのが最善の策だと、わかっていた。

「たぶん、今回も相手が相手だから大丈夫よ。」

そう、大丈夫と要は人に言いながら自分にも言い聞かせていた。