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七 戦闘終章歌 誰もが自体を飲み込めずにいた。何が起こったのか、理解出来ずにいた。いや、理解しようとしなかったと言った方が正しい。 「蒼、なぁ、蒼・・・。」 流衣の問いかけにかすかに反応を見せる蒼。そして、ゆっくり口が動く。 「良かった、流・・・衣・・・戻っ・・・て・・・。それ・・・に・・・、ガーザ・・・さ・・・んも・・・無事・・・で・・・。何て、顔して・・・。」 かすかに開けた目で流衣の顔を確認して微笑みながら言う蒼。 側で、一緒に落ちたガーザは足の骨を折るだけで、他はこれといって別状は無い。ゆっくりと身体を起こし、蒼の側により、蒼の状態を確認する。 「・・・出血が酷い。このままじゃやばいぞ・・・。」 「蒼、しっかりしろよ?!約束破るなよ!!」 誰もが、ギースタを見、そして責めた。 「私は、私は何も悪い事はしていない!あいつが、そうだ、あいつが勝手に飛び出してきたんだ!!」 そして、銃を側にいる者達に視界が入るところに方向を何度も変えて向け、震える手で持っている。 流衣にはすぐわかった。この男は口だけで根性がないと。話を聞いている間からずっと気に食わない奴だったが、ここまで落ちていると、反対に情けないものだ。 「・・・今すぐ、蒼を手当てできるような準備をしろ。今すぐだ!!」 怒りを覚えながらも、今は出来る限り押さえ、怒鳴ってギースタに命令をする流衣。しかし、一向にギースタは動こうとしない。 いい気味だと、流衣は思いながら、すぐに蒼の事へと戻る。 「・・・待っているより、行った方が早いな・・・。」 ガーザは蒼を昼間のように荷物のように担ぎ上げるのではなく、しっかりと出血場所を布で縛ってある事を確認して、抱え上げた。彼自身、足を骨折と言う怪我を負っているにもかかわらず、誰にもわからないように歩き出す。 流衣とキリーア、そしてバルダやカールに中間達が数人ガーザと蒼の後を追いかけた。そこにいた、兵や町人も後に続いた。もちろん、ギースタを縛り上げて引き連れて。 砂漠での戦闘はこれで終わりとなった。 すぐに、町の支配者から命令を受けて出てきた者によって、ギースタは地位剥奪と、町追放の命令を下し、誰もが落ち着いた。 だが、蒼はまだ目を覚まさなかった。 「蒼、目を覚ませよ。なぁ、蒼は本当に助かるんだよね?」 「医者が言うには、対処が早かったから命に別状はないらしいけどな。」 暗い雰囲気が漂う一室。ベッドの中で眠る蒼を囲んで、流衣やキリーア、ガーザ達が立っていた。 「戻って来いって行っておきながら、お前が戻ってこなくてどうするんだよ!」 泣き崩れる流衣。ガーザもだんだんと表情が険しくなっていく。 蒼は、そんな彼等のことを、遠い意識の中で感じ取っていた。
『なんで、泣いてるんだよ。流衣、泣くなよ。僕はここにいるだろう?』 だが、聞こえている気配は無い。それより、だんだんと蒼は彼らから遠ざかっていく。 『流―衣―――!僕はここだよ?流衣ってば!!キリーアさんも、ガーザさんも。』 どんなに頑張っても、聞こえる気配は無い。さらに彼等と離れていくだけだった。 蒼は、不安定な場所に動かない身体を必死に動かそうとしながら、流衣達を見ていた。 そんな彼のもとへ、またあの声が聞こえた。 “ 我の守護を受けるべく生まれた後継者よ。今のお前の望は・・・? ” 蒼はもちろんと、言い、続けて答える。 「みんなの所へ戻りたい。」 “ 承知。さぁ、戻るがいい。お前はもう戻れる。 戻って、己の進む道を真っ直ぐ進め。迷わず信じた道を。 そして、解かれた封印されていた力を使い、我の元へ来い。瀧の・・・ ” 今回は声の主に感謝しないといけないなと、思いながら、重たいまぶたをゆっくりと開けた。 そして、光と共に、友や優しい人達の顔が写った。 「蒼、蒼―――!このバカ野郎!!」 泣き付く流衣の頭を撫でながら言う。 「ごめん、心配かけて・・・。そして、ただいま・・・。」 蒼は、暖かい仲間に包まれて、笑みを零した。 今は、心配してくれる友がいるし、一緒に泣いてくれたり、励ましてくれたりする友がいる。あの一人で旅をしていた頃とは違う。 少しうれしく思えた蒼だった。 「ほら、一日中寝てたんだからな。これ食べな。」 キリーアが粥を用意してくれて出してくれた。蒼はありがとうと言って受け取り、ゆっくりと食べた。
