| 終章 鈴の選んだ道
長い時間が経った気がした。鈴は決意した事を、彼等に告げた。少し前から決めていた、その事を。 「私は、静兄様を手にかけることは出来ない。兄が出来ない事を、私がする事は出来ない。」 唯一残った家族を、失いたくないのだ。 「あの刺青が、日々見る夢の中で教えてくれる。前世の私が、あの最古の呪の扱い方を思い出させる。私の前世の彼女だけが知る、手にかけずに静を止める方法を。」 きっと危険な事だという事はわかる。だが、誰も止めようとはしない。鈴は一度決めたことは必ず実行するという事を知っている。それだけの付き合いがある。 滝輝も、短い付き合いの中で、それを感じ取っていた。 「だから、私に協力してくれる?」 「仰せのままに。」 全員が蒼答えた。
部屋の外に一羽の烏がとまっていた。あの、狂い叫び飛んでいた烏であった。 「・・・。」 烏はその光景を見た後、どこかに飛び去った。主のもとへ戻る為に。 烏の主は只一人。だが、それは静ではない。同じであって、まったく別のもの。 「・・・さて、どうするつもりかね?」 静と鈴の行動を観察するかのように見るもの。その存在にまだ誰も気付いていない。 そう、少しずつ黒い陰に潜む闇もが動き始めた。 「・・・もう、後戻りは出来ない。失敗すれば、それは死。進めた以上は、止まっていては死が待つだけ。どうなっていくか、楽しみだね・・・。」 静と鈴が選んだ道を見守るもの。 「天上の神は何もしてくれない。だが、天下にいる神は助けてくれるよ。それ相応の返しをするのだから。それが、信頼と言う名の見えない絆の糸だからね。」
烏が鳴く。まだ、終わらないと鳴く。 烏は鳴き続ける。狂いながら鳴き続ける。 まだ、始まったばかりと。
黒い影が常に二人の兄妹の側に佇んでいた。 本人達も気付かない深いものがあることに、 まだ、誰も気付かない。 |