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家に帰ってきたとたん・・・ 「鬼は外―!福は内―!」 という掛け声と共に、何かが自分に目掛けて飛んできた 「いたっ、ちょ、何するんだよ、リーシャ!!」 リアルドに直撃した何かとは、小さな豆だった そして、今日は節分だったなと思い出した 「あ、リド。お帰り。・・・あれ?ミルドは?」 キャリーシャからすれば、狙ったのはミルディアド なのに、当たったのはリアルド どうしてだろうと、豆を大量に持ったまま首をかしげるのだった 豆まきをしましょ 痛いとぶつぶつ言いながら仕事をしているリアルド。 「ミルドが気付いてわざわざ避けるからいけないんでしょ?」 「ははは。私だって当たりたくはないよ。リーシャは容赦なく投げてくれるからね。」 といいつつ、そのことを教えたのは言っている張本人なのだが。 「だって。ミルドはすぐに逃げるから、帰ってきたところを狙うのが一番いいよってラースが言うから。」 「・・・ラース。」 「ごめんね。・・・でも、今年の厄災が祓われたと思ったら、よいと思わない?」 「・・・。」 むすっとしているリアルドに、困ったなぁと苦笑するラーティンス。 だけど、すぐに良い事を思いついた。 「せっかくだし、お勉強しますか。」 そう誰も聞こえない声でつぶやいて、部屋から出て行ったラーティンス。 ミルディアドは今度は何を企むんだと思いながら、企みが実行されるまでは黙ってることにした。 仕事をしないと、それはそれで彼が怒るからだ。 局長のわりには、ラーティンスの発言や力も強いのは気のせいだろうかとたまにキャリーシャやリアルドは思う。 そして、影の支配者だなと思って考えをやめる。そんなこと、二人は知らないが。 仕事が切りの良いところに来たときだった。 「出かけるよ。」 と、リアルドとキャリーシャに声をかけるラーティンス。いつの間にか部屋に戻ってきたようだ。 「どこに行っていたんだい?」 「『黒猫』さんと連絡とっていたんですよ。では、ちょっと出てきますね。・・・もちろん、仕事はちゃんとしておいて下さいね?」 そう言って、ミルディアドを残してラーティンスはエルシャンドとキャリーシャとリアルドをつれてその場から姿を消した。 そう、消えたのだ。ラーティンスが移動の呪を使って。 「はぁ。これが仕返しですか?」 残った仕事は一人分ではない。これを片付けておけというのだ。 「大人気なかったと思いますが・・・。」 これはこれでひどいですねと言いながら、立ち上がって一服する為にキッチンへと向かった。 珈琲を入れて、これを飲み終わったら仕事を片付けていこうと思いながら。 「到着。・・・さて。・・・あ、急に呼んですみませんでした。」 「いえいえ。そんなことありませんよ。」 現れた黒猫を見て、首をかしげる二人。 「彼、紫音さんです。ほら、以前お届けの際に。」 「あ、あの人。・・・でも、猫?」 確か、来て仕事をはじめてすぐに、紫音には会った。しかし、その時は確か人の姿だったはず。 「ちょっといろいろありましてね。今猫として生活中なんです。ま、それは込み入った話になるので置いておいてね。」 行きますよと、二人に声をかけて、ラーティンスは黒猫が進む方向へと向かう。 そこには穴が開いており、別の世界へ行く為のものだと二人にはわかった。 これからさらに、どこかへ向かうようだ。 「逸れないように、ついてきてね。」 それぞれの手を二人の手と繋いで、勢いよく穴の中に飛び降りる。 「ちょっ!」 「ひゃわ!」 二人の声があがったが、気にせず落ちていく。 そして、出たところは、たまに見た事があるような町並みがある世界だった。 「あれ。ここって鏡衣智さんの世界と同じ?」 「まぁ、そういう系列ではありますね。」 「ここですよ。」 来たところは、小さな幼稚園だった。 黒猫は塀の上に昇り、中へ入って行った。それに続くように三人も中に入った。 「・・・不法侵入?」 「・・・見つかったらどうするんだよ。」 「大丈夫。その時は消えちゃえば証拠は残らないから。」 そういう問題じゃないと思うのだが、まぁ、いいかと二人は着いていく。 校舎の裏側には、同様にあまり大きくない体育館があった。その中から、話し声がする。 前を歩く二人が、静かにねと言う。 そして、黒猫は体育館の周りにある小さな柱や屋根を使って上へと登る。 二人は上にあがるのかと思っていたら、ラーティンスに魔法で運ばれた。 そして、開いている窓の側に降りた。ちょうど、屋根があるその場所に。だけど、中の人達からは見えないそこ。 「皆さん。今日は節分です。だから、豆まきをしたいと思います。」 どうやら、今から豆まきをするらしい。元気なはーいという声が聞こえてくる。 「ですが、まずは皆さんに節分について、簡単にお話したいと思います。」 と、先生らしい女の人が説明していく。 節分とは、立春、立夏、立秋、立冬の前日のことを言うのだが、春の節分が最も重要で、昨年の邪気を全て祓ってしまう為に豆まきをします。 「皆さんは立春や立夏の事は前にも教えましたね?覚えてますか?」 その問いに半分の子が手をあげる。 すると、今度は再びそこから説明をはじめる。 