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◆神隠しは謎のままに 人気もなく、がらんと辺りは見渡しのいい道を歩く一つの人影。そこから聞こえる二つの声。 「なぁ、今日はどんな奴〜?」 「どんなんだろうねぇ?」 「聞いてこなかったのかよ。」 「とりあえず、村全体に感染して手のつけどころがないってところかな?」 白く細長い布で視界を覆いだらんと長い袖で見ている分にはかなり変で、危なっかしいと思える青年が歩いていた。 そこには、やはりどう見てももう一人いるとは思えない。だが、確かにそこにもう一人いるのだ。 ひょこっと肩に乗っていた人形が青年の頭へよじのぼる。 そして、その人形が言葉を話したのだ。 「やりがいのある奴がいるといいな♪」 もう楽しくてしょうがないという感じで話しかける人形。 「俺は早く家に帰りたいけどなぁ・・・。」 「なぬ?どうした相棒よ。」 「今日が何の日か覚えてないの?」 青年に問われ、少し考えた人形はぽんっと手をたたいた。 「そうだな。今日はマリアネアの誕生日だな。ご馳走だ!」 すでにこれから行う任務の楽しさよりも、今晩のご馳走の方が勝ったらしいその人形は、急がないとなとぺしぺしと青年の頭で叩く。 「さっさと片付けて、帰ろうぜ!」 「そうだねぇ。あ、見えてきたね。」 にやりと青年の口元が笑みを浮かべる。人形もまた、同じように笑みを見せた。 二人・・・一人と一匹はそのまま村へと入っていった。 そしてその日、村の住人が全ていなくなった。 そして、隣町では神隠しだと騒いだが、それ以降その隣町での神隠しは起こることはなく、次第に人々の記憶から消えていった。 今まで起こってきた神隠しも、隣町の住人が全て消えるという神隠しも、全ては謎のまま。 ただ、陽気な歌声が聞こえたと、あの日通りがかった者が言ったが、触らぬ神に祟りなしと、誰も触れなくなった。 ++++++++++ ◆仲はいいのか悪いのか・・・ 前髪で目が隠れ、陰になっていて顔全体が見えないためか、表情がよくわからない。 「おやおや、また何かしようとしているのですか、アヤ?」 クロスはこの教会にいるのがかなり嫌らしく、よく悪さをするために一応聞いてみた。 悪さといっても、悪魔の割には可愛いもので怖くはなく、気にせず放っておいているのだが・・・。 ふと、アヤの様子がおかしい事に気付いた。 「アヤ・・・?」 一歩近づくと、微妙に翼で浮いていたアヤの身体がふらーっと、前へ倒れた。 そして、床の上に落ちた。 『うむ・・・。倒れるとは珍しい事もあるものだな。』 クロスに話しかけるように、すうーっと背後から姿を見せた両腕。全体の姿は消して見せないそれが、アヤの身体を抱き上げた。 「水と薬の用意をしなくてはいけませんね。」 『うむ・・・。看病するのか?』 少し嫌そうに言う魔人にクロスは決まってるでしょう?と答えた。 『うむ・・・しかし・・・・・・わかった。』 まだ少し納得できないようであったが、アヤを抱き上げたまま、その両腕はクロスが進むままに続いた。何か言いたそうでありながらも、決して口には出さず、これといって何事もなかったかのように二人と両腕は廊下から姿を消した。 次の日の朝。 今日とてこの教会は静かな朝の礼拝を迎えられることはなかった。 「へっ、これぐらいで恩を売ったと思うなよ、馬鹿神父!」 「はいはい。わかってますよ。恩を売った覚え自体ありませんから。」 口が悪いが、一応、恩という言葉が出ているということは、彼なりにお礼のつもりである。 しかし、頭の固い魔人は言葉どおりに受け取ってしまう。 「貴様っ!主人に何という口をっ!」 「二人とも喧嘩はやめましょうね。やるなら外でどうぞ。」 そして、次の瞬間にはアヤは吹き飛ばされ、アヤが暗黒魔術を使う。 今日も賑やかな朝食の時間。これが、いつもの日常光景。 ++++++++++ 今日も変わらぬ空 窓枠に腰掛、ただぼんやりと空を眺めている青年がいた。 生憎外から見ている者は誰もいないため、危ないでしょうというような声はかからない。 「・・・用か?」 ずっと空を見上げていた青年が視線を扉の方へ向け、現れた教会の主の顔を見た。 「いえ。邪魔してしまいましたか?」 「・・・別に。」 静かな時間が流れる。青年は再び空を見上げ、神父は柔らかいソファに腰掛、紅茶を入れていた。 コポコポコポ・・・ 湯気が紅茶の香を漂わせる。 カチャ・・・ 神父は紅茶を入れたカップを持ち、青年の方へ差し出す。 「ミカゲも一杯いかがですか?」 用意されているものをわざわざいらないと断る理由もない。 窓枠から降り、にこにこと笑顔のまま差し出されるそのカップに手を伸ばす。 「いただく。」 「どうぞ。」 カップが青年へと届く。そして、一口飲んでから、再び青年は窓枠に腰掛けた。 今度はカップを持ったまま外を眺める。 「・・・相変わらず、神父殿の淹れるものはおいしいな。」 「ありがとうございます。」 神父の背後でうっすらと姿を見せている両腕がティーポッドを片付けていた。 その間、カチャカチャと両腕を縛っているであろう鎖が音をたてたが、それ以外の音はまったくなかった。 「今日は、賑やかな者達は外出中か?」 「まぁ、そうですね。アヤは今熱で動けないですし、フェイスとマリアネアには買い物を頼みましたし、クウとキールは仕事で出てますから。」 「そうか。」 青年は紅茶を飲みきり、呟いた。 「こんな静かな日もたまにはいいな。」 「そうですね。」 今日も空は青く、澄みきった晴れ模様。 |