あの後、再び深い眠りに着いた蒼。今度は、二度と目が覚めないかもしれないという恐れはない。疲れを癒す為の眠り。 流衣達も安心して、眠りについた。 本当に、長い夜だった。永遠に続くかもしれないと思われる夜だった。 流衣は蒼の側で、椅子に座って乗りかかって眠った。今晩は、離れたくなかった。 キリーアとガーザも子供だなと呟きながら、暖かい眼で見守り、部屋を出、別の部屋で眠りについた。 そして朝が来た。 ギースタはすでに最低限必要な荷物を持ち、町を出ていた。 「まったく、ムカツク野郎だった。一発ぶんなぐってやりたかったな。すっきりしない〜〜?!」 妙にすっきりしないのか、わめく流衣。 「でも、結局は良かったからいいじゃない?ガーザさんも、仲間さん達も、何もとがめられないし。反対に、住む場所提供してくれたんでしょ?」 「まぁな。だが、俺は一定の場所に留まって、普通の生活をするのは性には合わんからな。」 「私も、少し外へ行きたいなと思ってたんだよな。」 二人が言おうとしている事。流衣は気付いた。 「駄目だぞ、一緒に旅に行くのは・・・。」 先に言ってみるが、わかっているなら話は早いと、蒼に話を持ちかけて、流衣を完全無視をする。 「・・・流衣、駄目か?」 蒼が頼む。流衣は蒼に頼まれて、今まで、あの日の前からも、断った事は無い。蒼はほとんど人を頼ろうとはしないが、流衣には結構心を許し、いろいろと頼んでくる。それは、流衣にとってうれしい事なのだが、これは・・・。 「蒼君の頼み、駄目なの?友失格な奴だな。」 「たまには頼みを聞いてやれよ。」 「あんた等はうるさい。」 いくら頼みが頼みで聞けないと心の中で思いながらも、結局は許してしまう。蒼には叶わないなとぼやきつつ・・・。 「蒼君、これで、しばらく一緒ね〜。」 ハートマークが飛ぶ憩いで蒼に抱きつくキリーア。それを気にいらない流衣は離れろと二人をはがす。 そんな彼等の旅はこれからも続き、これからも困難が待ち受けている。 今は楽しくしていても罰は当たらないだろう。 だんだんと寂しい一人旅から賑やかなパーティとなっていく。 蒼はこれからも、楽しくいければいいなと思いながら、喧嘩する二人を見守っていた。 それに、ガーザが巻き込まれようが気にせず、楽しく見守る。 その時、ふと思い出したことを流衣に聞く。 「流衣、あれってさ、いつくっつけたの?あの日からか?」 ぴたりとけんかを止めた流衣が蒼の方を見る。 「あ、そう言えば、説明がまだだったな・・・。」 流衣は内心、キリーア達がいる中で説明するのは抵抗があった。しかし、聞かれたものはしょうがないので答える。キリーアはいないものとして無視をして。 「そう、あの日、もう駄目だと思った時、狼神としてまだ未熟だったあいつが現れたんだ。あいつも、瀕死状態だったらしいけど。それで、お互い助かる方法として肉体共同したんだ。砂漠横断屋で会った時、蒼も違和感があっただろ?これがそれの正体だ。」 やはりと納得する蒼。狼神を見て顔が違っているのには確信できたが、まだわからないことが残っている。 「その、狼神はどうして瀕死状態だったんだ?それに、流衣も瀕死状態だったんだろ?どこで出会ったんだ?」 難しい事を言うなと怒られたが、素直に答えてくれる。これがキリーアだとけんかになって一日が終わってしまうだろう。 