| 五人は、今の段階の状況をまとめてライシュに報告し、それを他の者に全て説明した。泉に張られている結界がなんらかの拍子に穴があき、そこに夢魔が進入し、そして、荒らしまわると言う事を前提にして伝える。 「あと、わかっているのは、大体レベル値がCクラス級ぐらいって事。それと、その場所に住んでいる精霊が何人か行方知れずになってるのよ。どうやら、夢魔がなにかの目的のためにその妖精の姿を消している可能性があるわ。そこにあった樹の記憶を引き出してみたら、黒い大きな影が妖精を包み込んで消えたのよ。」 と、その場所で使った能力で知った事を離すキサ。 「あと、結界を張っていてどうもあそこには少々邪気が流れ入っているようです。応急処置として、僕が穴の上から結界を張っておきました。」 「そうか、それはありがたい。だが、長くは持たないだろう。」 五人は、どんどん話を進めていく。この任務はいつもコンビネーションが必要。最初はかなり会わなかった五人だが、最近はなんだかんだ言いながらも協力し合い、指示が無くてもその場に応じての判断が出来るようになった。 「だいたい、今回のターゲットになる夢魔の種別ですが、攻撃系の可能性が高いです。結界に穴が開こうとも、守りなどですと簡単には入れませんから。」 「確かにそうかもしれないよね。それに、焦げているから火炎系かも。」 と、話につっこむキサ。ルウイは、火炎系の可能性があると答えた後に付け足しをする。 「地と風の属性もしくは、水の属性を持っているかもしれません。」 と言うのだ。火と地なら属性は似ているので持っていてもおかしくないが、風と水は火と属性違う。 「あの結界から言うと、火炎系だけでは中への進入は無理です。攻撃系であろうとも、少々無理があります。もしかしますと、力を隠してCクラス級と偽っているかもしれません。」 「それは厄介だな・・・。」 と、少しずつターゲットの範囲をせばめる。火炎系と地土系なら結構いるが、それと風や水の属性を一緒に持つ者は少ない。下手に動けばこちらの方が危なくなる。 「もっと、ターゲットの事は絞らないといけないな。」 と、腕を組みながら考えているライシュ。他の四人も考えるが、いい方法は思いつかないし、ターゲットの事とそして、はっきりとした目的もわからない。ただ、自分の生の為だけに生命の光を摘み取る者もいれば、なんらかの目的、上がいてその命令で動く者や、命令で動かないと反対に消される奴もいる。 夢魔にもそれなりに理由と言うものがある。だが、こちらも仕事な為、手を抜くなどもしない。 話を進めていくうちに、ある程度ターゲットとなる夢魔の種別の範囲が狭まった。だが、もう少し範囲を狭くしないと手間と時間がかかりすぎる。そうしている間に逃がしてしまうか農政だってあるのだ。 「後ね、あの場所にある年代物の大木。あれの記憶を少しだけ引っ張り出したんだけど、“月の光を受け、輝く鏡。乾より子の刻に黒き闇が現れる。”って言ってた。」 と、急に思い出したように言うキサ。ライシュは何故もっと早く言わない?と言った目で見てくる。クレシスは、はっきりと言ってきた。これが二人の違いの一つだったりもする、と一人で納得しているキサだった。 いつでも、自分が第一優先で、時によっては指示が第一優先。と、自分の意志を貫く性格のキサ。最近では、誰もあまり言う事はない。 だが、クレシスだけはいつまでたっても言う。これが、同レベルという事なのだろうか。 いつまでも、ぎゃーぎゃーと騒いでいるキサとクレシスの二人。そんな二人は無視して話を進めようとしていた。 「月の光を受けと言う事は夜ですね。そして、輝く鏡とは泉の事でしょう。」 「確かにそう考えるのが一番だと思います。