|
京はいつものように館まで帰ってきて、気配を殺したまま、扉に手をかけて入った。 「・・・只今、帰りましたよ。」 いつものように同じ言葉をかけて、魅琴と依頼人に任務を終えてきた事を知らせる。そう、いつもと同じはずだった。 「もう、何をやっていたの?!実行時刻から何分経っていると思っているの?!」 「そうですよ。警察では実行時刻になったと同時に獲物は取られてしまったと言って、まだ遠くには行っていない、そう言って捜査で走り回っているにもかかわらず、いくらなんでも・・・。」 京は『あれ』と言う感じで時計を見やる。時刻は実行時刻に指定した時間より一時間以上経っていた。 闇野との時間で、かなり時間がくるってしまっていたようだ。 「で、任務は成功だったわけ?」 「ええ、少々厄介な方がいらっしゃいましたけどね・・・。」 その言葉で、魅琴は何が起こっていたかを理解した。 「いったい何があったんですか?」 「別に、何もありませんよ。はいどうぞ、これが依頼の品です。」 話をそらすように今回の仕事で取ってきた獲物を取り出して渡す。 「あ・・・。」 「間違いはないかだけ、確認しておいて下さい。それが本物かどうかわかるのは、あなた自身だけですから・・・。」 意味がわからないと首を傾ける学だったが、何かに反応するように目を石に向けた。 「・・・どういう事でしょうか・・・。」 「何かあったということは、それがあんたの持ち物だと証明する事が出来たのではないのですか?」 「ただ、何か痺れるようなものが身体に走っただけで・・・。」 「それが、石が貴方を認めたという事にはならないのですか?」 今思うと、学はこの意思に関してあまりにも無知すぎた。 「あの、知っていたら教えて下さい。これの事を・・・。」 この人は祖母から聞いて知っている。だから、仕事も彼に頼むようにメッセージを残していた。学はそう確信していた。 だが、この人は確実に知っているとわかった。 「・・・やはり、貴方はあの人の孫ですね。私が伝言者として確信しているのですから。 学の目を見て、学が何を言いたいのか理解した京は魅琴に何かを取ってくるようにと指示して、あの席に座った。 「さぁ、お話しましょう。伝言者が今は亡き人からの真実を貴方に継承させる為に。」 夜はまだまだ長い。
客の気配のないこの館に一人の訪問者が現れた。 「いらっしゃい。」 「始めまして、大路 魅琴さん。和島 京さんはいるかしら?」 初対面のはずだが、真名を何故か知っていて、だけど、警戒するに値するような気配はなく、彼女、冨倉 璃那と私達は出会った。 それから何十年と経過し、自分達と違って彼女はたとえ魔女と言われる血族でも歳を取り、今では孫までいる始末。 「あのね、京ちゃん・・・。私はあとそう長くないと思うの。いえ、わかるのよ。もってあと10年ちょっとでしょうね。 「それはそれは・・・。貴方の願いを踏みにじってしまわれたのですか。神もいけない人ですね。」 京は頼みがあるのでしょう?聞きますよといいながら、冗談の笑みをなくして真剣に向かい合った。 「実は、この数年の間に、これ、この魔女の宝石が外に出るの。 魔女の予言は真実。彼女の言う通り、数年の間にあの石は行方をくらました。 だが、京は彼女の約束通り、石を見張った。今誰の手にどのような状態であるかを監視しつづけた。
「そして、貴方が現れたわけですよ。」 「それで、私は貴方の目にとまって依頼を受けてくださったわけですね。」 その時、ふと思った事がそのまま口に出てしまった。 「もし、私がここへ来なかった場合はどうしたんですか?」 「その時はその時。貴方が亡くなるまで、『約束』が続いているので、監視を続けておきますよ。」
そう言い、その石の説明をしましょうと、石に手を沿えて話し始めた。 「まずは、石に自分が主として認めてもらわなければいけないのです。」 「石に認めてもらう?」 どうも意味がわからないと首を傾げる。 「石は認めた相手に対しては何らかの反応を示します。 そして、認められたら後継者として契約の名を石に記憶させる為に儀式をしなければならないと京は言った。 「ですから、私が契約の証人となりましょう。」 そう言って、腰を挙げ、ついてくるように言った。 |