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異空扉の双守人
昔々のお話。 ある国では神が絶対の支配をする国で、その中に双子の神がいるとされ、兄は太陽で、妹は月の力を持つ神でした。 そして、誰かがその双子の神の物語を書いた。実話とされる物語を。 その物語では、誤解を受けて絶対神から神界を追放された。 双子が追放されて連れてこられた場所は誰も人や神のいない場所。世界から切り離された場所。 元々、太陽と月という自然で強い力を持って生まれた双子。 これが運命だったのかもしれない。神が双子を恐れたのかもしれない。 双子は、多くの異空へと繋がる扉の番人とさせられたのだった。 許可もなく、そして悪しき心を持つ者は通さず、無理に通るなら排除する。 心優しい妹はいつもそのたびに心を痛め、兄はかけてやる言葉が見つからずにいた。 許可があっても、悪しき心を持てば、判断すればすぐに排除。 許可がなくても、必死な思いがあり、通るべき者と判断すれば通す。 難しい役目を負ってしまった。 双子にしてみれば、誰も悪しきものはいない。そうさせるのは神や他の人間だと思っていた。 それから、双子はずっと扉を守る番人として、双守人と呼ばれながら現在も二人だけで過ごしているらしい。
そんな話を、昔ラーティンスにしてもらったなぁと、ふと思い出して顔がにやけるキャリーシャ。 物知りなラーティンスがいつも寝る前に話してくれた物語は、今でもたくさん覚えていて、自分をつくっていく大切なものである。 その中でも、この話は一番好きで一番悲しく思えた話だったと思う。もちろん、聞いた当時ではの話だ。 この話が実話なら、立派な配達屋になって、自分で手紙を書いて配達しに行くんだってはりきっていた事を思い出す。 いつの間にか、配達の仕事を覚えるので大変になって、出来たらほめてもらえてうれしかったりして、そっちに気が全部いっていたのか、だんだんと忘れていった物語。 「今でも、手紙を書こうと思ったら、届けられるかなぁ?」 自分は一人という孤独を知っている。 いくら双子で独りではなく二人だとしても、辛い使命を持ち、血の繋がるお互いの半身だけしかいない世界は寂しいだろう。 何より、二人とも性格がおとなしいからよけいにそう思う。 「ラーティンスなら、何か知ってるかな?」 一度、その双子に会ってみたいと思った。 あの二人なら、自分が掛けている何かを持っているような気もしたからだ。
その後、キャリーシャはラーティンスが仕事から戻ってきたのを見計らって、あの物語の事で頼んだ。一度だけでいいから、会いたいと。 すると、ラーティンスは少し困りながら、ミルディアドがいいというのなら、一度だけその扉のある場所へと連れて行ってあげると応えた。 早速、キャリーシャはミルディアドに言うと、速攻で駄目だと却下された。 だが、そこで諦めて良い子にしているキャリーシャではない。しつこく付きまとっていいという返事をもらえるまで付きまとい、そして言い続け、やっとそこまで言うのなら、一度だけ言っておいでと許可してくれた。 ありがとうと言って、ラーティンスに言えば、苦笑しながら約束だから行こうかと、何やら指で空中に模様のようなものを描く。 それはふわふわと漂う淡い光によって描かれていき、模様が完成した時、二人を包み込んで部屋から別の場所へと飛んだ。
そして、物語だけであったその場所へ、二人はやって来たのだった。
見れば、ふわふわと丸い青緑っぽい色の珠が、ふわふわと白い光を放ちながら浮いている。それをつんっと指でつつくと、ふにゃんとゆれる。 なんだか、面白い。 「扉は向こうだよ。」 ラーティンスは人差し指で方向を指す。そこには確かに、大きな扉があった。 黄色と薄く緑がかかった黄色の二色で塗られた扉。 近づけば近づくほど、大きいなと思う。 やはり、いろいろなものがここを通るので、一般常識で考えられる扉では駄目だし、ここは一般常識が通じるような場所ではないので、しょうがないと思っているのだが、驚いてしまう。 「…久しぶりですね、サー、ルー。相変わらずそうで、何よりですよ。」 ラーティンスは扉の前に立っている二つの人影に対して話しかける。 きっと、その二人こそこの扉を守る門番。双守人であろう。 「…珍しいわね。用もなくここへ来るなんて。