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事は唐突に起こる。 「…また、電話するの?」 そんなぼやきは、幸里が家に帰ってからぽつりともらしたもの。 今日の昼、放送で呼ばれたかと思うと、なんとそれは、文化祭前にリレー小説の相手との対面とその後の活動で仲がよくなった。 さらに仲がよくなったと言えるのは、文化祭での一件だろう。 得体の知れない相手と対面したとき、対処してくれたのが彼女達だった。 そんな彼女達が、今度こっちにやって来るのだという。それも、今回自分たちが作った部誌を持って。 そのことで、幸里は電話をするべきなのか悩んでいた。 実は、つい先日に印刷日変更などの連絡で電話を使ったのだった。あれは、かなり勇気を要し、かけようとしては駄目だと投げ出しつつも、なんとか連絡を取り合えたのだったりする。 「うー、どうしてこんな次期に…。」 そして何より、この次期というのがいけなかった。そう、この次期は試験前。 だが、こちらとあちらでは試験休みがあるないで違い、試験休み中に試験があるらしいので、こうなってしまったらしい。 「とにかく、電話だよねぇ…。」 はぁと、本日何度目になるかわからないため息をついて、受話器を取った。 何回かのコールのあと、相手が受話器をとったようだ。 「あの、もしもし。」 「はい?どちら様でしょうか?」 「水茨と言う者ですが、風妃さんは現在ご在宅でしょうか?」 「しばらくお待ち下さい。」 向こうが呼びにいったのか、受話器から保留をした時のメロディが流れてくる。 しばらくして、相手が現れる。 「あの、部長さん?」 「どしたの?」 「あの…。」 幸里は彼女に顧問から聞いてきた内容を伝え、彼女に残りの三人への連絡を頼んだ。 受話器を置いた後、はぁと息を深く吐いて吸う。 「実は、リレー小説の相手校、『桜華』の方々が、今度こちらに来るらしいんです。」 「え?あの五人が?」 「そうなんです。是非先輩方もと、志木先生が…。あ、相手の方もゆっくり先輩とお話したいって…。」 「…。」 しばらく無言になる風妃。出来れば、聞きたくない名前だったのだろう。 「あの、部長さん?」 「…わかった。他の三人には、メールを打っとく。あと、私はもう部長じゃないわよ。今の部長は貴方よ、水茨さん。」 「うー。」 「うならないの。」 どうにか、連絡事項を告げ、やって来るのは再会の日。 久しぶりに、この部室が賑やかになった。印刷日には、先輩も来て賑やかだったが、いろいろと集まって連絡や卒業式の用意をしたりしてここへ来ていたのだが、ぽっかりと穴が開いてしまったのか、寂しい感じがする部室だった。 「…さすが、先輩。」 この部室での存在感はこの四人によって、大きく左右される事を再度思い知らされたのだった。 楽しく話をする四人。今日は、家庭事情により、杏や泉は来ていない。なので、幸里は一人少し後ろで先輩の話を聞いていた。それが結構楽しかったりもするのだが…。 しばらくして、部室をノックする音が響く。そして、彼女達が入ってきたのだった。 順番に要、京古、夢、雅美、芳と入ってくる。 「お久しぶりです。今回、お忙しい中申し訳ありません。」 最初に入ってきた要が、部長らしく挨拶をする。対応するように、風妃も挨拶を返す。 挨拶もそこそこにし、よければこれをどうぞと、人数分の要達が制作した部誌を差し出した。 「それで、今回はどのような内容で?」 「えっと、今度もまた、合同制作をさせていただきたいなと思いまして、今回相談に来たんです。」 「なら、彼女とすればいいわ。私はもう、部長ではないから。」 と、風妃に押し出されてしまった。 「えっと、部長さん引退を引き継いで部長となった水茨です。改めて、よろしくお願いします。」 「こちらこそ。」 その後、要と幸里は合同制作する事に決め、次に会う日も決めた。 そして、あとは卒業を控えた四人にお祝いするパーティのようなものをして、部室で騒いだ。 「今日は、ありがとうございました。」 卒業という別れ、しかし、まだ続く関係。 「また、会えるといいですね。」 その言葉が意味する事は何も知らない。 日が暮れた中帰る部員達。 ふと、早い春を知らせるかのように、薄い桃色の花びらが目の前を舞い落ちる。 それは、四人の門出を祝う桜の精霊と、文化祭で巻き込んでしまったという早夜からのお詫びとお祝い。 「綺麗…。」 四人はそれにしばし見とれ、今までを振り返っていた。 それぞれ別の場所にいながらも、思うことは互いの事。 「さて、私も帰ろうかな。」 雅美達同様に放っておけないと思う風妃達の事。 今回気にかけたのは、この前の事があったから。だが、それとは別にある。それは彼女の心の中の秘密。 桜妖華と別れ、家路に着く早夜。 その間ずっと、桜の花は舞い落ちる。 これから起こる事への何かの知らせなのか、それとも…?
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