|
第ニ章
文化祭に向けて 印刷の幸里と運びの双葉は用紙と原稿を持って、部室を出る。 「すみません。手伝わせてしまうようで・・・。」 「いえ、お互い様ですし、忙しい中お邪魔したのもいけなかったのですから。気にしないで下さい。」 「すみません。・・・さ、いくぞ、二人とも。志木と対決だ。」 「部長―、対決じゃないですよー。」 といいながら、三人は部室から消えた。 「あの、あの人、もしかして顧問の先生のことを嫌っているんですか?」 「もしかしてではなく、確実に、でしょうね。」 「・・・どうして、楼湖さんはあの人を嫌っているんですか?」 「・・・ここの文芸部員は皆そう思ってるからね。とくに、彼女は部長と顧問として、何度も対決をしてきたから、余慶にね。」 どこからそう始まったのかわからないけどねといいながら、仕事仕事と去っていく。 いったい、この部員と顧問の間で何があったのだろうかと、心配になる要。だが、京古は面白そうと、いう始末。雅深から言えば、結構いい先生だと思うけどなだ。 だが、そんなことを口にすれば、大変な事になっているだろう。 見た目で人を判断してはいけません!と、すかさず言われていたところだろう。 志木の職員室は図書館である。ので、三人は図書館まで足を運んで、職員室の印刷機の使用許可として、来てもらえるようにいいに来た。 「志木先生いますか?」 「あら、来たの?じゃぁ、印刷するのね?」 「はい。・・・じゃ、君たちよろしく。」 「はい。」 「・・・。」 「どうした、梓月さん?」 「何でもない。ちょっと喉が・・・。」 それで、意味を理解した風妃は、頑張れと、肩を軽くたたいて、職員室へと向かわせた。 風妃は部室へ戻り、印刷された用紙が運ばれてくるのを待つ。 最初は思い出すまでの時間として戸惑いながら、すぐに慣れだした幸里は、五時には帰れるといいなと思いながら作業した。 部室では、人数の多さで、少し余裕を持てて、話をしながら印刷された紙を折っていた。 「あ、先輩。あそこにあるので、それを持って行って下さい。」 と、机の上に置かれた、印刷済みの用紙の束を指差して言う。 双葉は黙々と運び、幸里は黙々と印刷機と対決した。部室の賑やかさを思うと、まったく別の世界のようだ。 やっと、一冊目が終了したということで、一息つく。その間に、印刷機を使うという他の人に場所を受け渡し、幸里も一度部室へと戻った。 「お疲れ様―。でも、まだあと二冊分はあるぞ。」 部室では、あとすこしで一冊目の分が折り終わるようだ。 一息つきましょう、ということで、全員お茶やジュースを用意して飲む。何せ、この部室は冷房がないだけではなく、風通りがよくないので、暑いのである。 「・・・暑い。あーもう。誰か有名になって部費を手に入れるんだ!」 「はぁー、扇風機でいいからほしいー。」 そんな部長と副部長を見て、他の皆も思う。要達も、まさか、ここまで風通りが悪くて暑いとは思わなかったので、長袖だった。 しばらく休憩した後、作業を開始する。 「では皆さん、開始しましょう。きりきり働く!ってことで、水茨さんと梓月さん行ってらっしゃい!」 と、また部室を追い出された。 作業が終るのはまだまだ先のようだ。 はじめてから三時間後。現在は午後の四時。 「お疲れ様でしたー。印刷終了です。」 はぁと、全員ため息。今回は、要達が来て、予定が狂ったが、人手があってかえってはやく終わった。 「さぁ、どんどん行きましょう。時間がない!」 机を並べて、その上にたたまれた紙の束をページ順に並べ、冊子にするために一枚ずつ並べる作業をする。 「頑張って働きましょう。」 並べ終わったのを確認して、全員で机の周りをぐるぐると回る。 要、雅魅、京古、夢、芳も一緒に手伝う。 おかげで、今まで以上に量が多くなったが、予定より早く終れそうだ。 「あとは、ホチキスでとめるだけだ!」 「まだ五時だ。」 「人が多いっていい。あーもう、いつもこうだったら何も問題ないってのに。」 そういいながら、手は動かす部員たち。冊子の中央にホチキスをパチパチととめていく。 そして、今回各九十二ページの冊子が三種類、五十部ずつ出来上がった。 「本当に、お疲れ様でした!」 終ったー、という感じで全員がのびをする。 そこへ、志木がやってきた。それを、姿を見る前から気配を察知して扉を睨むように見ていた風妃はすごいと思う。 幸里は絶対にどこかにセンサーがついているんだと思う。なので、今度探してみようかなと思ったりもした。 「どう?終ったかな?」 「はい、今終りました。」 「そう、予定より早く終ったのね。」 じゃぁ、先生は図書館の戸締りをしに戻るわねと、去っていった。 扉が閉まった瞬間、もう、来なくていい!という風妃の声が部室に響いた。 文化祭まで残りわずか。共同制作の日も近い。 これからもっと、忙しくなるだろう日々に、今日はとにかくはやく帰って寝ようと、部員全員が思った。
|