それも、知らないお客を連れて。」 蒼で統一された月の形が先端にある杖を持つ少女が言う。 「最近は仕事すらないからね。暇だったから丁度よいけれどね。」 紅で統一された太陽の形が先端にある杖を持つ少年が言う。 物語通り、太陽の力を持つ兄と月の力を持つ妹ということだろう。 「名乗らないのは失礼よね。私は双守人の一人、月の守護者ルームナーン・アラーディアン。」 「双守人の一人、太陽の守護者サーシャンイール・アラーディアン。」 二人が名乗った事に対し、キャリーシャも反射的に名前を名乗った。 「話があったんでしょ?どうするの?」 「あ、そうだった。」 危うく目的を忘れかけていたキャリーシャは忘れる前にと、二人に聞きたい事を質問した。 「二人だけで、この何も無い寂しい場所でいて、寂しくないんですか?」 話を聞くたびに思っていた事。そして…。 「別に、何も問題はないわ。昔は寂しかったけど、サーがいるもの。」 「そうだな。それに、ラーティのような変わり者がたまに暇つぶしで来るからな。」 そうなんだと思う。やはり、どんだけ孤独を背負わされていたとしても、自分を支えてくれる人がいて、自分の存在を知って手を差し伸べてくれる人がいる。 「ラーティは力が強いから、自由にここへ来れるからね。」 それを聞いて、ふとおかしい事に気付いた。 そう言えば、あまり気にしていなかったが、自分より年上のはずのラーティンスは自分より成長が遅い。 その反面、持っている力は強く、それを隠そうとしている。 その理由は何なのか知らないが、今は知るときではないと思う。 「いつか、ラーティの事もミルの事も、全て明らかになるわ。」 まるで予言であるかのように言われた言葉。それがこの先起こるあの事だとは、今は気付かない。 「貴方は私達とは違って、いつもそばに居てくれて支えてくれるいい仲間がいるでしょ?」 その言葉の次に、どうしてそんな事を今も持っているのと続けているようだ。でも、なんだか吹っ切れて気がした。 裏切られたとしても、それはそれ。はじめから一線引いて人と接してはきっといけないのだろう。 無意識に自分の中へ入り込ませないためのライン。 きっと、この二人はそれに気付いただろう。だから、そう言ったのだろう。 「ありがとうございます。」 「何かの役に立てたようなら。」 「それに、久々で楽しかったからな。」 そろそろ帰った方がいいといいだす二人に、何かを察したラーティンスはもう戻ろうと催促する。 キャリーシャもそこまで馬鹿ではないから察しはつく。 「じゃぁ、またここにきてもいい?」 「今度は、自分の力で来れるようになったらね。いつでも歓迎よ?」 悪しき心を持たない純粋な子は。そして、誰かの為に思い、誰かの為に何かをしようとする思いがある貴方なら。
別れをして戻ってくれば、先ほどいた場所で、時間は少しも経っていない。 「…ラーティって、すごい人だったんだね…。」 今更ながら、再確認したという感じ。 「そこまでたいしたものじゃないけどね。ほら、今日はもう寝ないといけないよ?」 明日の仕事に差支えがあったら、きっとミルディアドは怒るだろうから。 今日はぐっすりと寝られそうな気がした。 久しぶりに、キャリーシャは熟睡して、寝顔も穏やかだった。
「…随分、いろいろと溜め込んでいたみたいですね。」 明るく振舞う反面、何かを戸惑う仕草をする子。それにラーティンスもミルディアドも気付いていた。 「まさか、何年も過ごしてきて、また独りの孤独に戻るのではないかという恐れがあったなんてね。」 「気をつけないといけないね。あの子は私達とは違うのだから。」 自分達は一度過ちを犯して闇に落とされた者。光の中で過ごす彼女と同じ場所にはきっと立てないだろう。 「彼女はあそこで独りだった。」 迷惑が掛かるから明るくふるまうが、いつか離れてしまう時が来たら、あの日と同じになって寂しいから、どこか遠慮していた。 「どうします?これから。」 「それはもちろん、彼女に伝えるしかないでしょう?私達は家族で、キャリーシャの望む限り一緒にいますよと。」 「そうですね。」
私達も部屋へ戻りますかといい、隣のリアルドが寝ているのを確認して就寝に着いた。
明日、皆が笑顔でありますように。
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