眠り姫?

 

 

今日も、朝食を遅れてくる住人がいた。

そして、言い合いをしているアヤとフェウスをちらりと見て、ミカゲに二人を指さしてボーっとした目で訴えた。

「ただの、いつもの喧嘩だ。気にすることはない。」

「・・・そうなのか。」

そうなのかとそれで納得して終わる。それ故、毎回原因は一人知らなかったりするが、まだ半分寝ているといってもおかしくない彼には、頭には入らずどうでも良い事であるのは確かだった。

「おはようございます。温めたところなのですぐ食べれますよ。」

だいたい時間を見て、シアンは彼の分を用意する。今回もタイミングは丁度良かった。

どうぞとすぐに出された朝食を前に、黙々と食べ始めた。

「バルさんとベルさんのも用意しましたよ。」

と、彼の背後からにょきっと現れた半透明の生物に笑顔で話しかけるシアン。

これもまた、教会の住人だった。そして、彼に取り付く守護獣であり、この教会を守っているものでもある。

だからこそ、人一倍睡眠が必要になるのだが・・・。まぁ、彼の場合は寝すぎである。

そして、次の日もまた朝食の時間には彼は姿を見せなかった。

 

 

コンコン

控えめに二度ほどノックをした後、その人物は部屋の扉を開けた。

「・・・人の事に口出しするつもりはないが、何か一つぐらい上を着たらどうだ?」

もぞもぞと薄い布団から上半身だけ起き上がったギベルドはまだ眠そうだった。

寝ている格好は下に下着と無駄に長い布を腰巻いているだけ。上は何も着ていない。

以前聞いた時では彼曰く、「・・・着替えるのが邪魔くさい」とのこと。

あまり変わらないと思うが、それでも邪魔臭いらしい。まぁ、普段着が着るのも脱ぐのも結構手間のかかるものだからしょうがないのかもしれないが。

「シアンは今日マリアネア達を朝早く出る用事があったから、朝食を持ってきた。」

「ありがと〜。そこ置いておいて。」

「わかった。」

「うーん・・・」

身体を伸ばしてベッドから降りるギベルド。

「今日のもおいしそうだね。」

「・・・シアンが毎日作ってるからな。」

「そうだったね。あ、ちゃんとお礼言えてないや。」

今度ちゃんと言わないとと言いながら、手を合わせて皿を手に取った。

「・・・出来れば上を着てから食事をしてほしいな。」

「あ、下に降りないから忘れてた。ま、いいや。」

「一応、教会には男だけではなく女もいるのを忘れるなよ。」

「あ・・・そうだったね。」

気をつけるよと言いながら、先日のクウに起こった出来事の話を聞いて苦笑する。

着替えるので上を脱いだらちょうどやってきたマリアネアに見られ、彼女に叫ばれたのだ。

そして、着替えるならそう言って下さいと怒られ、何故か謝ってたと言っていたことを。

慌ててた為にノックもせず入ってしまいと、ちゃんと後で我に返ったマリアネアに謝られたということも聞いた。

「あの子だけだからね。クロス神父に勝てるのはね〜。」

気をつけないとねと言うクウにギベルドが言い返した。彼以上の笑顔を持って。

「彼女も確かにすごいかもしれないけど、俺は一番神父様に発言力があるのはクウ自身だと。

それを言うと目をぱちくりしていただろう。少し動きが止まって、あはは〜と笑いながら冗談ばっかり〜と肩をばしばしと叩いて去っていった。

その事を思い出してくすくすと笑っていたら、ミカゲがどうしたと聞いてきた。

「何でもないよ。ちょっと思い出し笑いしてただけ。」

「そうか。」

「それにしても、ミカゲもある意味最強かもね。」

「・・・。」

何がだという目でギベルドを見ているが、「秘密」としか答えなかった。

だけど、気にした様子はなかった。

今度、神父様に一番発言力がある人は誰か見極めてみよう。

珍しく放っておけばいつまでも寝ているような眠り姫は、あまり眠りをとらない困ったさんな眠らない姫の観察をいそいそとするのだった。

 

 

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観察日記

 

 

○月×日

今日、犬は日記の存在に気付いた。

しかし、まだ中身はわかっていない。

そして今日も、たのんだ薪割りと食事の材料の買出しを済ませ、

他の住人よりも大目の食事を平らげて就寝した。

 

○月▲日

今日はアヤと言い合いの喧嘩をした。

そして、窓を一つ割った。

罰として昼食抜きを言い渡した。しかし、こっそりとシアンが食事を与えた。

・・・躾けにならない。

そういえば、アヤを屋根裏部屋に縛って解くのを忘れていた。

夕食には自力で脱出して私に怒鳴った。

犬よりもたちが悪い。

そして、魔人と喧嘩をして扉を破壊。

今日も教会は修復作業をしないといけないようだ。

 

○月◇日

おいしい紅茶の葉が届いたので淹れようと思ったけれど・・・。

今日も犬は元気で、元気すぎて・・・。

せっかく気に入っていたティーポットを壊されている事を知った。

前これを使ったのは一週間前。

その間は違うのを使っていましたが・・・。

さて、どうしたものでしょうか?

