僕達は罪を犯しました 僕は嘘をつきました 僕は約束を破りました あの子は、嘘をついて約束を破り、逃げたことによって、 笑顔を見せることも、話すこともなくなりました あの日から、僕等を追いかけてくれることもなくなりました 僕等は罪を犯しました 嘘をついて逃げたせいで 約束を破って逃げたせいで あの子は事故に遭いました 自由の翼を持つ鳥たち 静かな校内に全ての授業の終了を知らせる鐘が鳴り響きました。 「蒼兄、用意できた?」 「ああ、今終わった。すぐに帰ろう。」 三年の教室にやってきた下級生の男の子。彼は新城 大地といい、同じ学校内にいる兄の蒼空を迎えに来た。二人はいつもきまって一緒に早く帰る。クラブにも入らず、委員を持つことも無かった。誰もがクラスの代表として、運動クラブ部長としてと推薦されるが、やらなかった。 彼らには歳の離れた妹がいた。名前は風海。可愛く無邪気で元気な女の子だった。だが、ある日を境に変わった。 妹は、二年前のあの日、事故に遭ったのだ。 蒼空と大地は毎日、妹が入院している病院へ見舞いに行った。話し掛けることも笑いかけてくれることもない、妹に会いに行った。自分達の罪を感じて、会いに行った。 風海は、二年前の事故によって今も意識不明の植物人間状態であった。あれからもう、二年も経っているにもかかわらず、二人は今も覚えていて、忘れる事は出来なかった。 あの日、もし嘘をつかなければ、約束を破らなければと後悔をし、毎日を送っていた。 二人は、途中で花屋により、風海が好きだった桃色の花を買った。風海は種類の事はともかく、桃色の花が好きだった。桜もカーネーションもチューリップも、全部桃色を選んだ。 病院への足取りは、重かった。病院に近付くに連れ、あの日、救急車によって運ばれる妹の姿を思い出す。妹の顔を見ることによって、自分達の罪が心に深く刻まれる。 「あいつ、もう…駄目なの…かなぁ……。」 大地の弱音を聞き流そうとする蒼空。だが、自分も心のどこかではそう思っているのか、自分に言い聞かすためにも、言う。 「…大丈夫だとは言えないが、僕等は風海にあの日のことを謝らなければいけないのだから、今も頑張っている風海に対して、あきらめることは失礼だ。」 そう、あの日のことを誤らなければいけない。自分達のせいではないと親や親戚が言おうとも、もしもっとよく考えていればこんなことにはならなかったのだ。 「そうだけど、そうだけどさ。いつまでも、あいつの弱っていく姿を見ていたくはないんだよ。」 「お前まで弱気になってどうする?」 「だってな…。」 言葉は続かなかった。確かに、蒼空も苦しむぐらいなら楽になってほしいと願う。一生あの日のことを悔い続けてもかまわないから、罪が消えなくてもかまわないから、助けてほしいと何度神へと願ったか。結局、願いなどは叶わない。だから、あの日から神を信じなくなった。 「あいつは、僕等のせいで、自由と言う翼をなくしたんだよ…?」 自由に楽しく笑い、歌い、動き、誰に対しても優しく接し、愛された子。 空を自由に飛ぶ鳥のように、何者にも囚われない子。 籠の中で飼われ、空を飛ぶ事を知らない鳥ではない。 そんな子だったというのに、 その子から翼を取り上げないでほしかったのに… 何度も悔やんだ。あの日、どうして嘘をついたのか。約束を破ったのか。 毎日、あの日のことばかり思い出し、そして今日も妹へ会いに病院まで来た。 病室へ入ると、妹は何時もと変わらず眠っていた。ただ、眠っているだけならば、早くその目を覚ましてほしい。でないと、忘れてしまう。目の色、声、思い出・・・。 毎日、日が沈むまで、面会時間が終わるまで、僕達はそこに座っていた。いつか、目を覚ます事を信じて。 部屋をノックし、誰かが入ってきた。 「あら、今日も来たの?でも、残念ね。新城さん…風海ちゃんはまだ起きないわ。」 見舞いに持ってこられた花を飾る花瓶の水の入れかえをしていたのだろう。