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第六夜 偽りはいつしか真実に ある国の昔にあったといわれるお話。 ハーメルンの町は鼠に困っていた。どこからでも鼠が出てきて町中溢れかえっていたのだ。 もう、鼠のしたいほうだい。それに困り果てていた町人達。 ある日、そこへ一人の男がやってきた。笛吹きだと名乗る旅人だった。 鼠をどうにかしてくれるという男に、なら報酬を好きなようにあげると町長は言った。 それに対して、旅人は金貨100枚がいいと言った。 そして次の日の早朝。男は笛を吹いた。 町人は何事かと起きる。とっても早い時間だったので、旅人に文句を言おうとしたのだ。 するとどうだ。屋根裏や下からがさごそと音がして、外へ、旅人のいる広場へところへと集まった。 そして、全ての鼠が集まった頃、男は川へと向かって歩いて行った。 そして、男は川を渡り、鼠も同じように渡ろうとして流されてしまった。 その後、報酬を受け取りにいった男だったが、本当に全て居ないとは限らないから渡せないといって断った。 一度は抗議したが、もうやらないと追い出した町長に、最後に何か言おうとして結局言わず、そのまま町から出て行った。 その後は、町は鼠で困る事はなくなった。 本当に鼠はいなくなっていたのだ。 そして、しだいにあの男の事を忘れて言った頃、前とは違う服を着た男が町に現れた。 仕返しに来たのかと思ったが、なにやら様子が可笑しい。 男は前と同じように笛を吹いた。 その笛の音に合わせて、町の子供達が集まっていく。 町長の娘が来た事を確認すると、男は立ち上がって歩き始めた。 それにあわせて子供達も歩いていく。 大人たちはお腹が空けば帰ってくると思っていたが、子供達は一向に帰ってこない。 皆で町長に言いに行き、きっとあの男の復讐なんだと大騒ぎ。 その後、何年経っても子供達は帰ってくることはなかった。 そんな、ある国の古いお話。 その笛はいつしか別の力を持ち、現代に帰ってきた。 あの笛吹きと同じように笛を吹き、町を助けたにもかかわらず約束を破られた哀れな男。 その男による大掛かりな仕返し。 「ハーメルンの笛吹きと今回は同じなのですね。」 「今度は民話だとはね。」 雅美と合流した後、五人が見た『物語』が『ハーメルンの笛吹き』と似ている事を考えていた芳が、ネットで出してくれたものを見ていた。 「この仕返しが『偽りの遊戯』ってわけ?私達まったく関係ないじゃない。」 「確かにそうですが、きっと、相手はわからないのですよ。」 時が経ちすぎた為に、偽りとも気付かないし、いつが終わりなのかもわからなくなっている。 「とにかく、これを止めればいいのよ。」 これ以上巻き込まれたままなのも、せっかくの文化祭を壊されるのも終わりだ。 「一度、帰りましょう。」 「そうだね。」 帰ろうとすれば、必ず姿を見せるだろう。 そうしたら、それを止めるのだ。 「彼女はとっても優しい心の持ち主だから。」 きっとわかってくれるはずだと、雅美は信じている。 だって、ここに一つだけ、アイリスが咲いている。 ここにいるんだぞと小さなそれが主張している。 「もしかしたら、苦しんでいるのかもしれない。自分が自分でなくなって、自分はどうしたらいいのかわからなくなって。」 偽りだらけとなった今、何が真実かさえわからない。だから、覚えている限りのことを行動に移しているのかもしれない。 「はやく、戻ろう。時間もない。」 雅美が来た竜胆の花道を戻る。この先は出口だから。 竜胆が途切れた場所。そこは、自分達の学校だった。 廊下に全員でたら、自然と竜胆の道は消滅した。そこには今まで何もなかったかのように、跡形もなく消えた。 「・・・帰ってこれた。」 「もう、一時はどうなるかと思った。」 しかし、一息ついてもすぐに問題は現れる。 全てを解決しない限り、一息つくのはお預けなのかもしれない。 「逃がさない・・・。」 あの少女が現れた。執念で足止めしようとする。 その力は、すでに人が持つものとは違っていた。やはり、少女はすでに人ではなくなっていた。 だけど、まだ人と同じ心は残っている。 だから、雅美はそれにかけようと思った。 彼女が偽りを信じて今までやってきたのなら、その偽りが真実に変われば問題はない。 そう、こうした歪んだものにならないようにすればいい。 「もう、終わりにしようよ。」 いつ用意され、ここにあるのかはわからない。 足元には、約束を思い出してという花言葉を持つクローバーが現れた。 ゆらゆらと揺れながら、雅美達の前に存在を示すかのように。 「貴方が大切な人と交わした本当の約束を思い出して。ね、アイリス・・・。」 彼女の動きが止まる。 そう、本当の名前を呼ばれることで、彼女は一時的に力を封じられたのだ。 名前とは、その存在に対する一番強い呪。 雅美はあの竜胆の道を歩いている時に、全ての経緯と光景を見た。 そして、二人の会話も、楽しそうに日々を過ごしていたのも見た。 最後に、男の死を悲しんで泣き叫ぶ少女の背中も見た。 「貴方が偽りとなるきっかけは簡単。・・・男が死んだから。だよね。」 本当は、優しい心を持つ娘として育つように、男に名付けられた。 ショックで家族も名前も忘れてしまったから。 男は、あの街を恨んではいなかった。アイリスの存在が、男の心を変えたから。 だけど、男が死んだ時、彼女は嘆き悲しみ、街の事を思い出した。 嘘をついた。騙された。だけど、行く当てのない自分を見捨てず引き取ってくれた。 男はあの街を恨んでいる。 彼女は心の中に住まう悪魔に耳を傾けてしまった。 そして、それは実行され、街は滅びの道へと進んだ。 「貴方は、まだこんなことをするのは、あの人の元へいけないから。」 そうでしょと言われて、本人は気付いていないのか涙を流していた。 「もう、こんなことはしなくてもいいんだよ。あの人はずっと待っているんだから。」 行かないと駄目だよと、道を示す。 ずっと少女を気にして側にいた男の姿が、やっと少女にも見えた。 『アイリス・・・。』 『・・・っ!』 血の繋がらない、だけど確かに繋がりを持つ二人が再会し、抱き合う。 深く強い絆がそこにはある。 そして、やっと少女は心から涙を流して微笑んだのだ。 彼女の偽りで曇った世界は壊れ、真実を移す光の世界へと出てこれた。 男と共に、少女は姿を消し、そこにはもう、雅美達だけしかいない。 「お疲れ様。」 今まで必死に行動しても、何かの邪魔があって助けられなくてごめんと、早夜が現れた。 そして、ずっと見守って、何も手を出せない事に悔しさを覚えながらいた、桜妖華の姿もあった。 「うん。ありがとう。」 助けようとしてくれて。心配してくれて。 「今日は、帰りましょう。」 「うん。」 「心配してるだろうからね。」 「どうしよ。」 「もうこんな時間なんですか・・・。」 「困ったわね。」 五人それぞれ言って、学校をあとにする。 他に巻き込まれた子達も、気がつけば自宅の前にいて、無事に帰ったらしいことを次の日に聞いた。 偽りの時間は終わり、真実の時間が流れ出した そして、いつものように朝日が昇り、一日が始まる
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