乾とは人間界のある場所で使われていた方角を意味する物だったと思います。確か、北西だったと思います。」 と、どんどんとあの暗号のような記憶の言葉をわかるように考えてつなげて行く。 「確かにそう考えるのが一番だろうな。乾が方角ならば子は時刻か。今は人間界で使われている事は少ないだろうが。だが、なぜこんな紛らわしい事を言っているのだろうか。あの樹は何か知っているのかもしれないな。」 と、ライシュとイオンとルウイは三人で少しずつ話をまとめていく。だが、あの二人はまだ言い合いをしていた。 「子は確か十二時だったと思います。どうしますか?とりあえず、今日の十二時にあそこへ行ってみますか。」 と、言うイオン。ライシュは何かあるかもしれないからな。と言って時間は少し早めで十一時四十分にあそこへ行くと言った。その後、各自解散して準備をして置くようにと言って部屋を出た。 「キサ、帰りますよ。」 「クレシス、帰りますよ。」 と、ルウイとイオンが同時に言ってキサとクレシスの腕を引っ張った。そして、やっと我に返ったようだ。 「あれ、ライシュは?」 と、今はもういないライシュの姿を捜す。だが、いるはずがない。 「何を言っている、さっき出て行っただろう。まったく、話を聞いていなかっただろう。今日の十一時四十分に泉へ集合。それまでに準備をして置くようにと言ってさっき出て行っただろう。」 と、冷たく言う。キサはごめんごめん。と言いながら部屋を出て行った。 部屋に残されたイオンとクレシス。クレシスは、ライシュはリーダーでそしてなんだかお兄ちゃんみたいで別に嫌いではない。 だが、イオンは別だ。嫌いなのではないが苦手なのだ。ライシュと同じように考えている事がわからない。ルウイもそうだが、キサと一緒にいるとなんだかわかる気もする。 「クレシスもわかりましたよね。なにか起こらないと良いのですが、もしものために休んでおいた方がいいです。」 と言って、部屋を出て行った。これで、完全に一人残されたクレシス。 「もう、そんな事言われなくってもわかってるやい。」 と、もう誰もいない静かな部屋の中でクレシスの声だけが響いた。 ポツン、ポツン・・・。 どこかで水が落ちる音がする。ここは一体どこだろうか。 『誰か、誰か・・・。お願い一人にしないで・・・。』 と、どこからか声がした。声からして、小学低学年ぐらいの小さい女の子だろう。 それから、しばらくの間なにも聞こえない。あたり一面真っ暗の闇。 しかし、耳を澄ますと、さっきの声と同じ声がまた聞こえてきた。 『 かーごめ かごめ 籠の中のとーりーは いついつ出会う 夜明けの晩に 』 と、誰かが歌っている。さっきの声と同じ。 いったいどこで歌っているのだろうか。 そう考えて辺りを見るがどこまで続いているのかわからないような暗い闇が続いている。 だが、前方が少しずつ白の光がある。 声もどうやらそこからしているようだ。 『あれ、お姉ちゃん一人?』 と、何時の間にか目の前に小さい女の子が立っていた。 『お姉ちゃんも入らない?次は私があの中なの。』 と、指を指す。そこには五人ほどのこの女の子と同じ年齢ぐらいの子供がいた。そして、全員こちらを向いている。だが、顔は見えない。 『早く早く、やろうよ。』 と、女の子は腕を引っ張った。別に遊びだけは入っても問題ないかと考えてやる事にした。 『かーごめ、かごめ。籠の中のとーりーは、いついつであう。夜明けの晩に、鶴と亀がすべった。後ろの正面だーれ?』 と、唄う子供達。その中に自分も混じっている。今、中にいる少女の後ろは自分だ。 『さ、誰でしょう。』 と、周りにいる子供達が次々に言う。女の子は中で考えているようだが、すぐに答えを言った。なにも迷いもなく、初めから分かっていたかのように。 