(何か書いたあとに消した後が残る)

 

○月■日

今日、何でも食べると思っていた犬が残した。

どうやらあれは嫌いらしい。どんなトラウマがあるのやら・・・

しかし、これは面白い発見をしたものだ。

どうやら、アヤも苦手のようだ。

今度かれらの誕生日の料理をあれを入れて出してみようか・・・。

ちょっと面白いかもしれない

 

 

パタンと一冊のノートを閉じる教会の主であるクロス。

『・・・いいのか?』

「大丈夫ですよ。全員の成長記録ですから。」

そう言うが、本当に成長記録なのだろうか?と首をかしげる魔人なのだった。

そして、ノートを本棚にしまう。そして、魔人ははじめて気付いたのだった。

このノートがNo.48と書かれていることに。

しかし、知らないままなのが一番だと言い聞かせ、おやすみと言う神父におやすみとかえすのだった。

 

 

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お裁縫

 

 

ビリッ

布が裂ける鈍い音がした。

「あー!!」

「うげっ!!」

人形の身体であるキールの腕がフェウスとのやり取りの合間に、破けてぶらりんと垂れ下がってしまった。

「どうしてくれるんだよっ!俺の腕!!」

残った腕でフェウスの耳を引っ張りながら訴える。

「そもそもお前が耳をひっぱるからだろ!」

「しょうがないだろ!引っ張りたくなるワカメなんだからさ!」

「ワカメ言うな、このチビ!」

「何だよ、自分が無駄にでかいからってさ!」

暴れる間に中の綿が少しずつ零れていく。

そこへ、偶然なのか故意なのか、通りかかったマリアネアがキールの腕に気付いた。

「ちょっと、駄目じゃない。なおさないで暴れちゃ!」

今は綿が大事な体の中身なのになくなったら死ぬかもしれないでしょ!」

といわれ、とりあえず暴れるのをやめたキール。

「フェウスさんもです。乱暴したら駄目でしょう!」

「・・・すいません。」

しゅんと耳も尾も垂れ下がる。

その光景を窓からしっかり神父は見ていたりする。

「とりあえず、なおさないとね・・・。」

マリアネアはキールを持ったまま建物の中へと入っていった。

部屋に入り、そう言えばと一応確認する。

「痛みは感じる?」

「全然。血が通ってない生じゃないからな。」

「じゃあ、大丈夫ね。」

少し辛そうで悲しそうで・・・不安定な表情を見せたが、すぐに顔を戻した。

もちろんキールは何故そんな顔をするのか気付いたが何も言わなかった。

裁縫箱を取り出し、同じ肌の色をした布を裁断し、腕の修復をした。

数分の内に、キールの腕は元通りになった。

「おー!動くー!!ありがとな。」

「どういたしまして。」

ぶんぶんと腕を振り回して状態を確認する。

「ばっちり。」

「それは良かったです。」

にっこりと見せる笑顔を失わせることはしたくないが、キールは一言付け足した。

「こうなったのは俺のせいであり、お前がそこまで気にすることはない。兄の「身体」のことと重なるのかもしれないけどな。」

「・・・そんなことは。」

「俺は俺だしお前はお前だ。だから、お前が俺は俺だと思ってくれたらそれでいいのさ。」

だから、細かい事は気にせず、その笑顔で迷える子羊救いなと言い残してキールはもう一度部屋を出てからお礼を言って去っていった。

「本当に、クウさんと同じようなことを言うのですね、キールさん。」

気にする自分が馬鹿みたいだ。

ここの生活に慣れたし、ここの住人達の状況も上辺だけは知っているつもりだ。

だけど、やはり気になってしまう。

裁縫箱をしまいながら、そうだと思いつく。

知らないから気になってしまうのだ。だから、聞けばいい。

話したくないこと、触れたくないこと以外なら、きっと話をしてくれるだろうから。

とりあえず、人形の生活で得したことでも聞こうかなと思いながらマリアネアは部屋を出た。

 




あとがき

◆眠り姫?
あまり登場することがなさそうな、ほとんど寝てる人。
一応口調は二パターンあったりする。
使い分けは知り合いと寝起きの際、それ以外の人の時と真面目な時
神父のことも含め、無理するとたちが悪いギベルドさんの二人の子守なミカゲさん
たぶん、彼大変
◆わんこ観察日記
その実態は、教会住人達の成長記録。(神父作)
かなりいろいろ書いているらしい。なので、全て知っていると言っても過言ではない・・・
だから、ある意味最強という称号を手に入れたのかも。
◆お裁縫
やはり、人形だから破れてしまうのですよ。フィウスさんの爪は鋭いですしね。
で、お裁縫すると言えば彼女ですが・・・。
また、いろいろ勝手に考えて悩む人です。
それ乗り越えたらその後怖いけどね。彼女は人を扱うのが上手いから。
神父同様に敵に回さないのが一番安全と思える人だと思う。