第五章 話される物語

 

 

 なんとか舞台が終了し、少々ハプニングがあったりもしたが、幕を閉じる事ができた。

 幸里はカセットを鞄に詰め込んで、素早くその場から外へ出る。何せ、次の舞台種目の音響の係りが来るから出ないといけないのだ。

 体育館を出れば、前日に急に決まって舞台でくるくると回るといっていた夕子達がいた。

「終わったね。」

「でも、あとが暇だよね。」

「でも、いいじゃん。」

そんなことを言いながら、待機場所へと戻る。

 戻った後は、渡されていたカセットやいろいろなCDを返した。

 時計を見ればもうクラブ写真をとる時間。うわっと、幸里は慌てて「ちょっと行ってくる」と友香と夕子に言い、クラブの展示場所へと向かった。

 その時は気付かなかった。体育館だけではなく、今入った校舎の入り口にもその花びらが舞っていることに。

 

 

 教室へ入ると、すでに他の部員達はそろっていた。

「ごめんなさい、遅れました。」

「大丈夫よ。写真屋さんがまだだから。」

と、志木に迎えられた。いきなりの登場で少々驚いたが、すぐに我を取りもどし、部屋の奥へと向かった。

 しばらくして、反対側の写真部のクラブ写真を撮り終えた写真屋が来た。

 失敗したらいけないと、二枚ほどとって、あっけなく終わった写真の後、思い出した幸里は小声で風妃に耳打ちした。

 風妃を伝って、他の三年三人に伝わり、行こうということになった。

 どうやら、彼女達も校舎を取り巻くこの花びらが見えていて気になっていたらしい。

 前に途中で帰った新入生の二人は、長く彼女達と一緒にいなかったためか、何故か見えていなかった。

 とりあえず、この鬱陶しい花びらをどうにかしたいと、何か知っている彼女達がいる体育館へと向かう。教室の事は二人と志木がいればなんとかなるだろう。

「いったい、何が起こるんでしょうねぇ?」

いろいろ話を書いていたりするので、結構こういったことに遭遇する事が楽しく思えるが、取り返しのつかない事になったらいやだなと思う幸里。

 人生の中で一度あるかないかというようなこと。彼女達とであった事が運命なら、今回このことに巻き込まれることも運命だろう。

 次の話これで書けるかもと密かに思ったことは部長達には内緒だったりもする。

 今は演奏をやっているのか、外にまで賑やかな音が聞こえてくる。

 幸里達は気にせずに暗い闇の中へと足を運んだ。この事態のことを知る為に。

 場所はすぐにわかった。動いていないし、席ではなく前で立って人が騒いでいるからだ。

「・・・そろそろ来る頃だと、カードが教えてくれた通り。」

「とりあえず、場所を移しますか?」

立ち上がる五人とそれに黙ってついていく五人。向かう先は使われていないこの第二校舎の屋上。立ち入り禁止だが、この人達なら入れるような気がした。なんだか、何でもありな人達だからだ。

 案の定、芳が少々文句を言いながら、屋上の鍵を開けた。しかも、何処からか出したのか、細くて短めの針金を使ってだ。しかも、スムーズにあけるところから手馴れている事がよくわかる。

「彼女、こういったことが得意でね。ま、それのおかげで私達は文化祭の日、無事だったんだけどね。」

どうやら、彼女達の文化祭も何かあったようだ。

「さてと、何処から話をするべきかな。」

「そうね、私達が来て、この花びらのことをあらかじめ知っていたというところぐらいかしら?」

そういって、話し始めた。知り合った桜の精霊が近々ここで同じ花の精霊となったものが、動くということ。

「あの華は彼岸花。知っているでしょう?秋に線路や田んぼ付近に生えている紅い不吉な華。花言葉は哀しい思い出。その通りに、その精霊も悲しい思い出があって、約束の日がこの日だったわけ。」

いまいち意味がわからない。

「つまり、今貴方達や私達が見ているものは通常見えないとされるもの。」

「彼女は哀しい思い出の中で唯一幸せな思い出といえた、たった一人の思い人との約束の日という今日、少し力があれば見えてしまうほど、こちら側に出てきている。」

「つまり、簡単に言えば、その約束のために今日こんなに花びらが?」

「その通り。その約束がわからないから、なんともできないけど、もしかしたら探しているのかもしれない。思い人が約束を果たしに、あの日別れたあの人が現れることを。」

その話を聞いて、ふと幸里はある話を思い出した。

 以前、図書館で奇妙な本を見つけた。少々古ぼけていて、中も日明けしているもの。タイトルはかすれてわからなかったが、なぜか興味を覚えて読んだのだ。

「・・・『残された時間はもうない。だから、君と一緒にいられる時間がもうない。ごめん、ずっと一緒にいたいと願ったのに。』」

急に台詞のようにいいだした幸里にどうしたと風妃が振り返る。

「あの本の話が現実に出てきたってことなのかなぁ?」

と一人首をかしげる幸里に何を一人でやってるのという。

「えっと、以前におかしな本を見つけてそれを読んで・・・。」

それを聞いて、どうやらこの学校にも自分達の学校同様に実際にあった話が残っているのかもしれないわねとつぶやく夢。

 彼女達が体験してきたことは、七不思議と学校に残された実話が元になって巻き込まれた。つまり、今回も同じように考えれば実話がもととなって動き、それが解決の糸口になるのかもしれないと思った。

「『貴方がいないこの世で、この長い生を生きるという苦痛。どうすればやわらぐ。どうすれば、もう一度貴方と会える。』といった感じの文があったはずです。えっと、あとは、『約束よ。絶対に。この貴方と出会った場所で、彼岸花を添えて会いましょう。』だったかな。たぶん、これが『約束』じゃないですか?」

「なるほどね・・・。そこまで覚えているのは立派だけど、どうやら貴方がその本を見つけて読んでしまったから今回の事がはっきりと目で分かるように動いたのかもしれないわね。」

これはこれで困り者だわという要。

「・・・でも、そんな本は確か去年はなかったはず。」

「どうして?あ、そっか。平ちゃんは去年図書委員だ。」

「一昨年もなかったはず。私も見ていないから。」

「だよね。それだけ古かったらこのクラブ、何故か図書委員の人口密度が多いから眼に触れるはずだし、そういった奴って結構面白そうって手に取るだろうし。」

未玖はそういった本が好きだった。

「じゃぁ、やっぱり、今回は私のせいですか?」

「そうなるだろうねぇ。どうしようかな。その話をどこまで覚えているかによるんだけどな。」

自分達は七不思議もあの実話も良く知っている人がいたからこそ知り、取り込まれる事がなかった。

「今もあるのかしら?」

「さぁ?もうないんじゃない?だって、誰の目にも触れなかったものが、そう簡単に探して見つかるとは思わないしね。」

「なるほど。つまり動いても動かずって奴。」

過去に可笑しな空間へ入り、どれだけ走っても前に追いつかないし戻れないということを経験している雅美は納得する。

 そんな時、ふわりと風が吹き、今日何度も眼にしてきた花びらが舞い始めた。

 まるで、何かを追うように追いかける花びら。そう、彼女は悲しい思い出の中の約束を守ってくれることを信じて、追いかけた。

 あの人のぬくもりを感じるもの目指して。