『お姉ちゃん・・・。じゃなくて、ルウイ。』 驚くしかない。自分は名前を言っていない。なのに、当てたのだ。 『やっぱり、次はルウイの番だよ。』 と、驚いているルウイの腕を引っ張って中へ入れる。 『かーごめ、かごめ。・・・・後ろの正面だーれ?』 と、遊びはまだ続くようだ。今、中にいるのはルウイ。 当てないと外へは出れないだろう。だが、名前は知らない。どう答えようか迷っていたら、 『ルウイ、駄目だよ。時間切れ。考えるのは駄目だよ。何も考えないのがコツなんだから。でも、いつも考えないといけないのよね、ルウイは。だって、あのお姉ちゃん・・・、キサはいつも無鉄砲だからね。』 と、ルウイの目の前に立って不敵な笑みを浮かべている。ルウイはこの女の子は普通ではないと思った。生きていると言う感じがない。他の子供達も一緒だ。 『逃げても無駄だよ、ルウイは逃げられない。それに、逃げてもルウイには行く場所なんてないんだから・・・。』 と、痛いところをつかれる。心を見透かすような瞳でルウイを見る。目をそらそうとしても動けない。 『ルウイ、契約。私はキサ達に手を出さない。だから、あなたも私に手を出さないでね。約束だよ。』 と言う。キサ達と言う事は、他の三人の事も知っている。しかし、私はどうしてこの女の子に手を出すのだろか。もしかして、あの泉の件の事だろうか。 『約束を破ったら・・・。わかってるよね・・・。』 と言って、ルウイの目の前から消えた。その後、目がくらむほど前が明るくなった。 「・・・イ、ルウイってば。」 ハッと目を覚ますとそこにはキサの姿があった。 「駄目だよ、こんな所で寝て。風邪引くよ。」 と、言う。どうやら自分は、このテーブルに腰掛けた後、寝てしまっていたらしい。 「なんだか、夢見が悪かったの?」 と、言う。答える事が怖かった。もし、ここで答えたらあの約束と少し違うがきっとあっちは手を出してくるだろう。 ルウイが見る夢。これこそが、ルウイの特殊能力。夢で見えない、分からない物を見たり、未来を見たり、そして、話すことのできない物と夢と言う空間で話す事が出来るのだ。能力的にはキサと似ている所がある。ただ、夢見と自然の記憶との違い。 キサは、自分の事を心配してくれる。だけど、全てを信じる事が出来ない。もし、裏切られたら、と考えるとどうしてもラインを一本置いてしまう。これは、キサだけではない。ほかの人間にもだ。 「ねぇ、本当に大丈夫なの、顔色がちょっと悪いよ。」 と、ルウイの顔を覗き込んで言う。キサをあまり心配させまいと大丈夫といって作り笑顔で返した。だが、それを信じてならよかった。と言ってじゃ、後でね。と言って部屋を出ていった。 その後、ルウイはまた眠りについた。それは、あの女の子が泣き叫びながら誰かに向かって言う後ろ姿があった。なんだか自分と重なる気がしたが、きっと気のせいだろう。と自分に言い聞かせた。 『いやー、お願い、やめて―――――。』 と、前は黒い闇。そこへ向かって叫ぶ女の子。さっきの手を出すな。と言っていたのと何か関係があるのだろうか。 時刻は、十一時十五分頃。キサはルウイの部屋へ行き一緒に行こうと誘いに来た。彼女にしては次官に余裕がある。珍しい事もあるものだ。 「早く、珍しいね、ルウイが私より遅いなんてさ。」 と、腕を引っ張って廊下を突っ走る。 今の時間、廊下は静まりかえっている。人の気配が無い。昼間よりここの管理の仕事をする人間は少ないのだ。たいてい、夜見た夢を昼に整理をするからだ。 二人が泉についた時、時刻は十一時三十分。約束の時間より十分も速い。だが、もうすでに来ている者がいた。暗い夜だが、月や星の光でそこまで視界が悪いわけではない。だから、前にいる人影にも気付く事が出来た。