「よくは覚えていないんだ。朱音さんと別れた後に、襲撃者と運悪く出くわしてしまって、やられたんだ。だけど、何故か生きていてな。あいつらも死んだと思ったんだろう。生きていても、どうせここから一番近い町へ行こうにも、その前に力尽きるだろうって思ったんだろ。ま、それで助かったわけだが。」 流衣は思い出しながら、どんどん話す。蒼が知らないあの日の流衣の事を。 「その後、本当に死ぬかと思ったんだ。動く事も出来なくてさ。それで、よく遊んだあそこに立っている木があるだろ?アレにもたれかかってたんだ。そしたら、目の前にあいつが現れたわけよ。あいつも村の襲撃に巻き込まれたらしい。それで、俺達はお互いが生きるために俺の体と力を貸す変わりに、あいつは俺を守護してくれるようになったってところだな。意見に同意したとたん、あいつは俺の中に入って怪我を治してくれてな。」 流衣が今ここにいるのは、瀕死の狼神と出会うという偶然によるものであった。 「その後、眠くなったそこで眠ったんだ。起きた時には、襲撃者達も村の仲間も皆いなかったがな。でも、俺と同じように助かった奴がいるかもしれないと思って、村を出たんだ。その後、砂嵐に巻き込まれたりしたけどな。どうやら、あいつが上手い事町へ降ろしてくれて、今度も助かったけど。それで、蒼と再会が出来たってわけ。」 「そうなんだ。ごめんな、僕、先に村を出て・・・。」 しゅんとする蒼を見て慌てて蒼は悪くないと言う。 「俺が襲撃と同時に逃げろって行ったんだろ。お前は俺の約束を聞いてくれただけだろ?な?」 こうみると蒼は小さな子供みたいだなと流衣の腕の中にいる蒼を見て苦笑する二人。さらに外から見ると、二人は蒼と流衣の保護者に見える。しかし、そんな事を言えばただですむわけが無い。 「で、ボウヤ。体の変化は無いか?」 「そうだな。ボウヤは覚醒者のようだからな。気をつけねーと、助かった命が今度こそ使いもんになんないぜ?」 「うるさい。何にもない!」 蒼から離れて二人につっかかる流衣。 楽しい話し声が、その一室から響いた。 それを、窓の外から見ているものがいた。闇の住人とも言われる烏だった。 二つの赤い目で四人を見、しばらくして飛んでいった。暗い夜の中を黒い羽を広げて、静かに消えていった。 四人の気付かないところで、何かが動き始めていた。漆黒の闇が広がり、四人を破滅へと導こうと。遠くで烏の鳴き声が聞こえた。
もう一泊宿に泊まり、出発の準備を整えた一行。 キリーアは宿屋の亭主に手紙を届け屋に渡しておいてもらえるように頼んでいた。内容はだいたいわかる集落にしばらく留守にするといった内容だろう。 ガーザは町で暮らすことになった子供達や中間達に別れを告げていた。 中間達や子供達は行かないでほしいと言うが、ガーザと付き合いが長い分、よくわかっているようで、また、戻ってきてくださいと、頭を下げた。涙は見せまいと、こらえる子供達を見て悪い奴目と内心毒づく流衣。 そんなこと、気にもしていない子供達は、いつまでも、ここがガーザとの思い出で、自分達の全てで、ガーザが帰ってくる家だと言って、次会うまでの分かれの挨拶を言う。 ガーザは優しく頭を撫でながら、また暇を作って戻ってくると言った。 やっと、子供達に笑顔が戻った。
こうして、四人は旅に出た。 蒼と流衣の目的である村と守護竜と森との関係を見つけて最終的にどうするべきかを考えて動くということに、キリーアとガーザもついていく。 二人は、おもしろそうだからと言うが、どこかで、役に立つことだろう。 出発早々、楽しい会話が四人を中心に聞こえてくる。 迫り来る不穏な空気にも気付かず、歩き出す。 蒼の演奏するヴェルダを聞きながら、町から彼等の姿は見えなくなった。
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