今年もやってきた。行司の中で一番大変な日。

そう、お正月だ。

ここ、配達屋には穏やかな日常というお正月は存在しない。

毎年、年末から年賀状というものの仕分けと年明けから配達で大忙しだ。

こういう時、サンタがうらやましいと思う。

サンタが忙しいのはクリスマスだけなのだから。

そう言えば、一度だけ会ったあのサンタの二人組みはいったい、どうしているんだろうか。

 

 

 

 番外編 友人からの新年の挨拶

 

 

 

年明け初日は、いつもより早く起きて早く仕事に取り掛かる。

そうでもしなければ、間に合わないのだ。

「ずるい。ずるい。絶対ずるい。」

今年も毎年続けて慣れている、そして忙しい事を良く知っているが、やはり気に入らない。

「ずるい〜!!お餅食べる時間もない〜!!」

配達屋からそんな叫び声が上がったが、生憎、ここ周辺には民家はないので、聞こえることはない。

「ったく、うるせーよ。俺だって、毎年こうじゃなきゃ、ゆっくりしたいよ。」

ずるいと叫ぶキャリーシャに、何度もその叫びを聞いているリアルドはだんだん嫌になっていた。

「お願いだから、もう少しでしょ?この十日頑張れば乗り切ればいいんだからさぁ。」

お疲れ気味の二人を慰めるのは同い年ぐらいに見えるラーティンスだった。

「ほら、行こうよ。そろそろ行かないと、配りきれないでしょ?」

普段ならば、今日中に届ければいい手紙や葉書、荷物は少ない。だが、クリスマスや夏、そして正月はかなり多い。

「では、行ってきます!」

キャリーシャはやけになって、奥にいるミルディアドにいつものように、だが、挨拶は叫んで出て行った。リアルドもまた、追いかけるように出て行った。

出て行った二人の様子を見て、苦笑するラーティンス。少し複雑なミルディアド。

「あれって、反抗期なんだろうか…?」

いつもは挨拶をしていってくれるリアルドが今日はしていかなかった。キャリーシャにいたっては、投げやりに叫んでいた。

「…考えすぎですよ。」

どんどん親バカになっていくんだなと、ミルディアドを知っている者にとっては、何とも言えないだろう。そう、本当の彼を知っている者ならば、誰がこの姿を想像できただろう。

ラーティンスはこの変化に少し喜びを覚えながらも、いつか崩れてしまう事を予想してしまい、何かが胸に突き刺さっている。何処かで歯止めがきいて、あの二人とも接している。

そしていつか、あの二人も知る事になるだろう。

ミルディアドと自分、そしてあの日の出来事を。

はぁとため息つくミルディアドに、ラーティンスは仕事へ行ってきますと行って、出て行った。いってらっしゃいという言葉を聞く前に、出て行った。

 

空がゆがみ、人影が一つ、そして小さな影が一つ。

「さって、次はっと。」

「う…、ミルディアドからシャルド…宛…なの…。後、前の仕事かで助けられたお礼じゃないかな。ナディリアさん宛なの。」

なんだか、恐ろしいものを引いてしまった感じで、少しびくびくするエルシャンド。

「へぇ。ミルディアド、出したんだ。」

まじまじと宛先と裏の言葉を見て、あの二人らしいかもねと、苦笑する。

「さっさと届けますか。」

ラーティンスは急降下して、砂漠の真ん中にぽつんとある集落へと向かった。

着いた先では、お待ちしていましたと、ナディリアが迎えてくれた。これでは、届ける意味があるのかよくわからない。

まぁいいかと思いながら、ラーティンスは通されるまま中へと入った。

中では、何かの資料に目を通しているシャルドがいた。

「こんにちは、お久しぶりです。」

「お、来たな。待ってたんだ。」

そういって、懐から手紙を一通取り出した。

「悪いが、これを今日中に届けてやってほしいんだ。」

渡されてなんだろうと宛先を見て、苦笑する。まさか、シャルドがねと。

「あ、これが今日の配達分です。」

「ああ。置いといてくれ。じゃ、な。それ、頼んだぞ。」

そういって、もう変えれと言わんばかりに手で追い払うように振り払って見せた。

まったく、なんだかんだ言っても、あの人は良い人なのだ。

ラーティンスは戻ってからでも、今日中だから問題ないですねと、手紙を大事にしまって、残りの配達の為に飛んだ。

 

 

ただいまと、戻ってみると、へとへとになって入り口で座り込んでいる二人を見つけた。

「もう、何やってるの?それじゃぁ、風邪引くよ?明日は休みでも、治りきらないよ。」

そういって、二人を無理やり起して、奥へと連れて行く。

そこで、そうだと思い出して、大事にしまっておいた封筒を取り出して、二人に差し出した。

もちろん、二人は何と言う感じで首を傾げたが、相手の名前を見て、疲れも吹っ飛んだのか、かなり驚いて固まっていた。

そう、宛先はキャリーシャとリアルド。差出人は数年前にここへやって来た二人のサンタの兄妹。

二人は封筒をはさみで切って、中を見た。

そこには、新年の挨拶と二人からのメッセージが書いてあった。

そう、二人はここ数年の働きで、一人前から上級へと進級していたのだ。

自分の事のように喜ぶキャリーシャ。

そんな二人からこっそりと離れて、ミルディアドにお茶を入れて手渡すと、全てお見通しの如く、いつ来るんだと聞いてきた。

「明日、だそうですよ。こちらが休みだから、でしょうね。進級したから、下手に雑用の仕事がないから、暇を作ってここへ来る事が可能になったみたいですね。」

そういって、食べますかと、クッキーを一枚差し出す。ミルディアドはそれを受け取って、明日は休みになりそうにないなと思いながら、夕食はどうしようかと考えた。

 

今年も忙しく年明けをしたが、懐かしい友人の訪問で、今まで以上に楽しい年明けになった。

キャリーシャは来年もとしっかりと約束をつけて、二人のサンタは帰って行った。

 

今年も良い年になりますように。誰もが願い、そしてつぶやいた。

 

 

 <END>

 


     あとがき

  クリスマスに続き、お正月編。そして、あの日より少し成長して、再会した人達です。
  相変わらず、彼等は忙しく働いております。今の時期は本当に忙しいと思います。
  友人がそこでバイトで大変だと言っていましたし。私はやった事がないので何とも言えないのですがね。
  近々、本編では動きが出てきて、仕事どころではなくなるかもしれないという…。
  なので、番外編では楽しく行こうとこの結果。
  皆様に楽しんでいただけるかどうか、心配ですが、とにかく、今年もよろしくお願いします。
  今年はこれの本編を一つ二つ書き上げる予定です。予定…クリアできると良いのですが…。

  心を込めて、届けましょう。
  一つ一つ、この中に込められた思いを。しっかり逃さずに、届けましょう。
  それが私達、配達屋の仕事…。

  本編で会える事を願って・・・。



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