真実を知ったところで、これからどう行動するのか。

その問いにすぐには答えない四人。それもしょうがないかもしれないと思い苦笑をもらしつつ、優しいお父さんのような笑顔で話しかけるアヴィリー。

「キサはライシュの事。ルウイはりおの事。二人が知らなかったのはその二人と蒼い鳥の繋がり。」

欠片を拾い集めても、そろわなければ答えへ導く事は出来ない。答えがわかったとしても、間違いなくそれが答えだと言い切る事は出来ないあやふやで不安定なもの。

「どうしたいか。『りお』も『蒼い鳥』も互いを探し続けている。『蒼い鳥』の方は見つけたみたいだがな。」

蒼い鳥は見つけた。だが、りおはまだ気付いていない。

だから、存在を認められずに戸惑っている蒼い鳥は今、鳴かない。

あの唄を歌う事は出来ない。それを可能にするのは、『りお』の存在だけ。ライシュでも、きっと唄う事は出来ないだろう。

好きになった人と何でも話し合えて無条件で信頼しあえて支えあえる相手とは、相手に対する思いや絆の深さが違う。

簡単なようで難しいもの。それが、人の気持ち。

かつて、キサ達も経験してきたそれ。辛く逃げ出したい事もあったが、逃げずに立ち向かう事にした。逃げたからといっても、ここに来てから立ち向かうようになった者もいる。

「どうするにせよ、まずは『りお』を探して来ないといけない。話はそこから。」

そう行って、アヴィリーは四人が問い返す前に部屋から出て行った。






     蒼い鳥の運ぶもの (後編)






