雨の日の悲劇

 

 

 

昔から、遠足や運動会、イベントがあると雨が降る。そのせいで、雨男と呼ばれることが多かった。

絶対に自分だけじゃない。そう思ったが、中学で別の奴等と、高校でまた別の奴等と過ごすとき、やはり降る雨から、自分のせいだなと思うことが増えた。

そんな自分が大学に通い、出逢ったのが、それは最悪な奴だった。

嵐のような女と雪のように冷たい女だった。

行動も正反対で、嵐のような騒がしく、派手が似合うような目立つ格好の女とクールで無口、時折でる言葉は毒のようだった。

そんな三人がそろったらどうなるか。

「わかっていたけど、無理だろ、これ!」

時期外れの台風が直撃。それに加え、何故かヒョウが降っている。台風の時にひょうなんてふるのだろうか?

そんなありえない事態に陥っていた。

ちなみに、三人同じ場所、しかも外でだ。

大学構内では、遭遇してもそうそうこういう事態にはならない。むしろ、毎日がそうだったら、学校そのものが開講できない。そういうところは天候も上手くつじつまを合わせているようにこの頃思う。

ちなみに、現在は外と言っても、周囲に人の姿はない。それこそ、建物もない。

どこにいるのかというと、何もない平地が続く場所だった。

どうしてそんなところにいるかというと、長くなるので結論からして嵐のような女、夢華の家に向かっていたところだった。

今さらだが、彼女はかなりのお金持ちで、無駄に所有地があり、こういった平地が存在しているのがあたりまえだそうだ。

それにも驚いたが、どうしてそのままかというと、いろいろ考えた結果、面倒になったらしい。金持ちの考えることは意味不明だ。

そして、どうしてここにいるのかというと、この平地の先に彼女が住む家があるのだという。

何故奥にした。手前にない?!玄関までひたすら私有地を歩く羽目になるのは不便だと思わないのか?

どれだけの敷地がお前の家というか、何もないこの庭はなんだ?!ツッコミが追いつかない。

生きてきて、こんなにツッコミを入れたのははじめてだ。というか、こんなに個性的な奴と出逢ったことこそはじめてだ。

「どこまでいけば、家が視えるんだ?」

「一キロもしない程度で見えるはずだよ。」

一キロってなんだ。そこまでの移動手段が徒歩って、金持ちのくせにどうなってるんだ?

「知らない人を移動手段で雇うのが面倒だったから。」

心の声が漏れたのか?返答が返ってきた。本当怖い。

「だが、こんな台風の中、ひょうまでふるんだ。もうちょっと考えようぜ。」

「確かにそうだな。だが、他人は…。」

「わかった。お前等と関わった時点で、出かければ最悪台風は元から覚悟してた。ひょうまでは予想外だけどな!」

「…これぐらいで音をあげるなんて根性ないのね。」

「ぼそっと何?根性とかの問題じゃないからね、これ!」

本当、面倒なのを押し付けられた感満載だ。実際自分自身も面倒な部類だという自覚はもちろんあるがな!悔しくなんかない。

こんなに荒れた天候の中でも、乱れない二人の姿を見ても、一人だけ雨に濡れていても、この二人に関わった時点で諦める問題だ。

「とりあえず、ついたら風呂を借りていいか。あと、なんでもいいから着るもの。」

「ええ。構わないわ。ただ、私のか、姉の服になるけど。」

「…シャツとズボンがいいです。」

「あら、せっかくだから、ワンピースなんてどう?楽よ。」

「丁重にお断りさせていただきます。」

そんなやりとりをしていたら、やっと屋敷が見えてきた。

風呂にありつけるのは、まだ先のようだ。着替えは…考えないことにする。

「でも、そろそろ迎えが来るころだから、すぐにつくわ。」

先ほど、見知らぬ他人をいれたくないといっていたくせに、迎えがくるとはどういうことか。

まったくもって意味が分からない女だ。

無駄なことは言わないのも確かだが、面倒なことこの上ない。

「ほら、あれ。」

そういって、彼女が指した先にあったのは、青い空。そこに見える黒い影。

「ちょっとまて?!」

あの嵐のような雨を降らす分厚い雲を突き破ってその上の空を出現させながら、こちらへ向かってくる大きな鳥に足を止める。

「あれが迎えっていったい、何なんだ?!」

そう、明らかにでかいその鳥は、朱い色をした翼を広げ、長く鮮やかな尾を広げていた。

「最近講義でこういった奴がでてきたぞ。」

「ええ。おじい様の趣味で品種改良したの。」

そんな簡単にできるものでもないし、つくっていいものでもないでしょう?!そういうツッコミは心の中で口からはでることはなかった。

「しかも、向こうからも何かきてるんだが。」

「そうね。あれも迎えよ。」

「白い虎ですよね?」

「そうよ。白い虎よ。」

「もうツッコミがおいつかない?!こういう時に黙ってるお前が憎い!」

先ほどから何も話さないもう一人に話をふると、面倒くさそうにしながらどうでもいいという返答が返ってきた。本当に悲しい。

「ほら、あの子のおかげで、雲が晴れそうよ。」

強制的ですけどね?!そう思いつつ、目の前に降り立った鳥と止まった虎を見る。本当怖い。

「なぁ。」

「何よ。」

「もしかして、蛇がついてる亀とか青い龍とかもいるのか?」

つい、疑問を聞いてみた。

「そうね。亀はいるけど、青い龍はまだいないわ。どうしても、蛇のままなんですって。」

「そうか。」

何を思って彼女の祖父がそういうことをしているのかは知らないが、それ以上は知らない方がいい気がした。

まだ、平凡でいたいから。

「ほら、乗って。」

そう言われ、俺達は彼女のお迎えの鳥と虎にそれぞれ乗って遠かった屋敷へとやっとたどり着いた。

外はもう、雨は降っていない。