その人影は、ライシュだ。 「今回は速いな、キサ。珍しい事もあるものだな。」 と、かなり嫌みっぽく言う。いつも、たいてい遅れるのはキサなのだ。そして、いつも任務の予定が狂う。 「なによ、なんか問題でもあるわけ?せっかく今回は遅れないように頑張って来たのにひどいよ、ライシュ。」 と、訴えている。だが、ルウイも珍しいと思うので否定は出来ない。しかし、否定しないとキサの気が治まらないのだろうかと本気で考えている。このメンバー達はいつも自分のペースだ。それがまとまるのはある意味不思議だ。 そのような感じでやっている間に約束の時刻の十一時四十分。時間きっかりにイオンが来た。その後ろから少し送れてクレシスが走ってくる。どうやら、イオンはクレシスが遅れないように連れてきたようだ。 たいてい、遅刻するのは、キサかクレシスなのだからだ。きっと、ライシュの命令だろう。でなければイオンはライシュのように早く来るだろう。 「まてよ、イオン。おま、お前速すぎ・・・。」 と、息を切らして言うクレシス。どうやら、二人ともスピードを出してここまで走ってきたようだ。だが、イオンはいたって普通だ。キサはロボットか、と少し疑ってみた。だが、すぐにそんなわけはないとばからしいと思って止めた。イオンはイオン。クレシスはクレシス。これがキサの考え方。 これで、十二時までに全員がこの泉の前についた。 そして、五人はここで可笑しな事にまきこまれてしまった。 夜はまだまだ長そうだ。 十二時ちょっきり。ドリーム・カンパニーの中央の柱時計が鐘を鳴らしている。時間は確かに十二時。だが、今はまだ何も起こっていない。五人とも出来れば何も起こってほしくないのだ。 「どうしますか、もうしばらく様子を見ますか。」 と、イオンは隣にいるライシュに言ってみる。返事は後一時間、とだけ返ってきた。 何が起こるのかもわからない。神経を集中させて泉の中央を見つめる五人。今の場所は少し草木のある場所。ターゲットが現れるように陰に隠れているのだ。 「うわ、ライシュ。あれすげー。」 と、いきなりクレシスが言いだす。何事かと他の四人がクレシスの指差す方を見る。そこには、泉の上を歩いている少女がいたのだ。泉の中に足が入っていないのだから浮いていると言う事になる。確かに普通ではない。 「う、嘘・・・。」 ルウイは目を疑う。それもそのはず、ルウイの瞳に映っている少女はあの夢の中で契約と言ってきたり、何かに訴えるように泣き叫んでいたりしていたのは、あの少女だったのだ。 どうなっているのか分からず、何時の間にか手が震えるルウイ。それを見ておかしいと察知したキサは、彼女の手を握ってまっすぐ瞳を見て言う。 「ルウイ、ルウイ。ねぇ、どうしたの、あの少女が何かあるの。」 と、必死で言うが反応がない。絶対、おかしい。さっき部屋に行ったときのあの夢見の後の様子も少しおかしかった。絶対に何かを見たのだ、と確信した。 「ライシュ。私、ルウイを部屋へ連れて帰る。」 「わかった。だが、クレシス、お前も一緒にいけ。そして、戻った後、部屋中を囲うように結界を張っておけ。キサ、お前は今眠っているルウイの意思を捜して読み取るんだ。俺はもうしばらく様子を見る。あの少女が何をするかをな。」 「わかった。」 「了解。」 と、二人は気を失ったルウイを抱えて夜の闇を走り抜けていく。 残ったライシュとイオンの二人。さっきから泉の中央に浮いて立ったままの少女をずっとていた。どうやら、そこから動く気はないようだ。 「どう思いますか、ライシュ。それに、彼女が現れた方向はこちらから正反対ですから北西です。しっかり、子の刻に北西よりとあってますよ。」 「確かに・・・。それに、ルウイが倒れた事も何かあるだろうしな。」 