だが、その間に紫音が邪気を祓う追儺について説明してくれた。 「文武天皇という人が治める時代に、疫病がはやり、多くの百姓が命を落とした。今ほど医学は発達していないし、原因はわからなかった。昔は疫病はお祓いとかそういったことでなくなるように願った。それしか、人々には出来なかった。そして、『土牛』というものを使って、払ったと言われていて、それが追儺の始まりと言われている。土牛とは、中国と言う国の言葉を参考にしてやられたもので、この世界でかつていたとされる陰陽師によってやり方が整えられたんだ。」 「そうなんだ。」 「ふーん。」 知らないことを知るのは嫌いではない二人は、紫音の説明を大人しく聞いている。 下にいる子ども達も、先生の話す言葉を理解しているのかはわからないが、大人しく聞いている。 「あまり深く説明するとややこしくなるから言わないけれど。・・・昔から丑寅の方角と呼ばれる方位、つまり北東が鬼門と呼ばれてね。そこは昔から邪気が溜まりやすいと言われているんだ。ほら、風習で北東に入り口はまりよくないとか言うでしょう?ま、それも長くなるからおいておこう。豆まきに関してだけど、豆が鬼をやっつける道具であると同時に、豆が鬼自身と言うこともあって、それを投げつける事でやっつけるということになるのです。だから、豆が使われるのです。当たったら、痛いでしょう?」 「痛かった。」 「だから、ごめんってば。」 また、あの話に戻る二人。 「豆まきもうしてきたのですか?」 「投げられた。」 「なら、昨年の厄災は祓われましたね。」 黒猫が笑っている。まったく、ラーティンスと同じ事をいうと、リアルドはむっとする。 「他にも、自分の年だけ豆を食べたらよいと言います。そうすると、一年病気にならないそうです。」 ちょうど、それと同じ事を下で子ども達に先生が説明する。 だから、今のうちに鬼をやっつける力を着ける為に年の数だけ食べましょうと豆を配っていた。 当たると痛い豆も、炒ってしまえばそこまで硬くはなく、美味しいものだ。 そして、食べ終わった頃、鬼にぶつける豆を子ども達に配り、鬼役をすることになった人が入ってきた。 子ども達は怖がるどこから、面白がって鬼目掛けて豆を投げつけている。 「リーシャの仲間がいっぱいいるぞ。」 「そんなことないよ。」 投げるのを結構楽しんでいたキャリーシャはあまり反論できなかったけれど、言い返した。 実は、去年も思い切り投げていた。 「だから、これからは少し手加減して投げて下さいね。」 「はーい。」 子どもの楽しそうな声が下から聞こえる。 「そうそう。鬼は外福は内と言いますが、場所によっては鬼は内福も内とも言うんですよ。」 「そうなんですか?」 「ええ。ま、一般的には鬼は外福は内というのが多いですけれどね。」 しばらく見学したのち、帰ろうかとラーティンスが言う。 「帰ったらまき寿司食べようね。」 「まき寿司?」 「そう言えば、去年もだったな。」 その二人の問いに、黒猫は答えてくれた。 「恵方の方を剥いて、ラッパを吹くように上向きに黙って一本太巻きを丸かじりすると、一年よいことがあるという、ある場所での風習ですよ。配達屋は、結構行事によって仕事も関わってくるので、いろいろ行われていますけれど、もともとはある場所での風習が広まったらしいです。恵方とは、その年その年に才徳神がいるとされる方角のことですよ。今年は試してみたらどうですか?」 この二人だったら、黙って食べないだろうし、方角など気にしていなかっただろうから。 「黙って食べるの?」 「リーシャには無理だな。」 「そんなことないよ。」 「喧嘩はやめようね。ほら、帰るよ。今日は付き合ってくれてありがとうね、紫音さん。」 「こちらこそ、楽しい時間を過ごせましたよ。」 三人が消えるのを見送る黒い猫。 「さて。私も魅音に会いに行きましょうか。」 そうして、猫もその場から立ち去った。 「お帰り。」 「ただいま。」 「買ってきてくれたのかい?」 「ついでですしね。」 仕事は片付きましたかと言われて、ぎくっとするミルディアド。 「また、ですか。」 はぁとため息をつくラーティンス。 「ま、あとでやりましょう。とにかく、夕食の用意をしましょう。」 机の上を片付けて、まき寿司を皿に並べて、机を囲んでそれを食べる。 二人の中ではすっかり黙って恵方を向いて食べるということを忘れている。 まぁ、楽しく食べれたから、福はやってくるだろう。 「でも、どうして紫音さん呼んだの?」 「俺も思った。」 そんな二人の疑問に答えるラーティンス。 「あの場所を探してくれるように頼んだから。道案内だよ。」 「そうなんだ。」 確かに、たくさんの世界が交差する中、それぞれの世界の地理を全て把握しているわけではないのだから、詳しい者に案内してもらうのが一番だろう。 「これで、一つ勉強した事だし。それに、休みもとったから、明日は今日の分も頑張ろうね。」 そういって、二人をこの部屋から追い出した。きっと、順番にお風呂に入ってそのまま就寝するだろう。 「さて。仕事片付けますか。」 二人が今日するはずだった仕事に手を伸ばす。 「ミルドは逃げないで下さいね。」 「わかってますよ。」 こうして、二人は仕事を再開し、五時間後には片付けたのだった。 |