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禁止されたものの意味が理解できず、それに触れてしまう愚かな自分 禁止された理由を、触れて気付く自分 そうやって、何度も同じことを繰り返していく 全ては何もかも遅い そして、気付く 大切なものを失ってからはじめて気付くのだ 狩り人2章 禁忌 クロスは依頼人の話から拾った地名をミカゲとギベルドに言い、旅芸人のことからギンとナルの行動まで『影』と『気配』というものから調べるように頼んだ。 そして、世間では有名な姿が見得ない情報屋に電話を入れる。すると、二時間後には調べてそちらへ行くと返事をくれた。 昔なら一人で全て抱えることになったが、今は頼もしい仲間がいてよかったなと思う。そんな事を口にすればアヤやフェウスあたりに熱かと言われるか、明日は嵐だと言われるだろう。 わかっているのだ。自分の性格が捻くれ曲がっていることぐらい。確信犯だからたちが悪いと先輩であるフィルドやグラッサによく言われたなと思い出しては苦笑する。 今は休んでおけばいい。自分の仕事は後始末なのだから。クウ達にはたまに付き合ってもらっているが、彼等にはあまり汚い面を見せなくていい。そうできるのならそれでいいのだ。 ただ、今はゆっくりと、静かに紅茶を楽しむ。 ・・・外で賑やかな声が聞こえるのは多めにみようか。これもまた、彼等にとって毎日の日課なのだから。 そう言えば、以前この教会が四人と四匹だった頃、子どもの楽しい声が少ないとフィルドに言われたことを思い出す。確かにそうだったかもしれないと今なら思う。 今はこんなにも賑やかで休めと不器用ながら心配する『お子様』がいるのだから。 「ベル・・・。」 『・・・たとえ神が主を罪を咎め罰しようとも、我は主の味方だ。』 「それは心強いですね。」 今、目をつむればすぐに思い出される。たくさんの人や魔堕ち達の言葉の数々。決して忘れる事の出来ないあの言葉の数々が自分の罪の証でもある。 禁忌を犯した者が出る家系、一族は『禁忌の一族』として差別を受けるが、それこそ自分に当てはまるだろう。こんなにも、魔堕ちだとしても『人』の生命を奪い、血濡れの手を持つ自分こそ、禁忌を犯した罰せられるべき存在だろう。だけど、考えても今はしょうがない。 「ここで、立ち止まるわけにはいかない・・・。」 『皆がそれぞれ過ちを背負っているからか?』 「それもあるかもしれませんね。」 人はそれぞれ、過ちをいくつも背負って生きていく。たとえそれが禁忌だとしても、手を伸ばすものなのだ。だからこそ、禁忌の一族と呼ばれる者達が一向に減らないのだ。 この教会には、禁忌の塊である者達ばかりが集まった。だからこそ、一緒にいようとおもったのかもしれない。 元々は四人と四人だったこの教会も、一人、また一人と増え、今では八人の人と六人の人の姿ではないものがいる。増えてからはフィルドも賑やかで教会らしくなったなと言ったのを思い出す。 だが、『人』が本来持つ力以上のものを持ってこの世を生きる者達の集まりだ。人は知らないだろうが、ある意味化け物の集まりなのだから、教会という言葉から連想するものからはかけ離れた空間になってしまっている。 「・・・さて、そろそろ私も調べましょうか。」 一冊の分厚い本を手に取り、ぱらぱらっとページを開く。そして、その場所に描かれた聖霊の名を呼ぶ。それだけで、彼は聖霊を呼び出す事が出来る、聖霊に好かれた人間だった。 だから、自然と四大聖霊と契約を交わす程だった。 「久しぶりですね。シルフィンド」 『相変わらずみたいだね、クロス。』 「お願い、できますか?」 何をと言わずとも、すでに聖霊達は『聴いて』いるから知っている。 『おおせのままに、ご主人様』 すっと頭をさげ、そのまま姿を消した。・・・いや、人の目には『視えない』風となって窓から出て行ったのだ。 「まったく、相変わらず悪戯好きですね。」 風によって、吹き飛ばされた帽子。足元に転がるそれを見て苦笑するクロス。 魔人はそれを取り、クロスの頭に乗せる。 「ありがとう、ベル。」 飲み干した紅茶のカップをテーブルに置き、少し休みましょうかと椅子から立ち上がった。 調べ物のついでにちょっと気になることがあったヤヨイはセントラルバルス第一図書館にいた。 「頼まれていた資料、届いてますよ。」 「あ、本当?じゃあこれと一緒にお願い。」 借りる本を数冊カウンターに出すと、そこにいた司書のランドルが以前頼んでおいた資料を用意できた事を告げる。やったぁという感じで一緒にそれを借りて図書館を後にしようとした。 「おやぁ?」 その時、珍しいものを発見したのだった。周囲は誰も気付いていないようだが、ヤヨイはしっかりと見つけた。 「これは面白くなりそうだわ。うふふ・・・。」 小型の携帯できる電話を取り出し、電話をかける。相手は自分がよく知る通販会社の関係者の一人。 「もしもし〜?」 