あの二人は、無事に再会を果たせたのだろうか。

上から仕事で呼び出され、そのために人の世へと借り出された。

そして、思い出すのは指令の蒼い鳥。人の世に出た事であの少女の事も思い出す。キサが拾ってきた少女と同じ輝きを持つ少女。

強い思いが引き起こしたのだろうか、少女は悪魔として再び戻ってきた。

蒼い鳥は、自分が上に頼み込んで器を与え、夢の世界を自由に飛ぶ許可を与えてもらった。

あとは、少女が『少女』に気付くだけ。そうしないと、『少女』は消えてしまう。

今頃はキサ達が指令で動いている事だろう。そして、二人の少女と出会い、自分との関わりを知る事だろう。

自分が話さない過去の欠片。

そもそも、ドリーム・キーパーに所属する五人にはまともな過去がない。

そう、暗い、そして辛く厳しい過去。楽しいと思えないような記憶が多い。

そんな中に見出したものもあるが、それは本当に小さく些細な事。結局は持つ力によって人の世では暮らす事が困難になった者の集まり。

つまり、はみ出し者の集まりなのだ。

はみ出し者同士だからこそ、わかるものもある。共有しあえるものもあり、理解し支え合える。あの二人もまた、そうなのだろう。

人の世で過ごしていく中、出会えた本当の友達という大切な存在。

自分もまた、キサ達の存在に助けられてきた身。だからこそ、よくわかるというものだ。

だから、自然と手を差し伸べて助けようとしていた。見捨てる事は出来ないから。

だけど、夢管理局へ来るまで、キサ達と出会う前の自分なら、間違いなく生きる為にまわりと下手に関わらず見捨てていた事だろう。

そんな過去の自分から簡単にそう像出来てしまう事に苦笑するライシュ。

はやく、この件を片付けて夢管理局へ戻れたらいいなと考えた。

そして、あの二人を祝福してあげようと考えた。二人の思い出のこの品を渡して。

彼が手に持つそれは、かつて二人が互いへ贈り合ったプレゼントだった。









「…まずは、あの二人の再会へ導くべきですね。」

黙り続けた四人だったが、このままでは行動に移せないと考え、イオンがまず沈黙をやぶった。

イオンの言葉に、うなずきあう他の三人。黙っている間に、ずっと考えていた事。それは、同じだったから、異議はない。

今回はリーダーぬきになる事は予想が出来る事。関わっているものが再び干渉する事は許されないから。それで思い出しても、それは無効になるからという、上からの条件。

だから、今回彼だけ別行動で上から依頼があったのだろう。

ライシュもまた、わかっていたからこそ、そして二人の絆を信じようとして、自分の仕事をする為に『人の世』へと出かけたのだろう。

「はじめから、ライシュは気付いてたんだね。」

蒼い鳥の事を上に持ちかけて頼んだのは間違いなく彼だろう。もし、何かあった時は絶対に手は出さないと言う条件でもだされて、それに承諾して今があるのだろう。

「鳥はここにいるから。あとは、あの子だけですね。」

今はどこにいるのかつかめない悪魔の少女。

「結界にも触れませんし。」

「鳥や木に聞いても残ってないし。」

はぁと困るイオンとキサ。

「とにかく、昨日の場所へ行ってみましょう。」

「そうだな。じっとしてるのもあれだしな。」

立ち上がるルウイに続いて、ぴょんっと座っていた台から飛び降りて行く気満々のクレシス。

やっと、彼等は彼等らしさを取り戻していた。



『 どんな事があっても、迷わず進め。それは、答えであって違うものだから。最善の方法も答えも、進み続ければ自ずと見つかるものだ。焦らずいつもの自分で、自分が出来る事をして前へ進め。』



いつだったか、ライシュが言っていた言葉を、四人とも思い出していた。








カツカツカツ…



廊下を歩く靴音が響く。

その音は、ある部屋の前で止まり、扉をノックする音が響き、中から入れと言う声を確認した人物は中へと入った。

「…約束の時が来たようだな。」

「…ええ。彼がはじめてこちらに要求してきた事。きっと、決着はつきます。」

「だと、いいが…。」

部屋の主が相手を見ずに、今は別任務で『人の世』へ行っている他人を寄せ付けない少年の事を考えていた。

だが、部屋に入ってきた相手もまた、同じように考えていた。

「ちょうど今日だったな…。」

「だからきっと、今日で終わりですよ。」

そうかもしれんなという相手に、そうですよと言う男。

「だから彼も、出かけたんだと思いますよ。…本当は、彼が一番今回の件に関わりたかったはずですから。」

それを、はずれるように条件付けをしたのは目の前の主。

この、夢世界にある夢管理局全てを支配し、情報を持つ最高責任者のマスターと呼ばれる男。

まだ、若い男で、部下の男と同い年ぐらいに見られる。

実際、二人は同い年であった。かつてのよき相棒で悪友とも呼ばれる関係だったのだ。

「あの二人が互いを見つけられた時、いったいどうなると思うかね、アヴィリー…。」

「それは、なってからしかわかりませんよ。答えはいくつもこの世界にはありますから。どれが正しいかなんて、決める事はできませんから。」

「確かに、そうだ。」

自分もかつて、二つの選択を強いられたが、結局はその二つとは違う選択肢を選び、今がある。

そしれ彼、アヴィリーもまた同じ経験があった。

それを思い出させたのは、まだ幼い少年だった。

悪魔に成り果ててしまった優しい少女と歌う事が好きな為に代償として本来の形を失った少女。

自分を追い詰めて悪魔となった少女は今もあの少女の唄を探している。

唄を取られては少女に見つけてもらえないと考えた少女は唄の変わりに本来の形を失って今を生きる。

互いに大切だからこそ選んだ事が、少しずつ距離を作ってしまった。

だが、それはまだ修正可能な段階である。

二人の思いの強さを知っている少年は信じてここを去った。

信頼できる仲間が、必ず二人を導いてくれると信じた事もあるかもしれない。

「あの五人は、本当にいろいろな物を抱えている反面、人の心がよくわかっていますよ。」

「そうだな。…きっと、アヴィリー、お前さんだってしっかりと受け止めているさ。」

「マスターこそ、言えるでしょう?」

そうだなと、互い笑みを浮かべ、彼等が仕事を終わらせる事が出来るように願い、そして成長を喜びながら、少し寂しさを覚えていた。








キサは肩に蒼い鳥を乗せて、イオンとルウイとあの森を歩いていた。

今回クレシスは連絡係と『代わり』の役を頼んで部屋に置いてきた。

『代わり』とは、言葉の通り代わる事で、もし手違いや不注意で戻れないような場所へ飛ばされても、持っているこの石と共鳴するクレシスの石で出口を見つけ、出られるようにするための事。

代わるといってもクレシスと代わるのではなく、あらかじめイオンがクレシスに代わりの人形を置いていくから、それを飛ばすようにして、確実にキサ達を外へ出られるようにするものである。