腕に重そうな花瓶と花を持って看護婦が現れた。 「いえ、わかっているのですが、どうしても…。」 看護婦は、寂しそうに妹を見つめる自分達という風にいつも見ていた。だから、すぐに病室からは出て行く。 「…風海…、何時になったら、戻って来るんだ…?」 静かな病室では、小さな蒼空の声が響き渡りました。 面会時間と言うのは、長いようで短いものだった。二人は、病院に迷惑をかけるわけには行かないので、面会時間になれば帰ることにしている。今日も、面会時間の終わりを告げ、買えることにした。 蒼兄ちゃん、大地兄ちゃん… 何処にいるの?風ちゃんはここにいるよ…? どうして聞こえないの?そこにいるのに、風ちゃんはずっとここにいるのに… 蒼兄ちゃん、風ちゃんは賢いから、嘘ぐらいわかるよ 蒼兄ちゃんは、嘘をつくのが下手だから、すぐわかるよ 大地兄ちゃん、風ちゃんは偉いから、約束破っても我慢できるよ 大地兄ちゃんは、約束破っても、ちゃんと最後には約束を守ってくれるから 蒼兄ちゃん、大地兄ちゃん 一緒に遊ぼうよ 大きな野原の上に立って 蒼い空の下で 海から運ぶ風に乗って 風ちゃんは、また一緒に遊びたいよ 嘘をついても、次は風ちゃんの言う事聞いてくれるじゃない 約束を破っても、必ず変わりに何かをしてくれるじゃない 別の約束があって嘘をついても、別の約束があって約束を破っても、 その約束は絶対次に守ってくれるんでしょ? 二番目はあまり好きじゃないけど、風ちゃんはお兄ちゃん達が好きだから、 お兄ちゃん達が優先したい事があるなら、風ちゃんは待ってるから。 覚えてる?風ちゃんとの約束… 風海、嘘をついてごめん あの日だけ、他の約束を優先して、ごめん 嘘をついて、出かけてごめん 許さなくてもいいから 風海の笑顔を見せて、声を聞かせて 約束を守れなくて、守れない約束をしてしまって あんなことになって、守るといって守れなくて・・・ 一生の傷になってもいいから 一生責めてもいいから、戻ってきて下さい お願いだから、戻ってきて下さい、風海 三人は夢の中で同じ場所にいた。お互い姿は見えなくても、お互いの気持ちを聞いた。 神を信じなくても、お互いは信じる事が出来る 神は願いを叶えてくれないが、三人を出会わせてくれたのだから 朝日は昇り、また今日という日がやってくる。 「…夢?」 蒼空と大地は同時に目を覚まし、つぶやいた。 今日は日曜日ということで、夢の事も気になり病院へ向かう事にした。もちろん、桃色の花を持って、行った。 病室内は少し暗かった。朝は日が当たらない場所なのでしょうがないかもしれないが、妹の顔がよけいに顔色悪く見えるので少し嫌な気分になった。 「水、入れ替えてくるな。」 大地は持ってきた花を花瓶に生ける為、散った花を捨て、中に何も入っていない花瓶も持って病室を出た。 「…風海、今朝、あなたは夢の中に来たのですか?」 話し掛けても返事があるわけが無い。 「風海、どうすれば、目を覚ましてくれますか?」 返答がなくても、話しつづける。 「お願いです、私を叱って下さい。本当に嘘だとわかっていたのなら、叱って下さい。」 ほとんど体温の無い風海の手を握る。 「眠るか、目を覚ますか、どちらかにして下さい…。風海、あなたこそ、約束を守ってくださいよ…?」 あの日、泣き叫んでから一度も流さなかった涙が流れた。どうしてか、止まらなかった。我慢して止めておいたのが、何らかの拍子にはずれて流れ出したのだろうか。 「…風海……戻ってきて下さい…。」 蒼空も大地もほぼ諦めていた今日 かすかに、風海が蒼空の手を握り返した 驚く蒼空。本当に微かなものだったため、幻なのかもしれない。 「入れ替えてきたぜ。」 「…だ、大地…。」 「どうしたんだよ、その顔。」 目が取れても知らないぜといい、花瓶をいつもの低位置に置く大地。 「い、今、微かに風海が…。」 「ん?こいつがどうしたんだよ。」 「風海が、微かでしたから確証はないのですが、握り返して…。」 