と、離していたら何時の間にか泉から空へ向い、光が指した。言うまでもなく、彼女は光の中心にいる。 「一体何がどうなっているんだ、あれが月の光を受けて輝く鏡か。なら子の刻と乾とが全部あうな。」 「ですが、この後一体何がおこるんでしょうか。」 と、二人はあのキサが話の最後に言っていた大木の記憶の言葉。考えたとおりに事が進んでいる。だが、こうも上手く事が進むということは絶対に無いだろう。この後にきっと何かが起こると考えていたライシュにイオンが小声で言う。 「ライシュ、今日は一回帰りましょう。なんだか危ないです。」 ライシュはうなずいて二人は泉に背を向けて闇へと消えて行った。 部屋に戻った頃、まだルウイは目を覚ましていない。今は、静かに眠っている様子だ。キサがルウイの夢をのぞこうとしたがガードで跳ね返されて読めなかった。 カラーン、コローン、カララーン・・・ 夜と昼の仕事の交代時刻を知らせる鐘が鳴る。時間は四時。 目を覚ましたルウイ。どうやらあの後完全に眠っていたらしい。だが、夢は見なかった。あの少女が夢をみないようにしむけたかのように何も記憶に無い。 「他の皆には迷惑をかけてしまいましたね・・・。」 と、ベッドから起き上がって部屋のカーテンを開けた。外はまだ少し暗いが、夜が明けている。外を眺めてぼんやりして、人形のようになっていたがすぐに現実へと戻された。 「ルーウーイ――――。」 と、キサがドアを勢いよく開けて部屋へを侵入してきたのだ。 昨日に続き、珍しい。キサがこんな時間に起きている。 「良かった〜、もう目を覚まさなかったらどうしようかとドキドキだったよ。」 と、少し息を切らしながら言う。起きてすぐに部屋からここまで全力疾走してきたのだろう。一人、だいたい二部屋ずつなので、この部屋はキサの部屋とは端同士。間の部屋は、あまり使っていないのだ。 「おはようございます。昨日は大変ご迷惑をおかけいたしました。」 と、頭を下げ、礼儀正しく頭を下げる。だが、キサはそんな事しなくていいってば、別に迷惑じゃないし。と、笑って返事を返す。 「それより、昨日どうして急にあーなったの?確か、行く前に夢見が悪そうだったけどそれが原因じゃないの。」 と、痛いところをついてくる。それが、事実なので答えられない。下を向いて口を閉ざすルウイを見てキサは髪をくしゃくしゃとしながら、ため息をつく。 「言いたくないならいいよ。人が言いたくない事を聞き出すのはあまりよくないし。それに、ルウイがそんな苦しむような顔も見たくないし。」 と言って、ルウイの頭をポンポンと優しくたたく。 「じゃ、あ、あとまだあったや。ライシュの伝言だよ。今日の十時に秘密部屋に集合。合言葉は花だって。」 と言って部屋を出て行った。無理に笑顔をつくっているように見えた。 キサの出て行ったドアを見つめるルウイ。 ” 私はいったいどうしたらいいのだろうか・・・ ” 部屋を出たキサはすぐにはその場所から離れなかった。扉を背にもたれてため息をつく。 「ルウイ・・・。私じゃ助けてあげられないのだろうか。」 と、考えていた。そう思ったのは、絶対夢見で何かあったと確信しても助けになる事が出来なかった。前にもこんな事があったのだ。 夢の中で見る事が現実に起こったり、過去をのぞいたり、そして、実際はなすことの出来ないような者と話をする事が出来る。 ルウイは、結構前だがその時の任務でかなり悩んだのだ。見た夢で相手に、邪魔したら承知しない。私はもう生きる事は出来ない。 今のあなたに何がわかるって言うの?などと言われ、その時も悩んでいたのだ。今のルウイもきっと何かを言われたのだろう。前と同じ顔をしていた。 「・・・ちょっと寂しいなぁ。」 と言って扉から離れた。向かった先はライシュの部屋だ。 