序章 裏通りの幻和館 店が建ち並び、商売人たちと客、そして忙しく仕事をする為に移動する者達。賑やかな町のこの道。毎日日の光を浴びて、隠し事などないような店が建ち並ぶ道。 この道に、一本だけ、住宅街へと続かず、別の場所に続く道があった。人はそれを、外れた裏の入りぶちと呼ぶ。まぁ、その名前の通りなだけに、誰も否定はしない。だが、近付く者はほとんどいない。 なぜならば、そこから先はここが表通りならば、裏通りと呼ばれる場所だからだ。もちろん、ここでは本名を名乗らない。店の者も客も。だから、お互いが詳しく調べようとしなければ、その偽りの名前だけの付き合いが出来る。 第一に、ここで店を構えている人間の素性など、調べてもわかるわけがないが、客にとっては、本名が知られる事を拒みたい事もあるので、便利なようだ。 そう、ここは人が人に言えないような隠し事を持ち込む場所。そこで商売する者達も本名を名乗らないという時点でまともな奴とは認識しにくい。 主に、占術師や傭兵がいて、依頼を受けては占ったり、ガードになったりする。払う金額も、その仕事内容によって変わる。基本的にはここの商売人たちは気まぐれだった。だいたいはその日その時の気分だからだ。 その一角に、洋館のようで、和や中といった物が混じっている小さな館があった。『幻和館』、これがこの店の名前。 和の小物から、洋や中のガラス細工や刀や剣、装飾品など、様様な物を売っている店。そして、何でも、内容によって、というか、店の主人の気まぐれで仕事も引き受けてくれる。 店の主人は、『いしま』と名乗っていて、見た目は10歳ぐらいの子供だというのに、中身は絶対に10歳ぐらいではないように思えるのだ。あの目が、客を見透かして、見た目の年齢とあわないのだ。 ここには、主人のいしまの他に、手伝いのみとと名乗る見た目は主人と同い年ぐらいの少女がいる。それと、明るい笑顔で出迎えてくれる同い年ぐらいの少年、風見がいる。 この三人が、幻和館を運営しているメンバーである。よく、情報屋のロンと名乗る男の出入りもあるが、それ以外はたまに客が来る程度で、ほとんど静かな館だった。 そんな館に、珍しく、客がやって来た。話をしに来るロン以外の、いたって普通の青年がやって来たのだ。 |