なかなかいいたくても、伝えることができない。 「風海、今朝の夢、続きなのでしょうか…?」 「夢なわけないだろ。起きているのだから。」 やっとのことで、蒼空が言いたい事を理解できた大地は風海の反対の腕を握り呼びかけることにした。 「おい、いいかげん起きやがれ。約束破って悪いと思ってる。このまま約束破りのままにするつもりかよ!」 「お願いです。風海、嘘はつきませんから。約束していた、あの思い出の丘に行くんでしょう?」 二人は必死に呼びかけた。今ならば風海が戻ってきそうな気がしたから。今朝の夢のように、今日こそは風海の声が聞きたいから。そして、あの日のことを誤りたいから…。 蒼兄ちゃん…、大地兄ちゃん… 呼んでる?風ちゃんのこと、呼んでるの? 『このまま約束破りのままにするつもりかよ!』 『約束していた、あの思い出の丘に行くんでしょう?』 兄ちゃん達…、約束覚えていてくれたんだね 今度は破らないよね、嘘ついて出かけないよね…? 『風海が戻ってこないと、家の時間が止まったまま動きません』 『母さんに笑顔で話し掛けてやれよ。大分、まいってるから』 兄ちゃん達…、結局迷惑ばっかりかけちゃったみたいだね でも、どうしても、起きたくても、目が開かないの 声が聞こえても、見ることが出来ないの 声を出す事も、動く事も出来ないの 『動けないなら、僕が変わりの身体になってあげると言ったでしょう?』 そしたら、蒼空兄ちゃんの身体がなくなるよ 『声が無くても、見えなくても、ずっと一緒だって、言っただろう?』 でも、兄ちゃんだって、やることがあるじゃない 『桃色のプレゼント、渡す約束守らせてくれないんですか?去年も今年も、貴方の誕生日は過ぎてしまいましたよ。』 『そうだぞ、お前こそ約束破るなよ。守らせてよ。』 『まだ、誤ってもいないのですよ?』 『戻ってこいよ。動けなくても、戻ってくることは出来るだろ!』 兄ちゃん… 風ちゃん…戻りたい、戻って、会いたい… 窓の外には蒼い空がありました 広い大地がありました そして、海を渡って風を運んできた三羽の鳥が飛んでいました 風海は微かに目を開け、話し掛けました 「…兄ちゃ…達…に、会い…たか…た。」 昔のように、少し弱々しいが笑いかけながら、言いました。 蒼空と大地は涙を零し、嫌っていた神に感謝しました。 鳥は、再び自由を手にしました 蒼い空と広い大地の間を飛び回り 翼を広げて戻ってきました 鳥達は止まった時間を再び動かし始めました 蒼い空を飛ぶ鳥 広い大地を飛ぶ鳥 海の上を飛ぶ鳥 それぞれ、自由という翼を広げ、風の流れにそって飛びました。 +++―――あとがきと言う名の言い訳―――+++ こんにちは(ぺこり ただ単に、出だしだけで始まったものです。 詩のような感じで、出だしの言葉が浮かび、そのまま話をつけていきました。 話が出来上がり、なんじゃこれー?!と叫んでしまいました。 こんなことがあるはずがない。二年間も意識不明で急に話し掛けで起きるかー?! いつもながら設定が酷いものです。あう。 出だしにあわせては、最後が少し違う気がするかもしれません。少し変更をしたのです。 僕達の罪は消えないけれど 深く心に刻まれたけれど 君の笑顔で薄れていった 君の言葉で薄れていった やっと、約束を守る事が出来た を、最初に考えていました。ですが、どうもしっくりこないので、やめました。 まぁ、中身がわけわからない代物になっているので、違和感なく流してもいいのかもしれませんが…。どうでしょうねぇ? しかも、めちゃな設定のわりにどうしてこう暗い話ばかり思いつくのやら。身近で経験はしたことはないというのに何故なのでしょう?何の影響?! このような経験はなくても、入院と言う経験を持っているからでしょうかね? 謎だわ。謎のままにしておきましょう。 微妙あとがきまでも、最後まで読んでくださってありがとうございました。 戻 |