貴方が最近気になっているタカルタ女王様に関する、素敵な情報をお届けですよと言えば、相手はただじっとこのことを聞いていた。 「これでよしっと。あとはどう動くかは貴方方次第、ですわ。」 電話を切り、先ほどのことはすでに切り離して飛翔門へと向かう。もうすぐで、約束の二時間後がやってくる。 「ヨルデカートへお願いしまーす。」 と元気よく言えば、いらっしゃいと顔見知り常連のヤヨイはすぐにヨルデカートへと飛翔門をウぼかしてくれたのだ。 ありがとうございますぅとお礼を言って、まっすぐ町外れの丘へと向かう。そこにあるカロリュベヌス教会へと向かう。 途中で買出しの帰りらしいマリアネアとシアンとフェウスに会った。 「こんにちはぁ〜。」 と手を振って呼びかければ、三人が振り返り、それぞれの表情を返す。マリアネアとシアンはこんにちはと笑顔付きだが、フェウスはげっと何しにきたという嫌な顔をするものだから、つい『うっかり』睡眠銃を撃ちかけちゃったとてへっと可愛いこぶってみる。 「ふざけんなっ!」 ふさふさの耳が逆立つように立って怒るフェウス。やはりうるさいから眠らせるべきだったかしらと思うが、よく考えると荷物持ちが寝てしまっては余計な荷物が増えるだけかとやめる。 「お帰り〜。あ、ヤヨイ嬢も来たんだね。どうぞ、あがってね〜。」 マリアネアの荷物を受け取って、マリアネアに上でクロス達いるからと伝え、シオン達と荷物を置くために二人と別れた。 「上で待ってるみたいですので、案内します。」 にっこりと笑顔で対応すれば、ヤヨイも同じように笑顔を返す。会話はないが、確かに二人の間で何かが交わされていた。 「・・・お兄さんの魂の欠片。見つかりました?」 「いえ、まだです。」 「そっか。じゃあ、これをあげるよ。」 と、マリアネアがクロス達の待つ部屋の扉をノックしようとした時、突如話しかけられ、キラリと光る何かの欠片を手渡された。 「え、これって・・・。」 「ある筋で手に入ったらしいのを、グラバンが買い取ってきたのよ。それを貰ったんだけどね。」 持ち主に返すのが一番でしょと言われ、やはりこれは欠片なのだと思い知らされた。だけど、本当に受け取っていいのか戸惑いがある。グラバンが買い取ったというなら、それ相応のものを返さないといけないと思ってしまうのだ。 「いいのよ、別に。グラバンは結構裏でいろいろ手に入れるためにやってるんだけど、貴方のだとわかったから取り戻してきただけなんだから。」 はやく、お兄さんが戻るといいわねと言い、がばっと扉を開けた。 小さく、はいっとだけ答え、クロス達の前に出た。 「今日は来て下さり、ありがとうございます。」 「いいのよ。神父様のためだもの〜。」 はいっと資料のプリントを手渡すヤヨイ。 それを確認して、やはりそうですかとクロスは呟くのだった。 「本当、世界中で魔堕ちだらけになりそうですよ、神父様。」 「そうですね・・・。」 滅びたとされた、ある禁忌の一族の一人が生きていた。正確には、一度死んだ最後の生き残りがさらなる禁忌の魔術により、この世に戻ってきたのだ。 闇の手を差し伸べる魔王側の使者となり、魔堕ちにさそう踊子を演じている。 「厄介なことになりそうですね。」 「・・・マリアネア。これから話があるから出ていてくれ。」 クロスがマリアネアにはあまり聞かせたくない話があるのはわかっていたから、マリアネアを部屋から出そうとしたが、彼女は首を横にふった。 「私もこの教会の人間で、神父様達の仲間です。もう、逃げませんし、何より私を外して話を進めないで下さい。」 わざと傷つかないように離してくれているのは知っているが、それではもう駄目なのだ。きっと。 だから、関わらせて下さいといえば、ちらりとミカゲはクロスを見て返事を待つ。 さすがにクロスも決意がある者を追い出して仲間はずれになんて出来ない。 「わかりましたよ。私の負けです。人手もありませんから、今回は一通り話を聞いて覚えておいてください。」 そろそろ、相手側も慎重に動いていたのが活発になってきている。つまり、大きなことになっていくだろうとわかっているから、しっかりと状況を把握しておいて貰う方がいいだろう。 「しかし、これだけは覚えておいて下さい。」 「何ですか?」 「決して『禁忌』は犯さないで下さい。」 禁忌というものの重さをいくつか見てきたマリアネアは息を呑んで頷いた。 「そして、死なずに戻ってきて下さい。しかし、生きて変える為に必要ならば、禁忌に触れるとしても、使えるものは使って下さい。」 真剣な表情なのに、言っていることは滅茶苦茶である。だけど、心配しているのはよくわかるし、なんだかクロスらしかったのでそれはそれでいいのかもしれないと思えた。 「わかりました。」 そんな矛盾したこというなんてと笑えば、何か言おうとした言葉を飲み込むように紅茶を呑む。 「では、はじめましょうか。」 調査報告を出し合い、まとめ、今夜動くための計画を練るために。
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