| ++++++敦の場合 今日は静かだ。何故なら、いつも煩い同居人がいないからだ。 だから、久しぶりに静かに読書するのもいいと思ったが、久々に料理をするのもいいかと思った。 別に料理を普段しないわけではないが、同居人がいるとつまみ食いするし邪魔するしろくな事にならないため、生きる為に必要な朝昼晩の食事という行為に含まれる料理以外はつくらないのだ。 つまり、手の込んだ料理の数々やお菓子など。 別に甘いものがすきというわけではないが、つくるのは結構好きだ。 かつてはお菓子をあげると喜んでくれる存在があったから、俺は作ることを覚えたのだ。 だが、その子はもうこの世にはいない。殺されてしまったのだ。 それも、俺の身内の手によって。 ああ、そうか。もういないのか。その時は思った。 人の一生というものはあっという間で、俺がいる世界では当たり前のように昨日会った奴が死ぬということがあるから、少しだけ寂しいが悲しくはなかった。 ただ、俺の身内が、腹違いの兄が殺したのだと知るまでは。 あれはすでに壊れていた。兄は最初に母を殺した。あの目と声が嫌いだと言って。 それも、俺の目の前で、だ。かなり趣味が悪い。そして、かけつけた父を続けて殺した。 すぐに人に干渉するのが鬱陶しいと言って。 俺だけは、面白くないから殺さず、兄はそのまま家を出た。 俺はあの日の兄の笑顔を今でも覚えている。もう、誰もが言う綺麗な笑顔なんて呼べるものじゃなかった。 残酷な、悪魔のような笑顔だ。はじめて気付いた。 兄は確かに笑っていた。だが、笑っていなかったのだ。笑っているように周囲には見えていたが、あれは笑っていなかったのだ。 目がとても冷たく、人を人としてみていない、そんな目だった。 俺は父の仕事先、つまり組織の人間に引き取られる形になり、仕事をするようになった。 いつか兄を殺すと心に決めて、ずっと腕を磨いてきた。 今では一人でいいと思っていたのに、相棒ができて賑やかになったが。その相棒こそが俺の今の同居人で今は不在なのだが。 久しぶりにつくって、あの子の墓参りにいくのもいいかもしれない。どうせ今日は仕事もないし一人で暇をもてあましているのだから。 しかし、すぐに暇はなくなった。 一本の電話が部屋中に鳴り響き、それが呼び出しのものだとわかったからだ。 俺はそれをとり、耳から聞こえる相手の声を聞いた。 「休暇のところ悪いが、仕事ができた。」 「わかりました。どこですか?」 すでに相棒には連絡をしたらしく、移動先で落ち合えとのことだった。 あらかたの情報を聞き、電話をきったあと、キッチンの方を見る。 せっかく久しぶりにつくろうと思ったのに、できそうにない。墓参りもまた先延ばしになりそうだ。 部屋に戻り、自分の得物を手に取り、気を引き締める。ここからは生きるか死ぬかをかけた戦いだ。 相手の命を奪うのだから、こちらも逸れ相応の態度で臨まなければ失礼というものだ。 戸締りも面倒なのでそのまま鍵をかけずに部屋から出て、歩く。 どうせ、とられるものなどなにもありはしないのだから。 +++++++隼人の場合 今日は久々の単品での仕事だった。 仕事といっても、いつもの仕事とは違い、人を殺さないまだ真っ当な仕事ではあったが。 本当に退屈な仕事だ。暴れて殺して、殺されるかもしれないギリギリの中でゾクゾクするあの感じが好きなのに。こういうのは退屈で仕方ない。 何より、あいつらの見る目が嫌いだ。 「ハヤテ君、用意はいいかい?」 「いいっすよ。」 俺は、仮面を被って答える。ハヤテという、モデルとして笑顔の仮面を被る。 敦もだが、俺達のような連中も、表向きの顔としての場所がある。そうしなければ、下っ端連中の警察どもが一々うるさいし、いろいろと面倒だからだ。 だから、モデルという仕事をしているが、別に好きでやっているわけではない。お金の入りがいいし、勝手に向こうが覚えてくれているから自己紹介の必要もなくて楽なのだ。 基本的に、人と関わる気がないから、名乗るつもりもないし。 今まで、何度か相棒として色んな奴と組んできた。俺自身が暴走するのがわかっているから、雪華さんがつれてきても文句は言わなかった。 けれど、そいつ等は皆あっけなく死んでいった。 だって、俺が受ける仕事は世間からすれば難しいレベルらしく、あいつ等はそれについてこれないらしい。 簡単に死ぬ。だから、面白くないし、面倒だった。 けれど、今度の相棒はなかなかいい。今までと違って簡単に死なないし、俺自身動きやすい。 だから、同じ空間で暮らすことになっても、文句は言わなかった。何より、あいつの入れるカフェオレが美味しいからお気に入りだ。 だから、珍しくあいつだけは名前をちゃんと覚えた。そして、生活領域にいることを許した。 俺自身でも驚きだ。 だって、背後にいたり、寝ているところ近寄る奴に対して、今まで怪我させてしまうか、最悪の場合殺してしまう時だってあったからだ。 「じゃあ、はじめまーす。」 その声とともに、俺は被った仮面のまま、偽者の自分を演じる |