「大人しくしてるといいのですが…。」

「任務は遊びではない事ぐらい、彼だってわかっているはずだから、そこまで気にする事じゃないわ。気にしすぎて注意を怠らないで頂戴よ、イオン。」

「わかっている。」

まだまだ腕白で元気な盛りの少年である。今までの戦闘経験から、大人しくしているようには思えないイオン。

ルウイもまた、その事は重々承知の上だが、必要な任務ならこなそうと努力をする彼を知っているから、大丈夫だと信じている。しかし、やはり不安は完全には拭い取られる事はない。

やはり、二人とも今までの経験からして、心配が多少なりとあるのだ。だから、自然とどうしてるだろうかと、気を張りながら怒りといった感情を含ませながら進んでいく。

そんなぴりぴりとした緊張感を漂わせる二人を見て、影でこっそりとはぁとため息をつくキサ。

二人はいつか身体を壊すと思わない?と、蒼い鳥に問いかける。その問いに何?と言う感じで首をかしげるのに、わかんないよねと、またため息を吐く。

もし、蒼い鳥が幸せを運んできてくれるというのなら、私はみんなの休息や笑顔を与えてほしいと思う。それが、キサにとっての最高の幸せだからだ。

キサは昔、大切な人を最後の最後まで辛く悲しませ、彼を壊してしまった。

だからだろう。もう誰も悲しませたり辛い事を溜め込まないでほしいと思う。

「ねぇ。物語の蒼い鳥は幸せを運ぶけど、貴女は何を運んでくれるの?」



その問いの答えが出るのはもう少し先。







つい昨日に黒い闇と遭遇した場所へ来たキサ達は、再びかすかに残っている痕跡から、あの『空間』へと飛んだ。

そして、キサ達は持てる力を使い、とうとう『りお』を見つけたのだ。

もちろん、見つけた時はりおは目を見開いてどうしているのという感じで驚いていた。

「私達はね、ある任務がまわってきて、それに対処するためにここに来たの。」

キサの言葉にまったく意味がわからないと、首をかしげるりお。

「この『蒼い鳥』を運ばないといけないの。また、綺麗な唄を歌えるようにするために。」

「どういうこと?」

この蒼い鳥がいったいどうしたのかと、鳥籠に入れられた蒼い鳥を見るりお。

ルウイは、忘れられた鳥は消えるのが受け入れるべき運命だから、生きる為に、忘れてしまった唄を取り戻さないといけないことを説明して、鳥籠から蒼い鳥を外へと出した。

「今日はね、特別な日なんだよ。」

そう、今日はりおと蒼い鳥が離れ離れになった日。互いが人とは別の物となった日。

そして、ライシュと出会って再び出会うためのチャンスを作ってもらった日。

「…蒼い空の下、鳥は風の流れに沿って、自由に羽を広げて飛び立つ。」

キサは歌い出す。鳥が、りおが一緒に歌ってくれると信じて。そして、その唄で思い出してくれると信じて。

「…幸せという名の唄を歌い、負けずに前を進めるように、貴方の支えとなるように。」

キサの唄に反応を見せる蒼い鳥。ばさばさと羽ばたいた後、キサの肩へととまる。

「…その唄…。………の唄…。」

確かに、りおはつぶやいた。『蒼い鳥』の本当の名前を。



思い出して、やっと見つけて再会できた悪魔のりお。

思い出してもらえて、やっと名前を言ってもらえた蒼い鳥。



キサにあわせて、りおと鳥も唄を歌う。イオンやルウイもまた、同じように唄を歌う。

その唄に浄化されていくかのように、闇は薄れていき、目の前の闇は完全になくなり、元の森へと戻ってきた。

そして、鳥もまた、本来の姿を取り戻した。



「会いたかったよ、りお。」

「うん、私も。ずっとずっと、探してたんだよ。会えてよかったよ、りん。」



再び出会えた二人に、止まっていた時が流れ始める。

一度、夢管理局に戻ろうよという、キサの提案に応える二人。



クレシスと合流した後、彼等の仕事は終わったのだ。

ライシュも、戻ってきて部屋にいる二人を見て、良かったなと一言言った。

二人はたくさんの御礼を言って、ライシュを困らせていたりした。

でも、それがまた賑やかな時間で楽しく幸せなものだった。