その頃のライシュは、相手の正体を知る為にいろいろと資料を広げていた。 「もしかすると、あれは夢魔ではなく、夢迷魂かもしれないな・・・。」 と、つぶやいた時、後ろから視線を感じた。振り返るとそこにはキサがいる。いつもうるさく入ってくるキサが音も気配も無しに入ってくるなどほとんどない。最初は驚いたが、いつもと様子が違うと言う事に気付いた。 「どうした、また何か問題でもあったのか。」 と、とりあえずソファに座らせて事情を聞くことにした。 一通り、自分の思っている事と、ルウイと自分は何なのかなど言った。ライシュも口を開かない。こんな事言って困らせただろうか。と思った時、ライシュが口を開いた。 「キサ、お前に考えがあるように、ルウイにも考えがある。お前はルウイの事を心配しているのだろう?ルウイも同じだ。もし、これを話てキサが巻き込まれでもしたらどうしようなどと考えているのだろう。お互いが大切だからこそ、お互いに気を使って考え込んで言わずにしまい込んでしまう。そして、すれ違いが起こってしまうんだ。」 と、言う。キサは、確かにルウイの事は大切だと思った。だが、やはりなんでも相談してほしかった。それを読んだかのように言うライシュ。 「もし、お前がルウイの身の危険が迫っていると言う事実を知ったとしたらどうする、言えるのか・・・?」 と、言われる。ルウイが危ない目に会う。そんな事絶対に嫌だ。絶対に守る。もう、大切な物を失うのは嫌だ。 そう思うと自分はきっと言えないなと思った。 ポタッ・・・・・・ 瞳から涙が零れ落ちる。 「今は泣いている暇は無いだろう。あいつも答えが出たら一番初めに言うだろう。大切な仲間なんだろう、信じてやるんだな。一人で抱え込まず自分に打ち明けてくれる事を、な。」 と言ってソファから立ち上がった。そして、奥の部屋に姿を消した。それは、ライシュの心使いなのだろう。キサの瞳は涙であふれている。 「もう、なんでこうなんだろう・・・。情けないなぁ。」 と、つぶやく。とても悔しかったのだ。ルウイの事を一番分かっているつもりでいて全然分かっていなかったのだ。なんで何も言ってくれないのだろうとすねていた自分。だが、もし反対の立場なら自分は言えるのか。いや、絶対に言えない。 「なんでいつまでたっても自分勝手にしか動けないんだろう。」 だが、ライシュの言うとおり、泣いている場合ではない。ルウイに笑顔が戻ってほしい。袖で涙を拭きソファから立ち上がった。 「ライシュ、ありがとうね。」 と言って部屋を出て行った。今度の笑顔は、さっきのルウイにみせた無理につくった笑顔ではなく彼女のいつもの笑顔だ。 「まったく、何も分かってないな。キサ、お前の存在がどれだけルウイを救っているのか。ま、ルウイだけではないがな・・・。」 と、部屋の扉を背にもたれかかってつぶやいている。 キサのいいところとは、誰とでも対等に接する事が出来て、人を幸せにする事の出来る事。 彼女自身は築いていないだろうが、これはどんな者でも仲良く出来るということでもある。大切な物のない者にとってはキサと言う存在は大きいだろう。彼女の一言で幸せになったり嬉しくなったりするのだから。 「さて、そろそろ時間だな。イオンだけでは大変だろうな、あのクレシスを起して連れてくるのは。昨日も大変だっただろうな。」 と、つぶやいて部屋を出て行った。今の時刻は九時三十分。あと三十分で秘密部屋に集合。今の時間だと、きっとクレシスは寝ているだろう。それに、さっきの様子ではキサも忘れているだろう。 「なんであの二人は時間を守らないのだろうな・・・。」 と、自分以外誰もいない静かな部屋に響いた。その後、扉の閉まる音も部屋中に響く。今この部屋には誰もいない。 |